ミステリーの謎解きしながら、ランニング=創作の裏舞台
東京マラソンの抽選に外れてから、ここ2年余りは、距離を走る気力が薄まっている。ランニングは好きでも、目標がないと、雑誌の原稿の締め切りがある、日本ペンクラブの記事を書く、各教室の受講生たちの作品添削、さらには連載ものの遠方の取材旅行がある。走らない理由はいくらでも思いつくものだ。と同時に、走る距離が減になっている。
「ミステリーを書く人は頭がよい」と言われることがある。それは間違っている。読者は悧巧だし、目が肥えている。作中の難問に対して、読者以上に、作者は考える時間が多いだけのことだ。
ミステリーの謎解き、サスペンスの危機一髪からの脱出など、主人公には難解な問題や事件を突きつける。書いた段階では、作者も解決方法などがわかっていない。
作者も考えが及ばない。そのほうが質の良いミステリーになる。解決の難易度が高いものほど、作品に対する読者の求心力が強まる。それこそが上質のサスペンスだと思っている。
「どう解決するかな」
私は山に登ったり、走ったり、身体を動かしながら、あれこれ考える。解決の難易度が高いと、苦しい。何日もかかる。走りながら試行錯誤していると、ふいに解決方法が見つかったりすると、うれしいものだ。