【転載・誌】 グラス=岩佐なを
孔雀船・Vol.82より転載
作者:岩佐なを さん 東京・千代田区在住
「岩佐なを詩集 海町」(思潮社刊・2400円)
思潮社:新宿区市谷砂土原町3-15
【関連情報】
孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。
「孔雀船82号」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳
〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738
写真:滝アヤ
グラス 岩佐なを
はるかかなたの夕暮れからととどく
うすみどりがかったひかりを反射させ
ふちをきらきら
きらきらするふちをもったグラス
両の手で大切ににぎる
手のひらの広さにおさまる
グラスの底
手のひらのぬくもりを信じない
グラスの底のやみからは
樹木がそびえていて
枝の眼はたちまち
つややかな葉にかわり
幹は風をうけて揺れいる
背が高くなるのはメタセコイア
背筋が痛そうな一本
夕暮れを揺らすと
グラスのふちから内側に
酒が流れ落ち
樹木が濡れてゆく
少しして
うつわを割った