寄稿・みんなの作品

【転載・誌】 グラス=岩佐なを

孔雀船・Vol.82より転載

作者:岩佐なを さん 東京・千代田区在住
「岩佐なを詩集 海町」(思潮社刊・2400円)
               思潮社:新宿区市谷砂土原町3-15 


【関連情報】

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船82号」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

グラス 縦書き


                             写真:滝アヤ

        グラス  岩佐なを         

    

     はるかかなたの夕暮れからととどく
     うすみどりがかったひかりを反射させ
     ふちをきらきら
     きらきらするふちをもったグラス
     両の手で大切ににぎる
     手のひらの広さにおさまる
     グラスの底
     手のひらのぬくもりを信じない
     グラスの底のやみからは
     樹木がそびえていて 
     枝の眼はたちまち
     つややかな葉にかわり   
     幹は風をうけて揺れいる
     背が高くなるのはメタセコイア
     背筋が痛そうな一本
     夕暮れを揺らすと
     グラスのふちから内側に
     酒が流れ落ち
     樹木が濡れてゆく
     少しして
     うつわを割った

【寄稿・写真エッセイ】 防潮堤 = 久保田雅子

【作者紹介】

 久保田雅子さん:インテリア・デザイナー。長期にフランス滞在の経験があります。(作者のHPでは海外と日本のさまざまな対比を紹介)。
 周辺の社会問題にも目を向けた、幅広いエッセイを書いています。

「週末には葉山の夕日と富士山を狙っています」。その写真は毎月、ブログの巻頭・巻末で紹介されています。心の憩いになります。

         作者のHP:歳時記 季節と暦の光と風・湘南の海から

   防潮堤   久保田雅子    

 海は人の心をゆったりさせてくれる。海の好きな私が、週末を過ごす葉山町へ越してきたのは10年前だ。それまでは横須賀市佐島だった。
 佐島のマンションへ入居して間もない頃、目の前の海で工事が始まった。大きなテトラポットが、岸から50mぐらい先の海に次々と積まれていく。
(何のためだろう? 防波堤はすでに海沿いの道路にできているのに…)
 横須賀市役所に電話で問い合わせてみた。あいまいな返答で電話はたらいまわしの末、担当者が留守ということで終わった。

 翌週、魚のイラストつきで「魚の棲家を作ります。横須賀市」という看板が立てられた。
(なんのこと?)
 海にはテトラポットが積まれて、湾内が2つに分断され、カモメの溜まり場になった。
(カモメのための魚の棲家だった?)


(写真左・テトラポット 右・湘南サニーサイドマリーナ)

 しばらくすると、海辺の敷地で工事が始まった。マンションの管理人に訊ねてみると、ヨットハーバーの建設だった。横須賀市役所専属?の港湾工事土木建設会社の社長がオーナーだという。彼はまず横須賀市からの受注で、テトラポット工事を行った。のちに自分が管理、係留する舟艇が、台風でも波をかぶらないようにするためのものだったのだ。

 やがてハーバーオフィスの建物が完成して、陸揚げされたヨットが並び、海は全く見えなくなった。私はあきらめて葉山への引越を決めた。

 いま、東北沿岸(福島、宮城、岩手県)の巨大防潮堤の工事計画が進行中だ。
(私は佐島での経験から、他人事ではなく気になってしかたがない…)

 毎日海を見て暮らしてきた人々が、これからは高いコンクリートの壁を見て暮らす事になる。東北の美しい海岸の風景は失われて、海の見えない海辺の町になるのだ。痛ましい。

(私のように、いやなら引越とはいかないだろう)

 漁業で暮らす人たちは、朝起きたらすぐに海の様子を見たいはずだ。
 観光はどうなるのだろう…。

「北海道南西沖地震」から20年目の奥尻島では、防潮堤ができてから、海産物が半減してしまった。山から、腐葉土の栄養を凝縮した、海の生物に不可欠な表層地下水が、防潮堤にさえぎられて海に注がれなくなったことが原因だ。
 海はアワビやウニどころか海藻も育たない、白い石ころだらけの海底(磯焼け)になってしまった。山と海は一体だったのだ。
 防潮堤工事のころは復興景気でにぎやかだった島も、いまは人口が減少して、復興時の多額の負債に苦しんでいる。

 東北沿岸の防潮堤計画は、奥尻島を参考に熟慮して欲しい。東北の人々はおとなしい。地元のつながりも深く、反対意見は言いにくい。
 海が見えなくなり、海産物が減少したら住民はどうなるのだろう。精神的、経済的な痛手は、今はまだ見えないけれど心配だ。

(横須賀市のような、不思議な港湾工事会社の存在も気がかりだ。彼らは裏に廻ると住民より強い)

 気仙沼市舞根(もうね)では、住民が「海と共にくらしたい」との理由で、防潮堤計画を撤回させた。(拍手)

【寄稿・詩】 セントラルパークの天の池 = 結城 文

作者紹介=結城 文(ゆうき あや)さん
 
日本ペンクラブ(電子文藝館委員)
日本比較文学会、
埼玉詩人会、日本詩人クラブの各会員
日本歌人クラブ発行
『タンカジャーナル』編集長

日英翻訳家


セントラルパークの天の池 縦書き


 セントラルパークの天の池  結城 文

            

セントラルパークのゆりの木四本が囲む
楕円の天の池
まだ完全に大きくなっていない嫩(わか)葉(ば)が
レエスのように縁どる
薄青の池
何かが
そこから
宇宙にむかって昇天してゆく――

日常生活では
下を向いていることの多い首を
精一杯伸ばして
その池を見あげる
緑の木立の向こうは車の往来
クランクションや走行音が
思いのほか近い

緑の窪みの木蔭には
乳母車の親子
思い出話の老夫婦
リモートコントローラーで
玩具の白帆を走らせる若い男女

アフガニスタンへ
イラクへ
いまだ派兵している国とはとても思えない
けれど さほど遠くない
タイムズスクエアでは昨日
爆発騒ぎがあったばかり

太平洋をわたって
十数年ぶりにここへきて見あげる
希薄さの――
とりとめもない天の池
 
嫩(わか)葉(ば)がレエスのようにさざめき
一葉が風を捉えるとそれが次の葉に移り
やがて一枝の揺れは木全体の揺れになる
私の生の
貴重な幕間(インタバル)
セントラルパークの天の池

【寄稿・推薦図書】 アンナ・カレーニナの法則=三ツ橋よしみ

『作者紹介」  三ツ橋よしみさん:薬剤師です。目黒学園カルチャースクール「フォト・エッセイ」の受講生です。

 東京近郊の「田舎暮らし」がはじまりました。いまは見るもの聞くものが新鮮だそうです。読書好きで、田舎暮らしに、読書とは贅沢ですね。



  アンナ・カレーニナの法則 三ツ橋よしみ   

                    
 歴史学者、ジャレド・ダイヤモンド博士の著書「銃・病原菌・鉄」(発行:草思社 倉骨 彰訳)は、ピューリッツァ―賞を受賞し、2010年に、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」の第1位となり話題になった。
 昨年には文庫本化されたが、上下巻あわせて800ページに及ぶ大著だ。手に入れたものの、なかなかスラスラと読みすすめない。

 この夏の暑さに外出を控え時間ができたので、ようやく上下巻を読み終えることができた。


 ヨーロッパ大陸には多数の文明国が存在する。一方、オーストラリア大陸や南米大陸、アフリカ大陸の先住民族は、文字を持たず、近代文明を発展させることができなかった。アメリカ先住民やインカ帝国は、旧大陸からの移住者たちに、やすやすと征服されてしまった。

 なぜヨーロッパは文明化され、旧大陸は、文明化されなかったのだろうか。

 そんな世界史の疑問を、生物地理学者のダイヤモンド博士が、生物学、人類学、地理学、言語学などの知識を駆使し、といていく。知的興奮に満ちた本だった。
 約700万年前に、人類は、類人猿から枝分かれした。長いこと狩猟採集生活をしていたが、1万1000年前に、野生動物を飼いならし、植物を栽培するようになった。
 ヤリをもって獲物を追いかける暮らしから、定住し家畜や作物を食べる暮らしに変わった。多くの人々が養えるようになり、人は集まって住むようになった。食糧生産をするようになった人々は、技術を発展させ、人口を増やしていった。


 第9章は「なぜシマウマは家畜にならなかったか」というサブタイトルだ。章はこんな文からはじまる。
 「家畜化できている動物はどれも似たものだが、家畜化できていない動物はいずれもそれぞれに家畜化できないものである」と展開する。

「おや、どこかで聞いたことがあるような?」
 そうです。お気づきの通りこの一文は、トルストイの「アンナ・カレーニナ」の有名な書き出し「幸福な家庭は似通っているが、不幸な家庭はそれぞれに不幸の内容が異なるものである」をもじっているのだ。
「アンナ・カレーニナの法則」ねえ。わたしは、初めてききましたよ。

 なるほど、「幸福な家庭」では、必要不可欠な多くの要素、たとえば愛、経済、親戚関係、性格、宗教、価値観などで、夫婦の意見が一致しているか、まあまあ一致していなければならない。そして、そのうちのいくつかが欠けた場合に「不幸な家庭」ができるというわけである。

 それじゃあ、ダイヤモンド博士のいう「家畜化できる動物」とは何か。

 馬、牛、羊などの大型哺乳類をさす。家畜化できる動物を、大陸内に持っていた国々は、農耕作業をさせ、輸送手段にし、肉や乳製品を手に入れ、経済発展を遂げていく。
 一方、アフリカ大陸のシマウマは、気が荒く、近づく人間は蹴飛ばしてしまう。家畜にならない動物なのだ。アフリカ大陸には、人間生活に役立つ働き者の動物が存在しなかった。それがアフリカの経済発展をさまたげる一因ともなったという。
 様々な要因を重ね、世界の「地域格差」が広がっていった。

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【寄稿 詩】  夜間飛行 = 結城 文 

作者紹介=結城 文(ゆうき あや)さん
 
日本ペンクラブ(電子文藝館委員)
日本比較文学会、
埼玉詩人会、日本詩人クラブの各会員
日本歌人クラブ発行
『タンカジャーナル』編集長

日英翻訳家



夜間飛行 結城 文


 夜間飛行  結城 文 

            

零時五分発成田行き
まどろむともなく目を閉じていたが
眠れぬままに機窓を覗く

稲妻のように赤い光が
一定の間隔をもって 
翼に閃く
地上で見るよりたくさんの大きな星が
みずみずしい光をもってきらめく
地上のオレンジ色の灯
点々と小さな灯をともして
そこにかしこに人は暮らしているのか――

ともす灯のまばらなところをすぎて
都市の在り処をしめすか
豪華絢爛にちりばめたトパーズのビーズ
光のなにも見えない暗黒は海

機窓の右手上方 やや明るんだ空が見え
一筋さっと刷いた薄紅
東方からのわずかな光をうけ
彫刻家の奔放なオブジェのような
雲の林
東天の薄紅は赤みをまし
次第に空は白みはじめる
星はつねに同じ位置に輝いているのだが
見下ろす地上は暗黒になったり
トパーズの明かりになったり
つつましいひとつひとつの灯の点在になったり

天に流れているのは
あるかなきかの移ろいの時間
地に流れているのは
目まぐるしい移ろいの時間

狭い機窓のなか 
錯綜し流れる
広大な空間と時間――
恍として
闇と光の饗宴のなかを漂う

【転載・詩】 睦月にくるまれて =  望月苑巳

 望月苑巳さん:日本ペンクラブ会報委員会の副委員長です。現在はジャーナリスト、詩人、映画評論家として活躍されています。


「孔雀船82号」頒価700円(2013年7月15日発行)より転載
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

睦月にくるまれて 縦書き PDF



【関連情報】

★スポーツ新聞で活躍の現役映画評論家グループが運営する★

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  睦月にくるまれて  望月苑巳

 夕立を匂う
 実朝の匂う。
 やわらな梨花
 その下で夏のような命がながれ
 しなだれる。
 その日は雪曼荼羅の睦月だったが
 小路からは手毬唄が沿うようにながれていた。

 花弁から溢れだすあなたは
 いくら絞っても
 焦点がぼけてゆくよ
 あつもの
 思惟の雑踏に踏みにじられ
 あつもの
 おだやかに舞い降りた
 実朝よ。

 定家がゆっくりと言葉の弓をひけば。
 手毬唄を教えながら
 夕立の、しめやかに虹の橋を渡ってゆく。
 後鳥羽院の弔辞
 どこまでもきなくさい弔辞
 春まで待てないと気は遣って。

 定家は舞ながらうたう
 梨花にくるまれて泣きながら
 燃え尽きるよ
 水の国から
 あなたは言の葉へ。

【寄稿・詩】 いつの日か= 結 城  文

作者紹介=結城 文(ゆうき あや)さん
 
日本ペンクラブ(電子文藝館委員)
日本比較文学会、
埼玉詩人会、日本詩人クラブの各会員
日本歌人クラブ発行
『タンカジャーナル』編集長

日英翻訳家



いつの日か=結城文 縦書きPDF

 いつの日か  結城 文 

いつの日か思い出すだろう
この山桃の並木道を――
冬の日はこんもりと暗く
緑に押し黙って
梅雨の頃には
赤紫の実を路にまき散らした
路ゆく人に踏まれ
心の痣のような染みを印した
 
いつの日か思い出すだろう
この山桃の並木道を
夏の日は
くっきりと木蔭をつくって
強い陽射しから私をかばった 
 
いつの日か思い出すだろう
この山桃の並木道を
とある春の日
葉むら深く
巣作りした鳩の
くぐもった啼き声を
駅へと急ぐ私に聞かせた

おお 帰らない日々の――
ノスタルジーは
人のもつ
もっとも高貴な感情といったのは
ロシアの音楽家だったろうか?
忘却に沈みゆく日々の 
いつの日か思い出すだろう
この山桃の並木道を
                        

【寄稿・フォトエッセイ】 地球儀=久保田雅子

【作者紹介】

 久保田雅子さん:インテリア・デザイナー。長期にフランス滞在の経験があります。(作者のHPでは海外と日本のさまざまな対比を紹介)。
 周辺の社会問題にも目を向けた、幅広いエッセイを書いています。

「週末には葉山の夕日と富士山を狙っています」。その写真は毎月、ブログの巻頭・巻末で紹介されています。心の憩いになります。

         作者のHP:歳時記 季節と暦の光と風・湘南の海から

    地球儀    久保田雅子    

 わが家の子供たちが小学生のころ、クリスマスプレゼントに地球儀を贈った。
 広い世界を知る素敵なプレゼントだと思ったのだが、かなり不評でがっかりした。子供部屋の棚の上に長いこと置いてあったが、まったく使わない様子を見て、とうとうある日処分した。そのころの私はゆっくり地球儀を見る時間などなく、毎日をあわただしく過ごしていた。

 先日、娘に「誕生日プレゼントになにか欲しいものある?」と聞かれたのですぐに<地球儀>を希望した。最近、地図帳をみていて、シベリアや北極付近などが、ほんとうはどんな形なのか知りたくなっていたからだ。地図帳では赤道付近は正しいが北極や南極に近づくほど、その形は不正確になってしまう。それも目で確かめたかった。
 
 希望した地球儀が誕生日に届いた。さっそく箱から出してデスクに置いてみる。直径30センチぐらいのベージュ色系のおしゃれな地球儀だ。
 斜めに傾いた地球を見て、この斜めは地図帳ではわからないことだと気付いた。23,4度の傾きで、なぜ地球に四季があるのかを、再確認できた。
(そうか…)誰でも知っていることなのに、私はよく理解していなかった…。


 フランス行きの飛行機に乗ると、座席のポケットに入っている小冊子には、飛行経路の地図が載っている。機内のテレビ画面には飛行経路が映しだされて、現在どのあたりを飛行中かわかるようになっている。東京を出発するとすぐに北へ向かい、ロシアの上空を西へ飛行して行く。フィンランド付近からドイツを通ってフランスへ下りていく。その都度(なぜ遠回りするのかな、中国上空を西へまっすぐ行けば、フランスはもっと近いはずなのに…)と思っていた。


 だが、地球儀を手にしておどろいた。東京・パリを直線で結ぶとロシアを通るのだ。中国は通らない。飛行機はちゃんといちばん近いコースを飛んでいたのだ。(地図帳で東京・パリを直線で結ぶと中国を通るのに…)

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【寄稿・フォトエッセイ】切り干し大根はいかが=三ツ橋よしみ

『作者紹介」  三ツ橋よしみさん:薬剤師です。目黒学園カルチャースクール「小説の書き方」、「フォト・エッセイ」の受講生です。

 東京近郊の「田舎暮らし」がはじまりました。いまは見るもの聞くものが新鮮だそうです。「見慣れてしまうと、感慨が薄まりますから」とシリーズで書かれています。


  切り干し大根はいかが   三ツ橋よしみ   


 佐倉の畑で、大根が150本ほど採れた。友人、知人、ご近所さんに配りました。すくすくと育った姿のいい大根だと、皆さんに喜んでいただきました。
 でも、たこのように枝分かれしてしまった大根は「嫁に出す」には、ちょっと気が引けます。十分耕さなかった土に育つと、ごろ土にあたった根が別れてしまい、たこのようになるそうです。家庭菜園一年目は、そんなことも知りませんでした。

 そんな、たこ足大根が5、6本、家に残りました。
そうだ、切り干しにしたら、たこ足も気にならなくなると、思いつきました。

 さっそくホームセンターに「切干突(きりぼしつき)」を買いに行きました。
 その名も「切干突 羽子板」です。
 羽子板ほどの板の中央に、ぎざぎざの刃をつけただけの簡単な道具で、板には「羽衣」と焼印まで入っています。

 都会では見たことのない道具ですが、この辺りでは簡単に手に入ります。
 見てくれの悪い大根を、千切り大根にしました。

 おっととと、気をつけて。指を削っちゃわないようにね。 

 盆ざるに広げた千切り大根を、玄関先で干します。茶色は、干して2日目。
白いのが、この日干した大根です。3日でからからになりました。

 種から育てた我が家の切干大根です。黄金色に輝いています。
干しあがったばかりの切干大根はどんな味かしら。1本つまんで、食べてみました。まだ太陽の暖かさが残っています。ほんのりとした甘さが口の中に広がりました。

 切干大根を甘酢和えにしましょう。作り方はとっても簡単。切干大根を水に10分ほどつけます。柔らかくなったら軽く水気を切り、甘酢をかけて出来上がりです。切干大根をかむと、はりはりと元気のよい音をたてました。

 写真は、大根といっしょに干したキュウリを、加えて和えたものです。
ビールのおつまみにもぴったり、すっきり夏向きの一品になりました。

【寄稿 詩】 道 = 結城 文

作者紹介=結城 文(ゆうき あや)さん
 
日本ペンクラブ(電子文藝館委員)
日本比較文学会、
埼玉詩人会、日本詩人クラブの各会員
日本歌人クラブ発行
『タンカジャーナル』編集長


日英翻訳家

道 縦書き PDF


  道   結城 文 


小鳥の目になって飛行機から俯瞰する

ひとすじの道がとおっている

おぐらい緑のなかを
ほの白く ほそく 
どこまでもつづいている道は
――女のよう

道には 
往還するものがあるはずなのに
人の子ひとり
トラック一台の影さえもない
街路樹もなくむきだしの道は
完全に空無――
道は
完全な無をのせたまま 
カーブしながらしなやかに前へ前へとのびる
そう 白い道には終りがない

道は 
上をゆくものの時間を刻みながら
道は 
上をゆくものの生の重みを受けとめながら
青い球体の上をほそほそと
どこまでもどこまでもつづいて
ほのかに白い円環となる

道に 
人間の姿が車が現れないことを
なぜともなく祈る

夕闇は
地表の森にもっとも深い
闇は
空からおりてくるのではなく
地上から立ちあがる――
道は
すでに森に没した

かなしいまでに明るい余光のなか
うすずみいろが ぼあっとにじんで 
麗江古城が見え出す