拒食症・少女の万引きの実態
ある少女を取材で追っている。彼女は細身で拒食症である。いまは19歳。あと半年すれば、20才で刑法で罪を問われる年齢になる。
彼女は17歳で万引き癖がついた。大手スーパーに出向き、弁当、お菓子の類を買い物籠いっぱいにして、レジを通らず、後方で持参してきたビニール袋に詰めていた。大胆な手口で、一度に1万円以上も盗る。捕まるのは時間の問題だった。
初めて捕まったとき、彼女は名門の国立大付属高校の2年生だった。金額が大きく、警察に渡された。
拒食症は、口に入れたものをすぐに吐き出す。それを何度もくり返す。だから、一日に必要な食費は一万円以上かかってしまう。親は買い与えているのだが、それでも足りなかったから、万引きしたのだという。
2度目に捕まったときは18歳。すでに高校を中退し、専門学校に通っていた。拒食症は治癒されていなかったのだ。店内で捕まったことから、警察は未遂扱いで、説諭で終わった。
海外勤務だった父親は会社を辞めて、自営業になり、娘の世話を焼くことになった。彼女は美顔でスマートだから、バイトでモデルをしている。そのお金を殆どつぎ込み大量の食品を買っているようだ。
それでも3度目は電鉄系の大手スーパーで捕まった。これも盗んだ金額が大きくて、警察に出された。まだ19歳の窃盗罪だから、家庭裁判所に送られる。
ここ数日間、親子で話し合ったという。『このままでは将来が台無しになるぞ。二十歳過ぎて前科ものになれば、他のきょうだいにも迷惑が及ぶのだ」と懇々と諭した。彼女は苛立ち、酒を飲み、他のスーパーで万引きした。親は激怒した。
病的な万引きといえば、手癖の悪い人を意味する。実際にはこうして解決のつかない泥沼に落ち込むひともいる。当人の立場、親の立場、家族全員の立場、それぞれが意味合いの違う苦しみを背負う。つらい人生だと思う。
『罪を憎んで、人を憎まず』というが、彼女自身にも哀れみを覚えてしまう。