A010-ジャーナリスト

聞けよ、「市民兵士の悲痛な叫びを!」。プロとアマが共演=横浜市

 エッセイ教室の受講者である二上さんから、プロ劇団「U・フイールド」で活躍する俳優の武内紀子さんが紹介された。彼女と池袋で会って、劇団の概要やいま取組む演劇の話しを一通り聞くことができた。今回の演目は『孤独な老婦人に気をつけて』で、横浜市が公募した一般の人と、プロ劇団が共演するというものだった。

 練習場は、本番会場である横浜市泉区民文化センター(通称・テアトルフォンテ)、もしくは東京・狛江市の写真スタジオだった。日程の関係で、狛江市のほうに取材に出向くことに決めた。

        


 取材前に、武内さんから台本を借りて一通り読ませてもらった。原作はマテイ・ヴィスニュック。ルーマニアからフランスに政治亡命し、劇作家として活躍する。
 今回の舞台劇となる『孤独な老婦人に気をつけて』は、15編の戯曲集から、8編を抜粋して構成されている。「U・フィールド」主宰で演出家である、井上弘久さんの脚本だ。

 欧州各国の歴史はつねに祖国の分断、越えられない国境線、そして愛国の戦いというくり返しだった。日本は単一民族で、国境が海上だから、作品を理解するにはやや時間が必要だ。その消化不良を埋めてくれたのが、練習会場の演技者たちだった。

 戦場で倒れた大勢の負傷者、死者、行方不明者がつよい望郷の念を持つ。倒れたものが立ち上がり、将軍に祖国に連れて帰ってくれ、と叫ぶ。シュールな設定だが、真に迫った演技から、戦争の悲惨さが熱く胸に響いてきた。

 戦争はいつも市民が兵士としてかりだされて犠牲になる。この構図は古今東西の歴史を見ても変わらない。

 10月13、14日の2日間の公演。公開前でストーリーは提供できないが、祖国への凱旋をつよく願うシーンは圧巻だ。単なる反戦劇でなく、人間の本質に迫る、奥行きのある作品だ。

 横浜一般市民とプロ劇団との共演を中心においた、報道記事として、PJニュースに、3回連載で掲載していく予定である。

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