村上水軍を訪ねて。瀬戸内海随一の景観・来島海峡(1)
私は瀬戸内海の島出身である。
「瀬戸内海で、最も景観の良いところはどこですか」
という質問を受けることがある。
私は瀬戸内のすべてを見てまわったわけではないし、ゼッタイに「ここだ。この島だ、この港だ」と決定づけられない。
香川県、岡山県、愛媛県、広島県、山口県など、それぞれの市町村で景観美を観光化して売っている。いずれも特徴がある。
一般論でいえば、小高い丘とか、山の頂から海を望む景観は優れている。
どの島もすべて形状がちがう。一つとして同じ形はない。それだけに、多様な島が密集すればするほど、景色には立体感、奥行きが出てくる。
地図をみて密集度が高い場所を選ぶと、まず良い景色にめぐり合えるだろう。ただ、瀬戸内海の地図にも表記されない、タタミ3畳から10畳敷くらいの極小の小島が多数ある(海図には記載)。足を運んでみないと、わからない点もある。
瀬戸内海の潮は、1日に2回、近畿から九州へ、その逆へと、大きく移動している。瀬戸内海の海水量は一定だから、狭い海峡ほど潮流が早くなる。
室町時代に活躍した村上水軍は来島、能島、因島の三つから成り立つ。総称して、三島村上水軍と呼ばれている。それぞれ歴史は微妙にちがっている。
どの村上水軍の居城も、周囲に小島が多く、潮流が早いところを選んでいる。それは敵が攻めにくい難攻不落の居城となるからである。つまり、村上水軍の歴史を訪ねれば、瀬戸内でも最大級の美しい場所にめぐり合えることになる。
「しまなみ海道」の開通で、村上水軍の居城とした島の近くに訪ねることが容易になった。そこで春、夏、初冬と3度に分けて、三島村上水軍を訪ねてみた。写真でビジュアルに紹介したい。