第71回・元気100エッセイ教室=作品の勝負は結末で決まる
エッセイにしろ、小説にしろ、読者が作品を手にしてから、読んでもらえるか、ポイされてしまうか、それは書き出しで決まります。
私の友人に、エッセイと小説の双方の「応募作品の下読み」を糧の一つにする作家がいました。かれの話では、100~200編の原稿が送られてきて、約10日間か半月でAからDのランクをつけて、依頼先に返す。C以下は(評価一覧表に記載のみで)、原稿は返さず、廃棄処分にすると話していました。
AとBは評価理由のコメントをつける。
「最初の1-2枚を読んで、ダメなものはどんどん棄てていくんですよ。後でじっくり読みたい作品を別に置いておく。8割くらいは書出しで、ポイしておかないと、これはと思う作品をしっかり読んでコメントする時間が無くなりますからね」
その友人だけでなく、評論家に聞いても、8割の作品は読むに堪えない、と話す。それらは文章が見劣りする、拙い(C)、基本の文法もわかっていない(D)。8割をはじき出す、アウトにするのは実にかんたんな作業だという。
作品を最初から最後まで読ませれば、一応の合格点である。(A-B)。一次選考通過、二次選考通過していく。
そして、編集者が候補作品を選ぶ。
小説でいえば、どこの文学賞に応募しても、一次選考通過すら、まったく名前が出ないのは、小説を書く以前の状態で、文章を学ばずして、ストーリーで作品が生まれると勘違いしているからです。
私は何かにつけて「書出し」にこだわり、文章の添削につとめるのは、友人や評論家の話が真実だろう、と考えるからです。
夢と希望を持って、時間をかけて数か月も、1年以上もかけて作品を仕上げても、ものの3分でポイだと、あまりにも惨めだからです。
最終候補作品に選ばれると、完成度の高い作品です。あとは選考委員会で、選者の好み、運なども左右します。それはそれとして、決定打はなんでしょうか。作品のエンディングです。
「これは読後感がいい。良い作品だな」
そう感動させるのは、最後の数行。つまり、作品の評価は「結末」で決着するのです。
『結末に強くなる。結末の力量を高める。結末の落としどころを磨く』
まず結末まで毎回書かずして、上達などのぞめません。
作品を勢いよく書きだしても、途中で、あれこれ悩み、投げ出す。別の作品に手を出す。こういう作者はいずれ、書きたい想いばかりで、作品が創れなくなります。
結末の訓練など覚束きません。あげくの果てには、結末を書く呼吸すらつかめず、失望や創作活動のとん挫で終えてしまいます。
「書き出したら、何でもかんでも最後まで書く」
これが身につけば、時どきの出来ばえに甲乙があっても、長い目で見て、確実に作品力が挙がってきます。
【結末のテクニック】
①初稿は多めに書いておいて、うしろの数行、数枚を切り棄てる。カットした先が読後感になる。
②結末は説明文でなく、描写文で終わらせる。映画のシーンのように。
③結末と書き出しと、いちど入れ替えてみる。すると、双方が良くなることがある。
④結末の推敲は念入りにする。誤字・脱字とか、難しく読めない漢字とかがあれば、読後感が悪くなってしまう。
【勝負できる結末】
①全体をしっかり受け止めている
②作者の言いたいテーマが凝縮している。
③導入部(リード文)と、結末がリンクし、題名とも関わっている。
ここに力量が到達するには、どんな作品でも、途中で投げ出さないことです。そのうえで、結末は何度も書き直して、①~③に近づけることです。