ジャーナリスト

『志和と幕末』と題された講演会、志和小中学校体育館の於いて = 土岡健太

 2022年11月30日の午後、志和小中学校体育館で中学校PTA教育講演会 ~志和の歴史に学ぶ~ 『志和と幕末』と題された講演会を聴講させてもらいました。

 中学2年、3年の皆さんと一緒なので「勉強会」と言った方が良いでしょう。地域の方も生徒さんたちの後ろに、10数名が参加されておられました。
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 受付でもコロナ対策はバッチリ。皆さんマスク着用です。
 体育館は小窓を全開したうえ、暖房ヒーターを使われている。一刻も早く収束してほしいものです。

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 皆は講演内容を熱心にノートしていました。私は穂高先生を熱心に追っかけて?「西連寺」の講演会以来3年ぶりになります。

 この日の講演は無事に終了し、生徒の皆さんが体育館を去られたあと、穂高先生は地域の皆さんから質問を受けておられました。
 少しでも多くの方に「志和の歴史」を知ってほしいという先生の願いが感じられました。

 こんな貴重な機会を作ってくれた関係者の皆さん、寒風のなか、駐車場の案内などに頑張っておられた皆さん、ありがとうございました。

【追記】

 土岡健太さんは、幕末に活躍された池田徳太郎(浪士隊の創設者・のち新撰組)の末裔です。

 2022年11月30日の午前中の講演(同一の演題)は、小学6年生と中学一年生でした。

サッカー通でもないのに、メッカ「Jヴィレッジ ホテル」に宿泊する

 サッカー通ではない私が、10月1日に「Jヴィレッジ ホテル」=(福島県・楢葉町)に宿泊した。
センターハウス1階にショップ「ブルーガーデン」があった。そこまでの通路にはJヴィレッジでしか買えない、というオリジナルのサッカーグッズがあった。
DSC_0615 サッカー.jpg
 廊下には歴代の選手や名場面のパネルが飾られていた。きっと、ファンには興味深く、たまらないだろうな、見ごたえがあるだろうな。そんな単純なきもちでただ眺めていた。
 
 ホテル通路には選手団がいた。著名な選手がいたとしても、私にはわからない。
 夜型の私は太平洋側の日の出など拝めない。それでも、私にとって早朝には、宿泊ホテルの窓越しに、眼下にひろがるピッチに、青いユニフォームのサッカー選手たちが大勢があつまっている。

 今年は中東で「2022FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会」がおこなわれる。その認識で、私は散策代わりに練習風景をみてみよう、ときめた。
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 見学者の登録とかその手続きとか、実にややこしくて面倒だった。ちょっと見たいだけなのにと、いい加減に嫌になった。
 それでも、部屋からここまで歩いてきて、手続きの順番を待って、いまさら放棄してひき返すのも、なにかしら無駄な時間の浪費に思えた。いちおう時間をかけて手続きをしてみた。
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 サッカーの選手たちは準備運動だろうが、手で投げて飛ばすブーメランに熱中している。どのチームだ。ボールはどこも蹴っていない。

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広いピッチがかぎりなくつづく。どこも、練習はおなじ手遊びだ。
 こちらが飽きてしまった。ブーメラン、子どもの遊びを見にきたんじゃない、部屋に帰って執筆している方がましだ、と引き返してきた。


■「2022FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会」 試合スケジュール
11月23日(水) 22:00 ドイツ [ドーハ/ハリファ]
11月27日(日) 19:00 コスタリカ [アルラーヤン]
12月01日(木) 28:00 スペイン [ドーハ/ハリファ]

「元気に百歳」序文から = なぜ、人を殺したがるの

「人生五十年」(織田信長)、一つの到達点に立った。この時、これまで以上の悲惨さとか、おぞましさとか、その見聞はもうないだろうなと考えていた。

 なにしろ顧みても、子どものころ銭湯に行けば、ケロイドの人がいた。広島市街地はバラック建てで、気味が悪いほど乞食同然の人があちらこちらに浮遊していた。
「こんな戦争をしたのは大人が悪いんだ。原爆はアメリカが強いから落としたんだ」
 小学校から帰路で、仲間どうし、そう語り合っていた。
 当時はみなが極貧で、広島の島でも食べ物はなかった。米穀の弁当など持っていけない。バナナをはじめて食べたのが小三、チーズは小五だった。遊郭の女郎は美味しいものを食べていたな、という記憶がある。

「もはや戦後でない」、「所得倍増論」、「高度成長期」と世の中がすすみ、私は東京の私大入学で上京し、その後は「経常収支の黒字」と拡大成長がつづく世のなかで生きてきた。

 敗戦直後の惨事な出来事などほぼ忘却していた。

 世が好景気のさなか登山にも夢中になれた。その後の私は長い闘病生活、執筆生活の失敗や挫折も多かった。貧困ゆえに夫婦げんかも絶えなかった。
「なんで、うちの両親は離婚しないのだろう。毎日、喧嘩しながら」。そんな子供の声もあった。夫婦が喧嘩するのは八、九割はお金と子供の教育だといい返してやりたかったけれど喉もとでとめおいた。

 五十年の折り目から先も、ほぼ予測可能な社会だった。

 ところがここ数年、突如としてコロナウイルスが世界中に蔓延し、あらゆる活動が停滞した。100年前の第一次世界大戦中のスペイン風邪とそっくりだった。地中海のマルタ島まで、その取材を兼ねてでむいた経験から、コロナも三年はかかるだろうと、覚悟できた。

 2022年にはウクライナ戦争が勃発した。第三次世界大戦か、核兵器の使用か、と世界中の人々を震撼させた。広島が叫んでいた「平和」は無益だったな、と思わせた。

 安倍晋三元首相が、奈良市の街頭演説のさなかに射殺された。一報を聞いた時、奈良は天皇陵が多い土地柄だ。天皇関係の射殺かな、と思った。過去から「君側の奸」(くんそくのかん)で天皇を利用したと批判された人物が暗殺されている。大久保利通、岩倉具視、2・26事件などが脳裏にひらめいた。

 報道では宗教関係が絡みだという。人間は「殺したい」という殺意が実行に移るとき複数の動機がある。一つだけではまず殺さない。ここらはミステリー小説を書くときの基本である。
 政治家の暗殺事件は裁判にならないと、動機とか真実とか、まず世に出てこないだろうな、と思う。
 ジャーナリストたちは生活のためか腰が引けているし、真実がストレートに伝わってこない。SNSの生の書き込みの声とはずいぶん乖離している。

 ことし(2022年)6月半ば、小説上で不可欠な公家ことばの指導をうけるために京都にでむいた。約束時間より一時間半ほど間があった。京都駅に近い東本願寺の広い本堂で本でも読んでいようと考えた。そこに足を運ぶと同寺には『第13回非戦・平和展』のパネル展があったので、のぞいてみた。

 明治43(1910)年に、おぞましい「大逆事件」が起きている。パネルは同事件の「新宮グループ」六人を中心にした内容だった。
 全国で26人が逮捕されて、24人が死刑判決を受けた。内12名は判決翌日に、天皇の恩命として無期懲役である。

 当時は未曽有の大事件だった。敗戦後、国家による捏造(ねつぞう)事件であると判明した。見入った私はその日のうちに新宮に入った。翌朝、事件にくわしい方を取材した。

 事件の犠牲者は6人で、アメリカ医学を学んだ開業医、出版など手掛けたジャーナリスト(中央大学出身)、雑貨商、臨済宗妙心寺の僧侶、地方新聞の記者、牧師らである。取材するほど、息苦しくなった。日本人のシンボル、象徴の天皇を利用した、悪質なえん罪などなぜ行うのだろう、とむごさに心を痛めた。

 ウクライナ戦争でも、為政者は奪った領土をあの世に持っていけるわけでもないのに、むきになって人を殺す指令をだすのか、と狂気を感じさせた。

クリミヤ戦争 = 黒船来航 =  北方四島 =  ウクライナ侵攻 ②

 日本人の特徴は、「過ぎたことは水にながす」である。これは木の文化(燃れば、きれいさっぱりなくなる)だからであろう。
 かたや、西洋の特徴は長い歴史の上に現在がある、という考え方である。これは風化しない石の文化である。もめ事も風化しない、恨みもいつまでも忘れない。だから、同質の戦争がくり返しがおこなわれる。
 
 欧州と日本の違い。それは木の文化と意志の文化の違いである。

 西洋の戦争でいえば、「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれるバルカン半島、紀元前からの中近東の不安定な対立がつづく宗教戦争であったり、国境・領有権の争いであったり、十字軍からの未解決問題が、いまだに歴史的に解決できない争いとなり、なにかの拍子に火を噴く、これが周辺国も巻き込み、連鎖して拡大して大戦争にまでおよぶ。

  日本人的に一口いえば、いつまでも西洋の戦争は執念深いのである。

             *

 執念深い西洋は、日本と戦争をどう見ているのだろうか。
『ヨーロッパが戦争のさなかに、アジアから目を離せば、日本は抜け駆けで領土を奪う国家である。油断もスキもない」
 これがほぼ共通認識だろう。

 第一次世界大戦のさなか、日英同盟を口実にして、日本軍はドイツ領・青島に奇襲攻撃をかけた。そして山東半島のドイツの利権と南太平洋の島々を奪い取った。目が離せない。青島攻撃.jpg
青島の攻撃 大正3(1914)年10月31日 ~ 11月7日

 イギリスは欧米諸国から反発されて、ワシントン条約で「日英同盟」の破棄になった。裏を返せば、欧米諸国からイギリスは圧力をかけられ、明治時代に結んだ条約を破棄させられたのだ。

 第二次大戦でも、
 ナチスドイツがポーランドに侵攻した、すると、日独伊軍事同盟にもとづいて、日本は突如として仏領のインドネシアに侵攻し、石油資源などを奪い取った。さらに捕虜の英仏兵を虐待した。

 これが戦争犯罪だとみなされた日本軍将校は、太平洋戦争の終戦のあと、B級C級犯罪者として裁かれたのである。

             *

 木の文化の日本は、太平洋戦争から77年も経っている。日本人のほとんどは過去の出来事だと思っている。
 西洋は石の文化である。17世紀以降の歴史は近現在なのだ。だから100年、200年はまだ自分たちの歴史のなかにあるのだ。

  このたび(2022年2月)のロシアがウクライナにに軍事侵攻をおこなった。ロシアの動きをみていると、『ヨーロッパが戦争に突入すると、アジアから目が離れる。日本は抜け駆けの戦争を仕掛けてくる』という固定観念が色濃く出ている。
 ウクライナ侵攻の直後から、極東ロシアによく現れている。ロシア海軍が北方四島、日本海での軍事演習を行っている。軍事演習とは軍事的に日本を威嚇しているのだ。

 かれらはきっと日本の自衛隊が北方四島に上陸・侵攻し、日米安保条約の下に米軍の支援をもとめて居座り続けるだろう、とロシアは本気で真剣に考えているのだろう。
 歴史をみれば、日本のシベリア出兵もある。
シベリア出兵.jpg
 大正7(1918)年には、ロシア革命に干渉するため、日本はシベリアに軍隊を送った。米・英・仏が撤兵したのちも、日本は駐留をつづけた。国内外の非難により1922年に撤兵している。
               *
  
 ロシアがウクライナに簡単に勝利できず、苦戦しているならば、極東の陸海軍をウクライナに回せば、それなりに有利な展開はできるだろうに。
 日本人の大半は戦争解決など望んでいないし、この機会に北方領土を攻めよ、という国論などない。ところが、
「日本はシベリア、千島列島が手薄になれば、何をしでかすかわからない」
 ロシアの警戒心がゆるまないのだ。
 
 日本政府は「北方四島はわが国の固有領土だ」と主張する。固有領土。このことばは実に危険な用語だ。長い歴史のなかで、いつから固有領土なのか。それに応えられる日本人は少ない。政府の受け売りだ。
 領土問題は微妙なだけに、客観的に公平に吟味しておかないと、双方の交渉のテーブルは常にかみ合わず、挙句の果てには「武力で盗られた領土は武力で解決する」という、剛腕なナショナリストの為政者が出かねない。
 ウクライナ侵攻のあと、ロシアが平和条約交渉の破棄を伝えてきた。これを契機に、日本側はしっかりした歴史認識をもつ必要がある。
 次回はそれについて深堀をしてみたいい。
                      『つづく』
 

                  『つづく』   

クリミヤ戦争 = 黒船来航 =  北方四島 =  ウクライナ侵攻 ①

 あなたは、「1853年」と聞いて、なにを思われますか。
「クリミア戦争と黒船来航の年です」と答えられば、日本史と世界史に精通している方です。

 わが国の歴史教育といえば、嘉永6(1853)年6月に、アメリカ東インド艦隊のペリー提督が浦賀に来航した。わが国は開国か、攘夷か、と国内対立が起こた、としっかり教える。
ペリー提督.png 最近の教科書から消えだが、明治10年に読まれた狂歌「泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん)たった四はいで夜も寝られず」とか、鬼の顔のようなペリー提督の顔を教科書に載せて、日本人がはじめてアメリカ人に接し、恐れ、慄いたと教えられていた。

それはバカバカしいほど歴史的矛盾である。まさに、下級武士を主体とした明治政府が自分たちを大きく見せたくて、故意に江戸幕府を陥れるプロパガンダ教育だった。「ペリーの砲弾外交に蹂躙(じゅうりん)されて、おろおろ開国した」と刷り込んだのである。

 この歴史をわい曲したプロパガンダ教育は、最近は批判されつつあるが、少なくとも、明治、大正、昭和、太平洋戦争まで軍国少年づくりに使われたし、平成においても未だ私たちは偽りを教え込まれてきたのだ。

 教科書の嘘にたいして国民は実に弱いものだ。小・中・高生は歴史的事実としてうのみに信じなければならないのだから。

               * 

 嘉永6年に話しをもどせば、同年7月にロシア海軍のプチャーチン提督が長崎に来航し、開国をもとめた。ペリー提督も、プチャーチンも、米・露ともに黒船(蒸気船)と帆船であった。
 
 この1853年のクリミア戦争はナイチンゲールが活躍したことでも有名である。わが国の幕末は、世界の動き(戦争)とリンクしている。歴史は自国の都合だけで動かない。

プチャーチン.jpg プチャーチンが2度目に来航したのが翌年(元号がかわり安政元年)の下田港だつた。なおクリミア戦争のさなかだった。そこで日露和親条約がむすばれた。
 百数十年にわたり、蝦夷地、千島列島、樺太の国境が不明瞭であり、双方が武力のいざこざが起きてきていた。そこで、日露和親条約をもって択捉、国後は日本領であり、クルルからきたの千島列島はロシアと決めた。樺太は線引きせず、双方が共同管理で使うと決められた。

 ここまでの学校教育が正確におこなわれていたならば、2022年2月に勃発したロシアのウクライナ武力侵攻戦争は、日露でも無縁でないと理解できるだろう。

              *  

 ロシア国防省がことし5月から、ロシア太平洋艦隊が日本海で、新型対潜水艦ミサイルの発射演習をくりかえし実施している。ロシアは海軍力がさして強くない。それだけに同国としては規模が大きい。
 ふつうに考えれば、日本海・千島列島近くで、ロシアは軍事演習などしないで、黒海ににまわし、ウクライナ・クリミア半島の海軍力強化につなげればよいのに、とおもってしまう。ましてや、黒海で旗艦・モスクワが沈没させられたのだから。北海道のまわりで、巡行ミサイルなど飛ばしていないで。

 ロシアが単に日本の対露経済制裁を強化する日本に反発している面だけでないし、歴史的な日露戦争までさかのぼっている領土問題があるのだ。

                             《つづく》

戦争を終わらせるための核兵器 = 祈る、願う、広島平和運動の限界 (上)

 ウクライナ戦争がぼっ発した。歴史作家で広島出身者の私に、時おり、
「戦争は無くなりますか」
 と質問がむけられる。


「戦争は縄張りの争いだから、無くなりませんよ。たとえば、夫が浮気すれば、妻が憤り、相手の女性が夫婦の領域(縄張り)の侵入者とみなし、攻撃的に排除します。これと同様に、戦争の領土問題、宗教問題、政治資源の独裁など縄張りの紛争です」
 と応えると、東京在住の質問者から、
「いま、核戦争も辞さないと、プーチン大統領が強硬な態度です。とても怖いです。被爆都市・広島がなぜ平和運動として、ウクライナ紛争の核問題の解決に入ろうとしないのですか。そういう姿を見せていない」
 そんな疑問が私に投げかけられる。

「広島の行政も、教育者も、活動家も、平和運動そのものが『祈る、願う、被曝を語る』という枠から脱皮できず、旧態依然としています。そのうえ、『なぜ、広島に原爆が投下されたか』。歴史から語れる訓練ができていない」
 いずれの戦争も、ウクライナの戦争、イラン・イラク戦争、アフガン戦争でも唐突な侵略戦争におもえても、その実、背景には長い歴史を抱えています。それを歴史的に洞察できる鋭い感性がなければ、国際紛争の調停などできないのです。

        *
  
「広島が核問題で沈黙するから、日本も戦争抑止のために、核保有国になれと、世論は高まっていますよね」
 質問者はこういう。わが国は尖閣諸島(対中国)、北方四島(対ロシア)、竹島(対、南北朝鮮)に火種を抱えている。世論がウクライナ戦争の教訓から、日本も侵略される恐れがあるし、核保有国になれという意見が成熟してきている。
 日本政府は核武装をするかもしれない。広島はそれにたいしても無力に思える、という。

        *
 私はその質問を否定できない。それなりの理由があるからだ。
      
「広島の平和活動は歴史にもとづかず、表層的で、被害、被曝の立場でしか語れない。ここに問題があります。たとえば、鉄道事故がおきても原因を追究せず、被害者の傷ましさばかり訴えているのと、同じです。原爆投下の原因もどこにあるのか、歴史から探求しなければ、再発防止には役立たない」
 悲惨な戦争をくりかえさないためにも、広島は本来ならば、より戦争の歴史を知らなければならない。
 ところが行政も運動家らも、戦争を正面から取り組まず、目のつかない処へ遠ざけている。公的な書籍、教育現場、イベントなど、戦争ものはほとんど否定に近い。
「戦争」関連を広島市内から排除すれば、それが「平和・広島」の姿だと錯覚をしている。
『戦争を知らずして、平和などわかるはずがない』。まさしく真逆の姿である。

「原爆の歴史は真珠湾攻撃。日中戦争からですか」
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「もっと前です。明治時代の日露戦争からです。広島人は日露戦争からの仮想敵国が理解ができていない。日米戦争へ至った第一ステップを学ぼうとしない」

  日露戦争における日本海海戦、旅順攻略などで日本軍が勝った。ただ、軍事財政に疲弊していた。ロシアも革命の予兆が起きていた。

 アメリカ合衆国の斡旋の下で、ポーツマス条約が締結された。日本はロシアから賠償金を得られなかった。先の日清戦争では多額の賠償金を得たのに、と。
 これはアメリカが策謀だと言い、日本人は反発した。
 日比谷焼打ち事件、アメリカ大使館襲撃、こうした反米感情が全国に及んだ。国民の外交批判の声に押された帝国日本は「帝国国防方針」を作成し、アメリカを仮想敵国して軍備を拡張した。
 敵は海向こうだからと、帝国海軍の強化が図られた。

 アメリカ・ルーズベルト大統領は日露戦争の終結の労でノーベル平和賞をもらった。
 日本としては面白くない。
 アメリカも戦争を調停したのに、日本に憎まれる面白くない。

 当時、広島市出身の加藤友三郎(海軍大臣・内閣総理大臣)も関係する海軍力強化策を取った。

 アメリカは日本の軍備拡張を察し、反発して「オレンジ計画」(1920年代から1930年代において立案された、将来起こり得る日本との戦争へ対処するためのアメリカ海軍の戦争計画である)を立てて、日本を仮想敵国にした。

 このように日露戦争の直後から、帝国日本およびアメリカはともに仮想敵国なった。
 両国は中国問題でもつねに険悪な状況が生れていた。交渉はなにかと決裂し、ことごとく火花を散らしていた。

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 帝国日本の戦力拡大はいきなり仮想敵国のアメリカでなく、中国大陸の領土拡大にむけられた。満州事変、日中戦争へと戦火を拡大していった。
 張作霖爆死事件、盧溝橋事件など一連の事件は中国人がおこなったと日本側は嘘をついて(プロパガンダ)、それを戦争口実にしたものが多い。


 国際連盟の参加国は、満州国という傀儡(かいらい)政権までつくった帝国日本にたいして全会一致で非難決議をした。 (一か国は棄権)。国際連盟を脱退した日本は日独伊三国同盟を結んだ。

 欧米はとうとう満州から撤退を頑なに受け入れない日本にたいしてABCD経済封鎖をおこなった。
 石油の欠乏は時間がたつほどに軍事関係も、庶民生活も影響してきた。ついには、帝国日本は石油の必要性からインドシナ半島に侵攻した。と同時に、「石油があるうちに仮想敵国アメリカを攻撃する」と真珠湾攻撃になった。

         *

 帝国日本は戦争が拡大すると、一億総動員令を発布した。少年・少女らが学校で軍事訓練を受けはじめた。それはなにを意味するか。すべての日本人が民間人でなくなり、兵士になったのだ。
 そのうえ、帝国日本は「鬼畜米英」といい、敵兵を動物とみなして殺せ、と軍国少年にまで教えた。

 米軍は首都・東京を攻撃で房総半島、鎌倉海岸に上陸すれば、少年・少女たちも敵兵として射殺する必要が生じた。上陸作戦で日本側の捕虜になれば、鬼畜米英で、皆殺しに遭う。
 昭和二十年の沖縄戦線において、少年・少女たちも兵士となった。それが実証された。
 ここは陸上戦はなく、空爆しかなかった。トルーマン大統領が戦争終結のために原爆投下を命じた。

         *

 1975年10月31日、日本記者クラブで、中国放送の秋信利彦記者が昭和天皇陛下に、「広島に原爆が投下された、どのように受け止められますか」
「こういう戦争中ですから、広島市民に対して気の毒ですが、やむを得ないことと、私はおもっています」
 帝国日本の最高指揮官だった天皇陛下が、心の奥を述べられた。
『こういう戦争中ですから』
 長く苦しんだ歴史の重みを感じさせるお言葉である。

                  「つづく」

(下)は 原爆投下の大画面の映像に、オバマは拍手した。メルケルは顔をゆがめ、プーチンは十字を切った ここからはじまります。

   

戦争プロパガンダで 日本人の意識が変わった=国会でゼレンスキー、プーチン大統領、双方の主張を聞き、冷静に判断すべき

 戦争の宣戦布告(同日の演説)で、為政者らはいずれも平和ためだと声高にいう。
「われわれは戦争を望んでいるわけではない。ひたすら平和解決を望んでいる。和平を目的としてあらゆる努力を惜しまない」
 聞く方は感動的である。
「この戦争は自国の防衛のためのもので、苦渋の決断です」
 開戦には、決して積極的ではないとつけ加える。
 その実、裏では暴力的で残虐な計画がおおむね隠されている。武器商人の利益が潜んでいたり、領土拡大の野望があったり、あるいは権力や宗教の色合いが色濃くあったりする。

        *
 
 戦争の火ぶたが切られると、双方とも為政者から虚偽と欺瞞とウソが飛び交う。もっともらしく言い放たれる。真実は終戦までおおむね判らないことが多い。情報を自分に有利に使う。それら作為的な大嘘をプロパガンダという。

 これは戦争当事国だけでなく、報道する側においても国営放送が自国に不都合な点を隠す。民放がスポンサーの不利益だと忖度する。これも一種のプロパガンダだともいえる。

 一例をしめすと、私がふいにNHKニュース番組を見たとき、ウクライナのゼレンスキー大統領がことし(2022)3月16日、米議会でオンライン形式で演説している光景が報じられた。
「あれ冒頭の大切なスピーチが削除されている、なぜだ? NHKにとって何が不都合なのだろう」と不可解だった。
 TVが最大の情報源の年配者などは、ネットをみず、これでは正確な情報が得られない、と私は批判的な眼になった。

               *
 
 ゼレンスキー大統領が冒頭でこう述べていた。

『1941年12月7日の(日本による)真珠湾攻撃を思い出してほしい。空が戦闘機で黒くなった。2001年9月11日米同時多発テロを思い出してほしい。あなた方独立国家が空からの攻撃で、街が戦場になった。我々はロシアによる空からの攻撃で毎日、毎晩、この3週間、同じこと(米国が経験した空からの攻撃)を経験している」と述べた。その上で「ウクライナに飛行禁止区域を設定してほしいと願うのは、過剰ですか」と問いかけた。

 NHKはそこまでをすべてカットしていた
 かたや、ゼレンスキー大統領がキング牧師の有名な演説『私には夢がある』という言葉を引用していた。きょうの私は、私には必要なものがあると申し上げます。私は空を守る必要があるのです」と述べた。

 そして、ウクライナの都市へのミサイル攻撃による死者や負傷者を映した生々しい映像が流れた。
 スピーチの最後はジョー・バイデン大統領に英語で語りかけ、「あなたは一国のリーダー、偉大な国のリーダーだ。世界のリーダーにもなってもらいたい。世界のリーダーであることは、平和のリーダであることだ」と締めくくった。
 
           *
 
 NHKがなぜ冒頭の肝心スピーチを流さなかったのか。

 同大統領の演説のあと謎が解けてきた。かれこれ2-3時間も経つと、SNS上で『真珠湾攻撃が9.11と同じくくりでテロ扱いされた』とゼレンスキー大統領にたいする批判が、数千通の投稿となり、批判ごうごうとなった。
 NHKの報道編集局はおおかた生々しく報じれば、ゼレンスキー大統領批判に「火に油を注ぐ」と思ったのだろう。これまでウクライナは侵略された被害者であり、視聴者の同情を中心テーマに報じてきた。
 ところが一気に、それが真逆になった。報道関係者が日本人に不都合なことは流さない意識がはたらいたならば、これは情報操作である。
 もとより大平洋戦争の戦時下で新聞・ラジオが、軍部に気づかい日本人に不都合な負け戦の戦況を流さないという姿勢、つまり「日本式のプロパガンダ」が今日まで底流で生きているのだと私は思った。

「SNS」を取り上げてみたい
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① 「日本の真珠湾攻撃は、軍港などの軍事施設を標的にしたのであって、民間人を標的にしたわけではない。日本は戦後どれだけアメリカとの関係を保つことを努力してきたことか。それを一瞬で壊しかねないことを平気で言いながら、ゼレンスキー大統領は日本にも援助を求める。この外交は無神経すぎる」

② 「ゼレンスキーは、相手の心情とかを考えず軽々しく発言しちゃうところがある。ウクライナ政府側が正しいことを主張していたとしても、結局はロシアが怒ったから侵略行為につながっているわけでしょう」

③ 「確かに真珠湾攻撃は良くない攻撃でした。日本も反省しています。これが演説をさせてほしいとお願いしてくる国の取る言動でしょうか?お願いする相手に失礼だと思います。日本国民の心情を考えると国会での演説は認め難い」

④ 「ウクライナ国民はロシアからの侵攻を受けて気の毒だと思います。でも、これはゼレンスキー氏のNATO加入の表明が少々強引だった部分が要因の1つになかったでしょう。フィンランドやスウェーデンもNATOには加入していません」

⑤ 「日本がアメリカを攻撃したのは事実。日本で演説するときには、東京大空襲や原爆の被害に言及するんだろうな。ソ連、ロシアの脅威を語るのに、終戦間際の不可侵条約破棄せずに攻撃したことも、満州での蛮行を持ち出す必要がある」

⑥ 「日本人の多くに、ウクライナを支援する気持ちを萎えさせた。アルカイダは無差別テロ。真珠湾攻撃は、敵の軍艦、敵基地攻撃。死傷者が出たのは同じだが、本質は違う」

⑦ 「わが国の政府や国会を挑発したり、同調を求めても、戦争当時国の一方に加担することはわが憲法の平和協調義務に反するから不可能だ、ということは理解しておいた方がいい」

⑧ 「日本の国会でやる時はちゃんと関東大空襲出してくださいね。それなら納得します」

⑨ 「ゼレンスキーの大統領としての資質。言葉の質が軽い。ウクライナ国民の安全を考えればロシアへの返答の拒否一辺倒はゼレンスキーの独りよがりだと思う。侵略されてウクライナ国民はゼレンスキーを支持しているというけど、停戦終戦ともなり興奮が覚めれば、本当にこんな大きな犠牲を被る必要があったのかと考え直すでしょう」

⑩ 「リルタイムでゼレンスキーの演説を聞いていて、真珠湾攻撃が出てきたところは、ああ、出た〜と思ったと同時に少なからず動揺した。同時に、そういう感情が湧いた自分自身も意外で、複雑な気持ちになった」

⑪ 「第二次世界大戦では、日本は原爆を2発や無差別大空襲を受け大量の民間人が殺戮された。ロシアにも侵攻され、未だに返らぬ国土が存在する。当時の戦勝国ルールに今も縛られているし、いつまでも過去の行為を反省させられ非難され続けている。ゼレンスキー大統領がドイツも経済優先だと批判されているが、経済を軸に復興したドイツを簡単に批判できるだろうか」

⑫ 「ゼレンスキーに対し正直懐疑的になりました。日本には原爆が落とされている問題を含め、日本がなぜあの当時アメリカに戦争をしかけなければならなかったのか? 歴史的な別の問題がある。戦時、日本で死んだ多くの人に対してあまりにも失礼過ぎる。ゼレンスキーはそれを理解していないで、この発言はいささか日本人全体に対して喧嘩を売っているとしか思えない」

⑬ 「日本の報道はウクライナで起きている戦争に同情しているだけで、結局やっている事はネタとして消費しているだけではないか」

⑭ 「日本人がウクライナの歴史を知らないように、真珠湾攻撃のイメージが無差別攻撃のように思われてるのかもしれない。真珠湾攻撃は事実だが、民間人を標的にしてはいないから、例に出されるのは不適切、不快、となる」

⑮ 「クライナを応援しているが、守るために寄付金で戦闘機を買ったり他国の武力を使ってロシアを攻撃してしまったら、核を落としたアメリカと変わらない。ロシア市民を殺してしまったら、きっとゼレンスキー大統領も偉大な英雄ではいられなくなる」

⑯ 「ゼレンスキーは日米開戦の歴史的事実も知らないで、真珠湾を引用したのは、日本はどうせアメリカに追随する国だと高をくくっているのでしょう。日本の国会で話をするなんて、無神経では」

⑰ 「NATOに入りたかったのは、自国の平和のためだったのに現状は戦争。挙句、停戦条件に中立国化でもいいと言ってる。落ち着く先がそれなら、今回の戦闘が全く意味のないことになる。一歩引いてみるとゼレンスキー大統領が世界大戦を引き起こしたがっているようにしか見えない。一般の国民は内心 終戦だけを願ってるんだと思うんだけど。力強さも大事だが、引くことも大事」

⑱ 「民間人を標的にしたジェノサイドという意味であの戦争から引用するなら、民間人攻撃を厳禁した真珠湾攻撃ではなく、東京大空襲、ヒロシマ、ナガサキが適切だが、まさか、アメリカ議会で持ち出すわけにはいかないからね」

⑲ 「ゼレンスキーは大統領選挙でロシアに支援を受けたにも関わらず、当選するやNATOに秋波を送り続ける態度がプーチンの怒りを沸点に達したことは、開戦時からみんな分かっていた。裏切られたと感じたプーチンの怒りも少し理解できた気がする」

⑳ 「日本人(黄色人種)は人間とは見なされずに核を実験的に投下されたわけだし、詳しい事情が分からないまま、日本がこれ以上ロシアを刺激するべきではないと思います。ゼレンスキー大統領のやり方に流されていくと、今の戦争がさらに世界に広がって行くと思われます」

21 「この戦争を止められるのはプーチンとゼレンスキーでもある。戦争を続ける事でリスクがあるのはプーチンとウクライナ国民だ。ゼレンスキーは国民や各国をあおって戦争を辞める気はないと思います。ウクライナの人々はかわいそうだが、冷静にゼレンスキーの評価を考えた方が良いと思います」

22 「ロシアが悪いのは百も承知だが、やはり双方の意見を聞くべき。それが平和のために議論するって事でしょう。国会で、プーチンの話も聞いてみたい」

       *

 ゼレンスキー氏がこの3月23日に日本の国会で演説すると固まった。SNSではさっそく、
「日本を戦争に引きこむような発言はやめてくれ。日本はウクライナの同盟国ではない。ロシアの標的にされたくない」
「真珠湾と9.11はまったく違うから。間違わないように」
「日本の立場からすれば、ウクライナは中国や北朝鮮の軍事強化に協力した国家だ。その結果、中朝にさえ警戒しなければならない事態になった」
「日本の最高機関で、ゼレンスキー氏が演説すれば、ロシアを全面的に敵にまわす。日本が参戦国とみられる。北方領土問題を考えると、リスクが大きすぎる」
「アメリカの言いなりで、ロシア制裁への参加やウクライナの肩入れは、憲法の平和精神に反する」
「日本は戦後70年近くロシアと時間をかけて北方領土問題や平和条約締結を議論してきた経緯がある。ウクライナは時間をかけて、ロシアと議論してきたのか」
「真珠湾攻撃の発言はとうてい容認できません」
「演説後、議員が拍手すれば、ゼレンスキー氏を支持していると受け止められる、極東でロシアと日本が緊張関係におよぶ」
「ロシアにたいして非常に危険だ。演説に反対だ」

 ゼレンスキー大統領が米国議会で冒頭に「真珠湾攻撃」を引き合いに出したことから、大半が上記のような反発となり、国会で演説反対とか、なぜやるのか意味が判らないとか、ちょっと反対かな、居心地が悪いとか、SNSには怒涛(どとう)の如く巻き起こっています。 
      

【参考資料・開戦時の議会での演説】 

 ドイツ・ヒットラーが議会で、
「ポーランドで、100万人ドイツ系住民が迫害を受けた。住居を追われている。ポーランドは国家総動員令を発してドイツに挑発している。不本意ながら、もう堪忍袋の緒が切れた。戦争の責任はポーランドにある。ドイツではない」
 このような演説をしている。

 東条英機は、1941年(昭和16年)12月08日に、
「宣戦の御詔勅が発せられました。アジア全域の平和は、これを念願する日本帝国のあらゆる努力にもかかわらず、遂に決裂のやむなきに至ったのであります。これまで政府はあらゆる手段を尽くし、対米国交調整の成立に努力してまいりました。彼(米)は従来の主張を一歩も譲らざるのみならず、かえって英蘭比と連合し、支那より我が陸海軍の無条件全面撤兵、南京政府の否認、日独伊三国条約の破棄を要求し、帝国の一方的譲歩を強要してまいりました。これに対し帝国は、あくまで平和的妥結の努力を続けてまいりましたが、米国はなんら反省の色を示さず、今日に至りました。もし帝国にして彼らの強要に屈従せんと、帝国の権威を失墜、支那事変の完遂を切り得たるのみならず、遂には帝国の存立をも危殆(きたい)に陥らしむる結果となるのであります。事ここに至りましては、帝国は現下の時局を打開し、自存自衛を全うするため、断固として立ちあがるのやむなきに至ったのであります」。
 

 アメリカのルーズベルト大統領
「副大統領、下院議長、上院議員及び下院議員諸君。昨日、1941年12月7日――この日は汚名と共に記憶されることであろうか。アメリカ合衆国は大日本帝国の海軍及び空軍による意図的な奇襲攻撃を受けた。
 合衆国は、同国との間に平和的関係を維持しており、日本の要請により、太平洋の平和維持に向け、同国の政府及び天皇との対話を続けてきた。
 実際、日本の航空隊が米国のオアフ島に対する爆撃を開始した1時間後に、駐米日本大使とその同僚は、最近米国が送った書簡に対する公式回答を我が国の国務長官に提出した。この回答には、これ以上外交交渉を続けても無駄と思わせる記述こそあったものの、戦争や武力攻撃の警告や暗示は全くなかった。
 次のことは記録されるべきであろう。ハワイから日本までの距離を鑑みれば、昨日の攻撃が数日前、あるいは事によると数週間前から周到に計画されていたことは明らかである。この間、日本政府は、持続的平和を希望するとの偽りの声明と表現で、合衆国を故意に欺こうとしてきた。
 ハワイ諸島に対する昨日の攻撃は、米国の海軍力と軍事力に深刻な被害をもたらした。残念ながら、極めて多くの国民の命が失われたことをお伝えせねばならない。さらに、サンフランシスコとホノルルの間の公海上で、米国艦隊が魚雷攻撃を受けたとの報告も受けた」


 プーチン大統領・国民向け演説 2022年2月24日、この日にロシアがウクライナを侵攻

「ロシアはNATOの東方拡大へつよく危機感をもっている。1980年代末、ソビエト連邦は弱体化し、その後、完全に崩壊した。私たちロシア人はしばらく自信を喪失した。あっという間に世界のパワーバランスが崩れたのだ。
 NATOが1インチも東に拡大しないと我が国に約束した。しかしながら、西側諸国の無責任な政治家たちが露骨に、無遠慮にNATOの東方拡大し、その軍備がロシア国境へ接近している。
 この30年間、私たちが粘り強く忍耐強く、ヨーロッパにおける対等かつ不可分の安全保障の原則についてNATO主要諸国と合意を形成しようと試みてきた。しかしながら、NATOは、ロシアのあらゆる抗議や懸念にもかかわらず、ロシアの国境のすぐ近くまで迫っている。
『政治とは汚れたものだ』とよく言われる。そうかもしれないが、国際関係の原則に反し、道徳と倫理の規範に反するし、ここまでしない。ここ数年で、アメリカ国内で真の「うその帝国」ができあがっている。正義と真実はどこにあるのだ?
 さかのぼれば、国連安保理の承認なしにベオグラードに対する流血の軍事作戦を行い、ヨーロッパの中心で戦闘機やミサイルを使った。数週間にわたり、民間の都市や生活インフラを、絶え間なく爆撃した。
 リビアに対して軍事力を不法に使い、リビア問題に関する国連安保理のあらゆる決定を曲解した結果、国家は完全に崩壊し、国際テロリズムの巨大な温床が生まれた。リビア人道的大惨事にみまわれ、いまだに止まらない長年にわたる内戦の沼にはまっている。
 この地域全体の数十万人、数百万人もの人々が陥った悲劇は、北アフリカや中東からヨーロッパへ難民の大規模流出を引き起こしている。
 シリアにもまた、同じような運命が用意されていた。シリア政府の同意と国連安保理の承認が無いまま、この国でアメリカと西側の連合が行った軍事活動は侵略、介入にほかならない。
 何の法的根拠もなく行われたイラク侵攻だ。その口実とされたのはイラクに大量破壊兵器が存在するという信頼性の高い情報をアメリカが持っているとされていることだった。
 アメリカの国務長官が、全世界を前にして、白い粉が入った試験管を振って見せ、これこそがイラクで開発されている化学兵器だと断言した。
 あとになって、それはすべてデマであり、はったりであることが判明した。イラクに化学兵器など存在しなかったのだ。国連の壇上からもウソをついたのだ。信じがたい驚くべきことだが、事実は事実だ。その結果、大きな犠牲、破壊がもたらされ、テロリズムが一気に広がった。
 国際法を軽視した例はこのかぎりではない。
 90年代、2000年代初頭、ロシア南部の分離主義者や傭兵集団を支援していたとき、コーカサス地方の国際テロリズムを断ち切るまでの間に、私たちはどれだけの犠牲を払い、どれだけの損失を被ったことか。にもかかわらず、何の根拠もなく、私たちロシアを敵国と呼ぶ。
 2021年12月、私たちは改めて、アメリカやその同盟諸国と、ヨーロッパの安全保障の原則とNATO不拡大について合意を成立させようと試みた。アメリカの立場は変わらい゛、自国の目標を追い求め、私たちの国益を無視している。
 2014年にウクライナでクーデターを起こした勢力が、権力を乗っ取り、お飾りの選挙手続きによって、権力を維持し、紛争の平和的解決を完全に拒否した。
 終わりの見えない長い8年もの間、私たちは、事態が平和的・政治的手段によって解決されるよう、あらゆる手を尽くしてきた。すべては徒労に帰した。
 NATOによるウクライナ領土の軍事開発は受け入れがたい。NATO諸国の軍によって強化され、最新の武器が次々と供給されている。NATOが東に拡大するにつれ、我が国(ロシア)にとって状況は年を追うごとにどんどん悪化し、危険になってきている。
 しかも、ここ数日、NATOの指導部は、みずからの軍備のロシア国境への接近を加速させている。私たちにとって受け入れがたいことだ。
 ドンバスの人民共和国(ドンバスウクライナの東南部に位置する)はロシアに助けを求めてきた。ドンバスには数百万人の住民に対するジェノサイドがある。これを直ちに止める必要があったのだ。
 第二次世界大戦の際、ヒトラーの片棒を担いだウクライナ民族主義一味の虐殺者たちが、無防備な人々を殺したのと同じように。彼らは公然と、ロシアの他の数々の領土も狙っている。さらに核兵器保有までも求めている。そんなことは絶対に許さない。
  これを受け、国連憲章第7章51条と、ロシア安全保障会議の承認に基づき、また、本年2月22日に連邦議会が批准した、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国との友好および協力に関する条約を履行するため、特別な軍事作戦を実施する決定を下した。
 その目的は、8年間、ウクライナ政府によって虐げられ、ジェノサイドにさらされてきた人々を保護することだ。そしてそのために、私たちはウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指していく。また、ロシア国民を含む民間人に対し、数多くの血生臭い犯罪を犯してきた者たちを裁判にかけるつもりだ。
 ただ、私たちの計画にウクライナ領土の占領は入っていない。国連憲章第1条に明記されている民族自決の権利を取り消すものでもない。私たちの政治の根底にあるのは、自由、つまり、誰もが自分と自分の子どもたちの未来を、自分で決めることのできる選択の自由だ。希望するすべての人々が、この権利、つまり選択の権利を行使できるようにすることが重要であると私たちは考えている」


『註釈』
 プーチン大統領の侵攻は、ウクライナの「非武装化」と「中立化」、2014年にロシアが併合した南部クリミアでの主権承認などを求めるもの。
 額面通りにとらえれば、ロシアの国境のすぐ近くまでNATO軍を入れるな、という国土防衛(自衛権)である。

       SNSコメント:Yahoo!ニュースより   
       イラスト:中川有子

国際ペン ― 世界の作家のウクライナに関する声明 ― ノーベル賞受賞者、作家、芸術家

 世界中のノーベル賞受賞者、作家、芸術家は、1000人以上が署名した前例のない手紙でロシアのウクライナ侵攻を非難します

 文学と表現の自由の組織であるPENインターナショナルは、世界中の1000人以上の作家が署名した手紙を発表し、作家、ジャーナリスト、芸術家、ウクライナの人々との連帯を表明し、ロシアの侵略を非難し、流血の即時終結を呼びかけました。
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クライナの友人や同僚に

 私たち世界中の作家たちは、ロシア軍がウクライナに対して解き放った暴力に愕然とし、流血の終焉を緊急に求めています。

 私たちは無意味な戦争を非難し、プーチン大統領がモスクワの干渉なしに将来の忠誠と歴史を議論するウクライナの人々の権利を受け入れることを拒否したことで団結しました。

 私たちは、作家、ジャーナリスト、芸術家、そして最も暗い時間帯を生きているウクライナのすべての人々を支援するために団結しています。私たちはあなたのそばに立ち、あなたの痛みを感じます。
                   
 すべての個人には、平和、自由な表現、自由な集会の権利があります。プーチンの戦争は、ウクライナだけでなく世界中の民主主義と自由への攻撃です。

 私たちは、平和を求め、暴力を煽っているプロパガンダを終わらせるために団結します。

 自由で独立したウクライナがなければ、自由で安全なヨーロッパはあり得ません。

 平和が優先されなければなりません。
             
         (イラスト:中川有子) 
 
【原文・英語】

Nobel Laureates, writers and artists worldwide condemn Russia's invasion of Ukraine in unprecedented letter signed by over a thousand
Sunday 27 February 2022 - 5:30pm
Read the briefing in full
Nobel Laureates, writers and artists worldwide condemn Russia's invasion of Ukraine in unprecedented letter signed by over a thousand

PEN International, the literary and free expression organisation, has released a letter signed by over 1000 writers worldwide, expressing solidarity with writers, journalists, artists, and the people of Ukraine, condemning the Russian invasion and calling for an immediate end to the bloodshed.

Read in Ukrainian, Russian, Arabic, French and Spanish.

To our friends and colleagues in Ukraine,

We, writers around the world, are appalled by the violence unleashed by Russian forces against Ukraine and urgently call for an end to the bloodshed.

We stand united in condemnation of a senseless war, waged by President Putin's refusal to accept the rights of Ukraine's people to debate their future allegiance and history without Moscow's interference.

We stand united in support of writers, journalists, artists, and all the people of Ukraine, who are living through their darkest hours. We stand by you and feel your pain.

All individuals have a right to peace, free expression, and free assembly. Putin's war is an attack on democracy and freedom not just in Ukraine, but around the world.

We stand united in calling for peace and for an end to the propaganda that is fueling the violence.

There can be no free and safe Europe without a free and independent Ukraine.

Peace must prevail.

「良書・紹介」 明治に育った『或る船長の生涯』=山崎保彦 (著者・90歳にて)

 山崎保彦さんが、『老船長のLOG BOOK』につづいて、第2作目を出版された。題名は『明治に育った「或る船長の生涯」(大成丸学生航海修行日誌)』で、ことし(2022年)1月10日に発売された。

 著者は山崎保彦さんは90歳である。平易な文章で濃密な内容をもって父・彦吉の人生を世に送りだした。それはとりもなおさず、明治、大正、昭和中期までの海洋・海運および日中戦争の貴重な目撃証言である。
 
                *

 明治時代は近代化、西洋化で海洋国家を目指した。ところが、江戸時代の長い鎖国の影響から当時は大型の外洋船もなく、機関知識も、航海術すらもなかった。

 そこで政府は欧米の先端技術を導入し、造船業を盛んにする。なおかつ高度な操船ができる上級船員を養成することが急務だった。全国から最優秀な生徒が官費であつめられた。
学生たち.jpg かれらは招へいされた外国人教官の下で、英語による航海学・機関学を学んだ。実習は欠かせない。沿岸の練習船において、未熟な学生らの海難事故が多々あった。


 かつて幕末に勝海舟が咸臨丸(オランダから購入)で太平洋を横断したように、東京高等商船学校の学生らは、学び得た高度な操船技術を、その実力をいよいよ試すときがやってきたのだ。

 官立(国立)の東京高等商船学校の帆船・練習船(大成丸)が、明治43年10月26日に横浜港から後藤新平逓信大臣らに見送られ、初の世界一周の航海にむかった。

 その1期生として山崎彦吉(著者の父)が乗船していた。それから15ヶ月、3万6000海里の大航海に乗りだしたのである。暴風雨のなかでも毎日、義務として英文で「商船学校学生航海修業日誌」を正確に記す。現存する日誌は、学生が必死に克明に書きつらぬいた筆跡である。

 その貴重な資料をもとに、山崎保彦さんが英文を日本語にして書き綴った作品である。作中で、読者にわかりやすく東京商船大卒の中川有子さんが随所にイラストを挿入している。
 彼女は帆船の練習船に乗船した経験から、イラストはとてもリアルでビジュアルである。練習船の大成丸とはどんな練習船か。現在、横浜みらい博物館に係留されている帆船・日本丸だと想像してもらえばわかりやすい。
 
出版社 : 紙とペン書房

定価  : 1400円+税

 第1章 彦吉の生涯

 第2章 練習船大成丸世界一周(彦吉の航海日誌)
 
2022.1.30.yamzzaki.JPG               *

 
 第一部の「彦吉の生涯」について、

 現・東京海洋大学のHPによると、官営(国立)の東京高等商船学校は、明治・大正・昭和を通して難関校として有名である。俗に「陸士・海兵・高等商船」と受験生から呼ばれ、陸軍士官学校・海軍兵学校と並び称されるほど、全国から秀才が集まったと記されている。

 練習船・大成丸に乗船し世界一周した彦吉は、超エリートの東京高等商船学校を卒業すると、大正2年4月5日から国策会社の日新汽船に入社した。それは男爵・渋沢栄一が、揚子江流域の航海権を欧米と競う新会社として設立したものだ。むろん、航海士として日新汽船に入社するのは狭き門である。

                   *

彦吉船長 ①.jpg 山崎彦吉の勤務地は上海で、天津、大連など海域を航行する船の航海士であった。このころ中国において排日運動が盛んになりはじめていた。やがて昭和になると、第一次上海事変、さらには満州事変へと戦争が激化してくる。彦吉の日々は生死の境目に立つ航海である。
 
 商船は砲撃の対象になるし、昭和7年には日新汽船は民間事業として成立できなくなった。希望退職が募られた。父・彦吉はすでに結婚し広島を定住の地としており、帰国する。

 しかしながら、旧日本軍は揚子江流域にくわしい彦吉をふたたび上海にひきもどした。
 揚子江水先案内人(マリン・パイロット)として招へいされたのだ。上海港に出入りする民間船・軍用船を問わず、乗り込む水先業務である。やがて、第二次上海事変、さらに本格的な日中戦争へと進んでいく。まさに戦時一色である。

 昭和20年になると、日本側には船舶がなくなり、戦局が最悪になり、揚子江水先案内人の仕事もなくなった。彦吉は帰国を決意した。交通機関も満足になく、難行苦行で朝鮮半島の先端へ、さらに佐世保にわたり、列車で妻子がいる広島・宇品の自家にたどり着いた。

 苦労はそればかりか、翌8月6日は原爆の投下による大惨事である。悲惨な光景の町とか、恩師の娘さん・女子学生の死とかが、保彦氏の筆で客観的に描かれている。
 決して大げさな用語はない。それだけに事実の悲惨さがかもし出されている。

 ちなみに晩年の彦吉は、呉と江田島を結ぶ小さなフェリー船の船長になる。やっと平和な父の姿があった。
                   *

 息子の保彦氏も東京商船大学卒で、外国航路の大型船の船長や、大阪湾の水先案内人を務められた方である。
「航海日誌は事実しか書けません。どんな暴風雨のなかでも、冷静に記録します。ですから、フィクションは書けないのです」
 それだけに父親・彦吉が残した数々の日誌、手帳、手紙に冷静な目で向かい合ってより忠実につづられている。

 これらは日中戦争の下で、民間の商船エリートが正確に遺した史料としても第一級であり、加えて貴重な歴史証言といえる。山崎保彦さんはとてもよい仕事をされたと思う。


「関連情報」

①『明治に育った「或る船長の生涯」(大成丸学生航海修行日誌)』

 出版日 :令和4(2022)年1月10日
 出版社 : 紙とペン書房
 定価:1400円+税

 【お問い合わせ先 geihanshi@gmail.com 住所、氏名、電話番号、注文数】
  
②『老船長のLOG BOOK』

 出版日 :令和2(2020)年12月10日 (2版)
 出版社 : 紙とペン書房
 定価: 1600円+税

 【お問い合わせ先 geihanshi@gmail.com 住所、氏名、電話番号、注文数】
  

ヤマサ醤油がすごい。世界で一社しかない「新型コロナワクチン原料供給」=HPから

「ヤマサ醤油」(本社・千葉県銚子市)が、新型コロナウイルス対策として、世界中で使用されているmRNAワクチンに欠かせない原料(シュードウリジン)として主要な供給元になっている。

head1 (2).jpg それも世界に一社しかない、と私は聞いておどろきだった。

 私が社会人になったばかり会社員時代に、顧客のひとつがヤマサ醤油だった。月に一度は銚子に訪問していたから、より親しみをもっている。

          ☆

 ここ数か月は、日本人がなぜコロナワクチンの新規感染者が極度に少ないのだろうか、と疑問を持っていた。欧米では一日に数万人単位の感染者数である。おなじ東洋人の韓国でも半端な患者数ではない。
 しかし、日本は100人前後だ。あまりにも違いすぎる。

 菅元首相が記者会見でしばしば「専門家の意見を聞いて」と話されていた。その専門家はこの秋の新規感染者の激減にたいする医学的な見地を示さなかった。
 わからなかった。それが本心であり、正解だろう。
 
 最近、ふたたびオミクロンの拡散の恐怖(?)話題が出てくると、専門家はのこのこTV出演し、あれこれ語っている。実に、内容が乏しい。
「この学者は、新型コロナウイルスの研究などロクにしないで、テレビに出まくっている。足を運ぶのはスタジオでなく、研究室だろう」と批判したくなる、過去の名誉教授の肩書だけで生きているタレント・学者を多くみかける。

           ☆

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 菅元首相が一人百万人接種という途轍もない目標をかかげた。総裁選を投げだし、コロナ対策に没頭してきた。
「百万人など、できないだろう」と私のみならず、日本人のほとんどは否定的な目でみていた。
 渡米した当時の菅首相は、ファイザー社などから、大量の供給を仰いだ。河野大臣もヨーロッパ諸国からワクチンを引っ張ってきた。菅=河野コンビは、一日百万人を実現させた。むろん、それには医療機関の医師や看護師たちの甚大な協力があったからだ。
 いまや世界各国から日本ミステリーとまで言われている。
「なんで、日本だけがワクチンが手に入るのだろう?」
それが不思議だった。
 
 新型コロナウイルス対策として、mRNAワクチンに欠かせない原料メーカー「ヤマサ醤油」のシュードウリジンの存在があったからだろう。
「ファイザーにしろ、モデルナにしろ、日本政府の要求を受け入れておかないと、『ヤマサ醤油』から供給を止められるか、絞られる」という不安がある。
 日本が最優先の出荷国になったのだ、と私は理解におよんだ。

         ☆

「ヤマサ醤油」HPから、「シュードウリジン」に関して一部抜粋してみます。(写真はすべて引用です)

 mRNA合成用原料のシュードウリジン

 ヤマサ醤油の医薬・化成品事業部では、核酸系うま味調味料の製造開始を発端に、核酸化合物に特化して60年以上事業展開してきています。1970年代からは医薬品原薬の製造販売も開始しています。
 以前は研究用試薬として数多くの核酸化合物を合成し販売していましたが、その一つとしてシュードウリジンを1980年代から販売しております。

2021.12.26.01.png 古くから製品として持っていたこともあり、今話題のmRNA(メッセンジャーRNA)の合成用素材として以前からご使用いただいております。
 体内に存在する通常のmRNAは配列をなしている4つの核酸化合物の一つがウリジンであるのに対して、治療薬やワクチンとして開発されているmRNAはウリジンのかわりに修飾核酸(シュードウリジンやその他の誘導体)が使われています。
 尚、シュードウリジンはRNAの一つであるtRNA(トランスファーRNA)などの構成要素としてもともと体内にも存在します。
※tRNA:RNAの一種で、遺伝情報からタンパク質が合成されるときに、アミノ酸をリボソームに運ぶ役割をもつ。

 新型コロナウイルスワクチンのmRNAは、コロナウイルスの突起部分(スパイクタンパク質)のmRNAを投与すると、そのmRNAによりスパイクタンパク質が細胞内で生成され、結果それを攻撃する抗体が作られるという仕組みです。
 通常のmRNAですと自然免疫により減少し蛋白質が作られにくくなるところ、ウリジンを修飾核酸に置き換えたmRNAの場合、この免疫機能を回避できるようになり、十分タンパク質が作られます。


bubl01_ph04.png mRNA自体は今回の新型コロナウイルスの開発以前から、他のワクチンや治療薬として研究開発されております。

 ヤマサ醤油では研究段階からシュードウリジンを提供してきております。

 その流れのなかで2020年に新型コロナウイルスワクチンの開発が始まり、おなじ用途のmRNA製造用でも、ご利用頂くようになっています。

 2020年12月初め、新型コロナウイルスワクチンのmRNAが、世界で初めてイギリスの規制当局から、緊急使用の承認を受けましたが、ヤマサ醤油ではまだどうなるか分からない秋の段階で、承認された場合に備え、増産体制を整えました。

 未だ需要は増える見込みであり、また将来ふたたびパンデミックが起こった際にも無理なく供給ができるよう、さらに製造能力拡張をふくむ体制整備をおこないます。