【受講生・フォトエッセイ】二人の外出=原口なつ
原口なつ:作者紹介
朝日カルチャーセンター・新宿「フォトエッセイ入門」
よみうり文化センター・金町「たのしいエッセイ教室」
ふたつの受講生です
二人の外出 原口なつ
結婚してから、夫が休日の土曜、日曜日は二人で、どこかしらに出掛けている。たまには自宅で過ごすこともあるが…。五月の下旬に差し掛かった土曜日、私の実家へ二人で外泊するつもりにしていた。
約一月ぶりなので、私は喜んでいた。その二日前に電話をかけたところ、母がその日は用事ができて、家を空けなければならないという。
それを夫に伝えた。すると、夫が、明日は社長に急に仕事を頼まれたので、本社の銀座の会社まで出勤しなければならなくなったと言った。当日は自宅で過ごすのだな、と淋しく思っていた。
「会社に一緒に来る?」
夫が言ってくれた。普段の生活は、たいがい毎日食材を買いに近くのスーパーへ行くくらいである。家のなかで家事をしていると、あっという間に一日が過ぎてしまう。
夫の職場へ行く。どんなところで働いているのか、見てみたかった。遠い昔父が幼い私を職場へ手をひいて連れて行ってくれたことを思い出した。夫が何だか、父と重なって見えた。
とても嬉しかった。
当日になると、朝早く出ていかなくても、ゆっくり行けばいいという。朝食を食べ、夫は趣味のパソコンのゲームをはじめた。二時間ほどすると、自宅のマンションの一階にある、行きつけの整骨院に指圧をしてもらいに行こうと言い、夫婦で出かけた。
その院は毎週土曜日に行っている。夫も私も肩こりがひどい。同院から帰ってきて、昼食の支度を急いでおこなった。料理が出来るまで、時間がかかるので出掛け前は気が気ではない。食事をすませてから、後かたずけを終えると、午後3時は過ぎていた。
最寄り駅から池袋駅まで出て、地下鉄丸ノ内線に乗り、東京駅で降りた。かつて東京駅には何度か下りたことがある。それは数年前で、いまや新しく作りかえられている。
駅の中の店で、夫が大判焼きを買ってくれて二人して食べた。駅のショッピング街を歩いていると、サンリオのキャラクターのグッズの店が目に入った。私の好みだと知る夫は、帰りに寄ろうかと言ってくれた。
夫の会社へと向かった。私にはどの出口から出て、どのように街中を歩いたか、よく分からない。
夫はIT関連の会社で働いている。いつしか、夫が勤務する会社が入ったビルの前に来ていた。家族といえども部外者は入室出来ないので、ここで別れた。夫はビルの中へ消えていった。私はデジカメでビルやその周辺の路地やら風景やらを撮った。
夫の勤務するビルの前の喫茶店で時間をつぶすことに決めて、ひとまず落ち着いてコーヒーを飲んで過ごした。夜8時頃、ふたたび夫と落合、東京駅まで戻った。
「晩食は食べていこう」
夫の提案で、東京駅ラーメンストリートへむかった。混み合う店らしく、少し並んで待った。そのうえで、二人して塩ラーメンを食べた。
その後、東京駅に最近できた「おかしランド」のまえに通りかかった。出来立てのポテトチップスを売っている。この店は少し前にテレビで紹介され、かなり並ばないと買えないと報道されていた。いまは多少行列にはなっているが、それほどでもない。並んで購入した。味は他で売られているのと、さほど変わらないと思った。
期待したキャラクターショップの店はすでにシャッターが下りていた。
そんな体験の下、夜半に自宅へ帰ってきた。結婚生活が始まってから毎日、二人の間にはいろいろなことが起こって流れていく。これら一つひとつが積み重なり、家庭の雰囲気が形成されていくのだろう。最近はそんなふうに考えている。