最大級で楽しめる・読売新聞掲載『人生案内』366編(下)=出久根達郎
出久根達郎が答える366の悩み『人生案内』白水社(1400+税)。帯は【わかりあえない時代の教科書】は、投稿者の悩みを一つひとつ読み出したら、もう止まらなくなってしまう。いろいろな夫婦がいるものだな、としか言いようがない。
「息子・娘の悩み」「嫁・姑の悩み」となると、女どうしどうして家に入ると巧くいかないのかな。私の実母が昨年亡くなった。だから、この項目の悩みから解放された。そんな安堵をおぼえながら、ページをめくる。
「兄弟・姉妹の悩み」、「祖父・祖母の悩み」は投降者が4編で、みな20代だった。幼い頃かわいがった孫も、年頃になると、敵になるのだな。
「親戚づきあいの悩み」「進学・就職活動の悩み」「友人関係の悩み「家の悩み」「お金の悩み」「職場の悩み」と、このジャンルは尽きない。なかには深刻な社会問題もある。
「恋愛の悩み」 ≪半世紀ぶりに恋人と再会≫ここらはのぞき趣味で読みたくなってしまう。 ≪彼とずっと不倫したい≫30代女性となると、これも読みたい一つ。
「病気・死の悩み」「介護の悩み」「冠婚葬祭の悩み」 ≪親類からのお返し安すぎる≫ ≪娘の結婚式で別れの歌≫帰宅後、娘の結婚式を壊して恥ずかしくないの、と妻に言われました。その後、夫婦仲は悪化し、やがて離婚する遠因になったのです。
読売新聞『人生案内』2003年1月~2014年12月までの掲載分から、出久根さんが366編を選んだものだ。
この範囲内で見る限り、私の妻の質問はなさそうだ。
安堵や油断は禁物だ。世の女性はとかく過去のことをよく覚えている。不愉快だったこと、憤り、反発まで、まるで昨日起きた出来事のように不意にしゃべりだす。
だから、妻がいつ読売新聞に投函されるかわからない。
悩みの深刻さは、他人には計りにくい。 ≪妻の骨を掘り起こし、骨を踏みつけて、ごみにして捨てる≫死んだ妻の日記を見て、怒る夫の内容があった。
こんな深刻な内容にはおどろかされるが、出久根さんは丹念に読んで、誠実に回答する。大変だろうな。
いろいろ紹介したいけれど、驚き、愉快、深刻な問題などきりがないし、著作権に引っかかるだろうから、ここらで止めておこう。
読者が同書を手にして、直木賞作家・出久根さんの回答と照らし合わせば、己の人生の考え方、とらえ方の違いもわかるだろう。
【了】