広島空港で頑張ってる、手作り自然食品=広島西条農高
広島に私用があり、12月16日はトンボ帰りだった。
先週はお茶の水女子大の図書館で、『広島市城下町絵図(幕末)』が閲覧・コピー入手ができた。広島藩の藩士約350人が住んでいた家屋敷の絵図だ。一軒ずつ探しながら、あるかな、あるかな、と丹念に見ながら、私が現在・執筆している歴史小説の主人公「高間省三」の家を発見することができた。家主は父親「高間多須衞」の名だった。発見できた瞬間のうれしさは歴史小説を書く冥利だ。
その家は京橋川の橋の袂だった。当然ながら、1945年の原爆投下で、広島の城下町は跡形もないけれど、それでも現地を歩いてみたかった。
ただ、この日は夕方6時から日本ペンクラブの理事・委員の忘年会がある。またの機会がある、と広島・絵図歩きは後日にまわした。午後3時発に乗るために、広島空港に戻ってきた。
旅先では土産物は買わないタイプだ。空港ロビーで、女子高生たちが遠慮がちに呼び込んでいた。『活き、活き。やっぱりおいしいね、広島畜産』と幟が建てられている。 広島といえば、カキ養殖の水産業が有名だが、東広島市で農作物、畜産業も活発におこなわれているようだ。足を止めてみた。
広島県立農業高校の女子生徒たち約10人だ。文部省指定「スーパーサイエンススクール」の学校案内も配られていた。家畜の飼育から食品づくりまで一貫して学んでいる。同校は園芸、農業機械、生物工学など幅広い教育の場である。
販売品をのそき見た。「ウインナー・ソーセージ・150g」(350円)、「金粉入り・ビスケット」(50円)、「ゆず飲料・缶250g」などを販売していた。
彼女たち高校生が熱意と努力で作った食品だけに、買い求めたくなった。その熱意を土産にしよう、と決めた。
小袋に入ったビスケットは安価だった。コスト割れだろうな、利益がないだろうな、と余計な心配をした。高校生の段階では原価管理・計算の指導は及ばないのだろう。もしかしたら、学校教育では利潤を出したらいけないのかもしれない。
自分たちの手作りの食品をまず食べてもらう。学校の存在を知ってもらう。農業高校のカリキュラムを理解してもらう。そうした趣旨と展開だろう。
男子教師は地味な存在で、パネルや販促物の取り付けの指導をしている。
愛想の良い女子高生たちが「ウインナー・ソーセージには保冷剤を入れますか」と訊く。飛行機の出発待ち時間を使って賞味してみたいけれど、持ち帰ることにした。
「西条農高は全国マラソンに出るの?」
「陸上は強いです」
年が変われば、恒例で、高校生の全国大会が京都で行われる。同校が出場することがあれば、応援したい気持ちになった。少なくとも、広島空港で見た、あの農業高校だろう、と校名は思い出すはずだ。空港には全国各地から旅人が来る。学校名を売り込むためにも、教育内容を理解してもらうにも、良い企画だと思う。