A010-ジャーナリスト

要(かなめ)町の女将は祭りが大好き、粋な姿で神輿をかつぐ

 秋祭りたけなわである。13(土)、14(日)は都内のあちらこちらで、神輿が町内を回っていた。昼間は子どもの神輿、夜は大人の神輿が通り相場だ。

 「TOKYO美人と、東京100ストーリー」の『婚約者は刑事』で、中村裕子さん(豊島区)が猫の写真を提供してくれた。彼女は中華料理屋『博雅(はくが)』の女将さんだ。家族そろって祭り好きらしい。先月末には、14(日)の夕方からは店じまいで、地元『要町三丁目町会』の秋祭りで神輿を担ぐ、という情報を得ていた。


「一年のなかで、もっと楽しみにしている日ですよ」と、義妹の裕実さんが教えてくれた。根っからの祭り好きで、法被が似合うひとだともいう。

 猫の写真提供のお返しで、14日(日)の午後5時から、写真撮影に出向いた。場所は有楽町線・千川駅付近である。中村裕子さんは粋な法被(はっぴ)で、ねじり鉢巻の出で立ちだった。長身だけに、確かによく似合う。夫と末っ子の息子(小学校5年生)と3人で、町内をまわる神輿を担いでいた。

 親子3人で掛け声を上げて神輿を担ぐ姿は微笑ましい。ある意味で、うらやましいかぎりだ。撮影している方も、気持ちが高揚してくる。

  要町三丁目は東京でも、最大級の繁華街・池袋から3、4キロしか離れていない。それでいて、素朴な町内会の祭りだから、味があっていい。休憩所では酒とか、食べ物とか、嗜好品が提供される。担ぎ手は一息入れる。熱気からの開放感が、こちらにも伝わってくる。

 
 中村裕子さん家族・3人の表情を追う。ひたすらそれに徹していた。「私の専属カメラマンです「と彼女がおどけた口調で、町会の人に紹介してくれた。だから、神輿に近い、接写の位置を取っても、迷惑顔がないので、ありがたかった。
 彼女は学生時代、写真部にいたという。カメラを撮る側に立ち、神輿の先頭で担いでくれている。写すために、強引に割り込むこともなかった。その面では楽ができた。

 秋の日暮れは早い。暮色から、すぐさま暗くなり、街灯が目立つ時間帯になってきた。町内会の幹部らしいひとが、「来年用のポスターの写真を提供してくれませんか」という。中村さんが「ジャーナリストですよ」という紹介もあり、承諾した。

 家族愛の表情ばかり狙っていたが、この段階からは撮影方法が変わった。全体像とか、迫力とか、立体感などが中心となった。

 高い位置がほしいので、神輿よりも先回りして、民家の門前のブロックに立つ。次は外階段にあがる。少しでも高い場所を求めはじめた。
 ストロボの光線が強くないので、直前まで神輿を引き寄せる。すぐさま目の前を通過してしまう。また、先回りだ。他方で、露出不足の調節は撮影後に処すことに決め、フレームを優先して撮影した。

 約2時間の撮影だった。納得できる写真が何枚か撮れていたので、切り上げた。荷物を預けていた中華料理屋『博雅』に立ち寄った。留守番役の裕実さんには「兄夫婦は神輿が好きなのに、あなたは?」とあえて訊いてみた。


「私はダメなの。見るだけ」と、まったく受付けない態度だった。兄妹でも、性格が違うようだ。

 撮った写真はその場で、PCに落とし込み、裕実さんに見せはじめた。彼女はじっくり見ていた。すぐさま、店の前に神輿がやって来たので、彼女は実父を連れて戸外に出て行った。
 私には次の予定があったので、裕実さんにもCDで挙げる、と決めて後にした。

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