新年早々
元旦は快晴だった。羽田発の広島行2便の旅客機から、眼下に白雪の富士山を見た。山頂の噴火口も鮮明にのぞけた。機内から、こうも間近に富士山を見下ろしたのは初めてだった。
スチュワーデスがコーヒーを差し向けながら、「とても素晴らしい富士ですね」と声をかけてきた。彼女の笑顔の一言も、心をうるおす。09年早々の素晴らしい光景だ。
一昨年12月には富士吉田側の一合目から、富士山・山頂を目指した。アクセスが悪く、なおかつ積雪をなでる強風で、七合目半で引き返してきた。そんな登攀の思い出がよみがえった。
正月に、広島に帰省するのは数十年ぶりだ。大学生のころか、少なくとも24歳で結婚した頃まで遡らないと、記憶にはない。子どもが生まれてからは、年末年始の帰省ラッシュに、郷里の島に帰ってことはない。難儀して交通機関の指定券を取る。そんな苦労はムダだと考えていたから。
3日前の、12月29日の夕刻、瀬戸内の島で一人暮らしする老母が倒れた。島から救急車で竹原市の病院に搬送されていた。30日は島の親戚筋、31日は私の妻と息子。そして、元旦には私が現地に向かった。
「横浜にいればよかったものを」
私はつぶやいていた。