瀬戸内・取材こぼれ話し=仙酔島
雑誌社の依頼記事の取材で、鞆の浦、仙酔島に行った。鞆の浦は昨年の暮れから立てつづけに3度だった。同港から「平成いろは丸」に乗り、5分で仙酔島に着く。その島は先月に続いて2度目の訪問だった。
鞆の浦港の発着所から「平成いろは丸」が20分ごとに出航する。出札口に着いたとき、まさに同船は岸壁のロープをはずし、出航寸前だった。舳先に立つ船員が、私の姿を見、乗せてくれる雰囲気で「乗船券は買っているかい?」と聞いた。
市営の連絡船だし、お役所仕事でなく、親切だな、と思った。
「これから買うけど」
「じゃあ、だめだ。次だ」
船は定刻運航を優先し、すぐさま鞆の浦港を離れていった。
次の船便までは待合室のベンチで待つ。ノートパソコンを取りだした私は、撮り立て写真の処理をはじめた。記事に関連する写真を中心に、セレクトをはじめた。ひとたびはじめると、区切りがつかなくなり、他方で、仙酔島へ急ぐこともないし、と次の船便、さらに次の便も、とやり過ごした。
小1時間ほどで、撮影写真のセレクトのメドがたった。
「平成いろは丸」の乗船券は、待合所の自販機で発券されている。往復券で、片道券は売られていない。鞆の浦と仙酔島には橋はないし、この連絡船だけだけだから、当然だろう。
「帰りは必要ないから」
その往復券は改札所で回収されてしまった。
片道は船、帰路は泳いで帰る人はいないのかな、と考えてみた。