かつしかPPクラブ

梅雨晴れ間の週末、箱根路は閑散としていた=郡山利行

 今年2015(平成27)年7月11,12日(土日)に、車で箱根を訪れた。

 今年6月30日に気象庁は、箱根町大涌谷園地付近(噴煙地)に、火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を発表した。
 箱根町は、地域防災計画に基づいて大涌谷園地への立ち入り規制を行った。


 火口周辺警報が出ている地域は、大涌谷噴煙地を中心とした半径約1kmの範囲内である(地図に加筆した朱円)。
 大涌谷を通る箱根ロープウェイは運転を休止し、近隣県道の早雲山~姥子間は通行止めとした。 また自然探勝歩道・散策路・ハイキングコースも立ち入り禁止となり、さらに警報区域内にある別荘地の一部には、避難指示も出された。


7月11日(土) 晴れ

 昼過ぎには、国道1号線の箱根峠付近にある、『道の駅箱根峠』に着いた。駐車場の車の少なさと、施設内の利用客の少なさに、わが目を疑った。
 箱根では宿泊予定していなかったので、箱根湯本の『箱根路 開雲』に電話を入れてみると、即座に予約することができた。 



 芦ノ湖へ下って、正月の箱根駅伝の地や旧関所跡の付近は、歩道も車道も、遠くまで見通すことができた。大型観光バスを見かけることはなかったが、西欧系の外国人散策者をたびたび見かけた。
 元箱根の交差点付近も、湖尻桃源台付近も、仙石原の交差点付近も同様で、車の運転は、ゆったりとできた。午後3時ごろ入ったポーラ美術館は、大涌谷に最も近いためか、一部の展示品を避難させたので、ご理解を との掲示があった。
 館内にはほとんど人がおらず、セザンヌの特別展を鑑賞することができた。


7月12日(日) 晴れ

 午前中、強羅の曲がりくねった急坂の道路も、対向車をほとんど気にせずに、走ることができた。マイセンアンティーク美術館も、来館者はほとんどなく、館長の村田さんと、伊万里・マイセンの磁器談をすることができた。
 正午頃、仙石原の玄関のような所にある、星の王子さまミュージアム(箱根サン=テグジュぺり)へ。若いカップルを大勢見かけて、ようやく少し箱根らしかった。


 最後に訪れたのが、芦ノ湖西岸の箱根スカイラインにつながる長尾峠の展望台である。 パノラマ写真と望遠写真。 約4km離れて大涌谷を、見ることができた。 晴天ながら、もやがかかって鮮明に見ることはできなかった。 この噴煙が、大事に至らないように祈る。


≪(株)小田急リゾーツ 『箱根を観光の皆さまへ』資料より≫
地図 : 国土地理院ウオッチズ地図(部分)に加筆

「東京アンチモニー工芸品」わが国の伝統的工芸品に(下)=郡山利行

 6月19日に、山中治男さん(葛飾区奥戸在住)電話で取材した。山中さんは山中金属加工所の社長で、葛飾アンチモニー会所属である。
 山中さんはアンチモニー器の切削仕上げおよびはんだ付けで、平成16年度には葛飾区優良技能士となった。

 アンチモニー製品は、メッキ・塗装で完成する。その直前で、地金での製品を完成させる≪まとめ作業≫に、60数年間携わっている。
「アンチモニーが、国の伝統工芸品に認定されましたね、すごいことですね、長年の頑張りが遂に認められましたね」
 筆者の祝辞に、電話の向うの山中さんは、多くを語らず、
「ずいぶん速く、電話をくれましたね。そうですね、夢みたいな感じです」
 とても朗らかに応えてくれた。


 アンチモニーとは、『アンチモン』という金属の英語読みであり、日本では一般的にアンチモン(10~30%)と鉛(85~88%)、錫(すず)(2%)の合金のことをいう。
 この合金を溶かして鋳型加工したものを、アンチモニー製品と呼んでいる。

 現在でも、半数近くの会社が葛飾区にあり、一大集積地となっている。山中さんはその中心的な人物である。


 2015年、経済産業省が伝統的工芸品と指定した「東京アンチモニー」は、鉛、アンチモニー、錫の合金であるアンチモニーを原料として、鋳物製品である。繊細な模様や彫刻を活かした装飾品である。

「東京アンチモニー工芸品」わが国の伝統的工芸品に(上)=郡山利行

 経済産業省は、2015(平成27)年6月18日に、「仙台箪笥」「江戸鼈甲」および「東京アンチモニー工芸品」を伝統的工芸品として指定した。

 アンチモニー産業は、世界で唯一、明治初年度から東京だけで生まれて発展してきた、世界に誇る東京の地場産業である。
 アンチモニー製品は、昭和40年代前半までは輸出品の花形だった。


 アンチモニー製品輸出アンチモニー工業協同組合(現・東京アンチモニー工芸協同組合):50周年記念誌より (平成11年7月刊)


 明治初期の頃には、問屋は日本橋に、工場は台東区にあった。やがて、大正・昭和時代に入ると、墨田区から葛飾区へと工場が広がってきた。


 アンチモニー製品葛飾アンチモニー会:葛飾町工場物語 第4回(平成23年1月刊)

 アンチモニー製品は、重量感と鋳肌の滑らかさ、微細な模様なども正確に表現できることなどが特徴である。
 かつては小さな胸像や灰皿、ライター、宝石箱やオルゴールなどの製品は、至るところで見ることができた。


 ガラスやプラスチックなど、代替え品となる素材が多くなった現在でも、優勝カップやトロフィー、記念メダルや宝石箱、置物などアンチモニーが製造されている。

『せっぺとべ』400年続くお田植え祭り2015 (下)=郡山利行


お祭り全体で、踊りに参加するすべての自治会の中で、

笹踊りを踊るのは、唯一、諏訪自治会だけである。


勇壮な動きはなく、竹の笹音がカサカサと聞こえるだけの、

不思議な威厳を発する。

観客(筆者の親類)は、踊りの自治会の人から、『しべ』をもらう。

しべとは、幅3cm、長さ85cmのクロマツの角材をカンナで薄くすいた物で、先端15cmほど食紅で染められている。


人々はこれを、家の玄関や床の間に飾る。魔よけのおまじないである。



せっぺとべを眺める少年達。

大人になれば、彼らも白装束を着るようになるのだろうか。

踊りの少年少女たちは、お田植え祭りの前夜祭から、本番の日の夕方まで、神社から神田での奉納踊りと、町内各地と自分達の自治会地区の要望施設や家庭でのお祝い踊りとで、おそらく二日間で20回は超えて踊ったと聞いた。 自宅では、踊りのお礼(花代)のほかには、子供たちへのペットボトル飲料の差し入れしかできなかった。

 400年も続いているこのお祭り、改めてその歴史に興味が湧いた。

『せっぺとべ』400年続くお田植え祭り2015 (上)= 郡山利行

 昨年2014年6月、穂高健一ワールドに、筆者の故郷である鹿児島県日置市日吉町の、お田植え祭り『せっぺとべ』(「精一杯跳べ!」の鹿児島弁)を紹介した。神社の境内から神田(しんでん)での様子だった。

 今年2015年は、6月7日に行われた。筆者はこの故郷に家を新築したので、自宅玄関前でお祝いの踊りをしてもらったので、その模様を紹介する。


 祭りの踊りに参加した八つの自治会のうち、縁があって四つの自治会に、踊りをお願いした。

 吉利(よしとし)南区、山田、日新の自治会は鎌踊りで、諏訪自治会は笹踊りだった。

 こころよく引き受けてくれた。


鎌踊りは、鎌と鉈(なた)を、武器と見立てた踊り。

昔は、元服前の少年達が技を競って、踊っていた。

勇壮だ、見ごたえあるね。

吉利南区自治会は、庭にミニミニ神田を設定して、せっぺとべを実演してくれた。

縁起がとてもいい、踊りですよ

熱気がすぎると、水をかけられる。

散水掛よりも、踊りたいな。


中学生のお姉さんが、頑張っている。

女子パワーを見てください。

鹿児島の女、強いイメージがあるよね。

江戸時代は将軍の正室にもなったし。

少年少女たちの踊りを、初めて珍しそうに、目の前で眺めている。

筆者の親類の子たち。

ぼくらも、大きくなったら、踊ろうね



自治会によっては、踊り子たちがとても少ない。

過疎なんていうなよ。人数じゃない、気力では負けないぞ。

いつも頑張っているんだ。

                      【つづく】

【心シリーズ】花と心 = 浦沢 誠

 現在、葛飾区からの委嘱を受け、「かつしか花いっぱいレポーター」としての取材活動をしています。なかでも「大地の会」や「花のまちづくり協議会」と「都立農産高等学校」の活動団体の花を愛するこころが、この会の活動の原動力になっています。

 そこで取材内容の一部を紹介することにしました。


大地(だいち)の会


種から育てたセル苗を植栽 し、植物の成長過程を肌で感 じ楽 しむ。またその花たちの管理方法も学び、地域住民の憩いの場所づくりを心掛けています。
  会を立ち上げてから10年がたちました。
  「今年は区から助成金をいただき、千葉大学園芸学部準教授の渡辺 均先生を講師に招く、勉強会 も考えています。」と熱 く語る代表者 の中尾栄子さん。
  植え付け場所は、この砂原第二公園のほかに、せせらぎ公園と西亀有小学校(ワクチャレ花壇)があります。

 砂原第二公園にて代表の 中尾栄子さん  


平成27年度の役割分担表


花のまちづくり協議会


  都立農産高等学校で種から発芽させた苗を、上千葉公園内にある温室に保管し、鉢上げの時期をまっている「マリーゴルド」と「サルビア」。
  今年は4月18日(土)と25日(土)の両日を鉢上げの日とし、会員や一般
の方に参加を呼び掛けた。
  会員約70人のうち、それぞれ約20人の参加を得て実施された。
会長歴10年、その前は副会長をしていた。「現在は独身(83歳)で、花を愛
する地域 の方をまとめています。」と語る伊藤さん。

         温室で発芽した苗を見つめる 伊藤勝美会長


        4月18日の鉢上げに参加した会員


都立農産高等学校


                    正門わきの花壇

  東京都西亀有1-28-1所在。創立は1948年(昭和23年)。 全日制課程園芸デザイン科1学年2学級、食品科1学年2学級。定時制課程農産科1学年1学級。

  地理的にはJR常磐線亀有駅下車南口より徒歩15分。京成線お花茶屋駅北口下車徒歩20分のところ。

  花のまちづくり協議会と協働で曳舟親水公園、お花茶屋駅前、亀有駅南口「コチ亀」前などに植栽を毎年、授業の一環で行っています。
 「地域の方たちと一緒に活動することが大切。」と語る並川直人校長先生。 


花のまちづくり協議会総会会場で、来賓として挨拶をする並川学校長。


あとがき
 また形は違うが、花壇づくりをみんなで楽しんで行う。そこを通る人、そこで遊ぶ人、様々な人が花を仲介することで、人と人とのつながりが生まれる。
  公園や歩道脇にある花は、みんなのものです。大事にしましょう。

【心シリーズ】 高僧たちのこころ = 浦沢 誠

 熊野観心十界曼荼羅の図
 江戸時代18世紀の絵画

中央よりやや上の中心部に「心」の文字が描かれている。
  毎年8月15日と16日の両日に、津市にある西念寺(天台宗真盛宗)の本堂に掛けられ、住職考案の、滋味あふれる絵解きが行われている。


 「こころ」をテーマにしたとき、頭に浮かだことがありました。
  それは、今から約50年前の1965年(昭和40年)に、東京都台東区立今戸中学校の修学旅行で、奈良県の薬師寺に修学旅行へ出掛けた時のことでした。
  当時そのお寺では、おもしろおかしく講話をしていた僧侶の高田好胤(こういん)さんがいました。そののち暫くして「心」という書物を出版したのを思い出しました。

僧侶 高田好胤(こういん)

1924年(大正13年)3月30日に誕生し、1998年(平成10年)6月22日に74歳で他界しました。薬師寺元管主。法相宗大本山管長。
  好胤は、わかりやすい法話により「話の面白いお坊さん」、「究極の語りのエンターテナー」とも呼ばれた。
そこから百万巻写経勧進の道を切り開いて金堂、西塔など薬師寺の伽藍の復興に道筋をつけるなど薬師寺の再生に生涯をささげた。

著書
・「心ーいかに生きたらいいか」
  :1969年徳間書店

・「心をむすぶ」
  :1973年毎日新聞社

・心第2集(曲がり角に立つ日本人)
  :1976年徳間書店
            ほか。

      薬師寺の東塔(重要文化財指定)1965年撮影


 人間の記憶、それは一生涯のなかでどれくらい保持できるのだろうか。今回のテーマ「こころ」では半世紀(50年)まえのことが脳裏に閃いた。
 高僧高田好胤は、修学旅行生に副管長の職で、面白おかしく講話をしてくれた。その中の一人が現在でも記憶にとどめていた。

 1975年(昭和40年)に、修学旅行で奈良県の薬師寺に訪れた台東区立今戸中学3年B組の学生団体。右側の先生は、吉原校長先生。左側は浦田先生。

【花シリーズ】住む人の心に よりそって*苦心 区心 = 松 栄子

前書
 春になると、記者の自宅近くの公園や通りには、桜などの花が咲き、「こんなに花木が多いのか」と気づかされる。葛飾区内の桜等の綺麗な時、場所、そこでの区民の気遣いなどをまとめてみようと今回取り上げた。

   古隅田川緑道 

*緑被率(対象となる地域で、樹林・草地、農地、公園などの緑で覆われる土地の面積割合を表す指標の一つ)が、葛飾区では、1998年に14,5%になり以後これを維持することを目標にしてきた。2008年には、16,3%になった。参考に1980年は、21,0%。
(平成27年度環境用副読本中学生用から)


亀有やわらぎの道と立石さくら通り     


立石さくら通り

葛飾区役所横の桜並木は、区制150周年記念事業の一環で区内第一号の「コミュニテイ道路」として1982~90年にかけて整備された。650m伸びる両側には約125本の染井吉野がある。


かわばた、東四つ木コミュニテイ通り

 東立石から東四つ木にかけての約1.3㎞の道である。立石寄りには、さとざくらが植えられている。ピンクの濃い色と白に近い色と二色の花がのがうれしい。
道路沿いの和菓子屋栄屋のご主人に聞くと、
「昭和58年に区の事業として植えた。12日(日)にお祭りがある。2万人が来ると言われている。私たちも寄付をするけれど、区からも援助があるんじゃないかしら?」  3
と、敬意と現況を話してくれた。

さくらみちと小岩用水緑道

さくらみちは、柴又1丁目1番先から北小岩8丁目4番先迄で約1,1㎞の旧佐倉街道である。要所に説明用の石碑が立っている。
 

小岩用水緑道は、かつての小岩用水を埋め立て広い道路にした道で、はなみずきが植えられている。この沿道に住む大井さん(60代女性)に聞くと、
「前(平成4年から工事始まる)は、用水のわきに狭い歩道があるだけだったの。埋め立ててきれいになったの。赤と白のはなみずきが、交互に並んできれいよ。今は、いいけどあとがねえ(笑う)」と話してくれた。


きね川さくら通り



きね川薬師前から中川土手まで桜並木になっている。平和橋の近くの並木には、石碑があり「2000年記念 平和橋桜堤 寄贈染井吉野23本平和橋自治会 2000年2月吉日」と書かれてあった。葛飾区道路保修課の人の話では、現在は自治会の人も高齢になって 区で管理しているという。

               
古隅田川緑道(ふるすみだがわ)

葛飾区と足立区の境界線になっている古隅田川が、小菅3丁目あたりで緑道公園になっている。平成5年から整備差れているので 桜の木もだいぶ成長している。約2,5㎞の道である。

道路保修課(新宿に事務所有) 吉田さんの話

 4月15日に道路保修課に連絡がついて話を聞くことが出来た。
・区全体で約2万本の樹木がある。その約2割がさくらである。水元の桜堤が650本で一番多い。
・道路幅の広い所や水路を埋め立てて緑道にするとき、地元の人の希望を聞いている。色々植えているが染井吉野が多い。
・落ち葉などの始末は、地元の人の協力があり、ありがたい。集中して掃除をしたり、剪定したりの作業をするが地元の協力が欠かせない。住民の高齢化もあって、柴又街道の銀杏は短く切ってある。

子どもの自転車競技会と安全教育=東京・葛飾

 葛飾区内は自転車による交通事故がとくに多い。2014年の交通事故の内、44.4%は自転車が関与している。


 警視庁葛飾警察署では、子供の自転車安全教育を目的とした、『セーフティ葛飾自転車競技会』が、5月17(日)朝9時から、平和橋教習所で行った。5月11日~同月20日まで「春の全国交通安全運動」の一環である。

 開会式の冒頭のあいさつで、同署交通課の阪下敏規課長代理は、
「葛飾区内は、自転車の通行量が多く、路地の出会いがしら事故が多発しています。自転車が関連した死亡事故の場合、8割が自転車側に違反があります。この大会を通して、交通マナーとルールを身につけてください」
 と、競技会による安全意識向上の趣旨について述べた。

 同教習所の佐藤光治所長が、「二人乗り自転車事故は、後の方が死ぬケースが多いのです。正しい自転車の乗り方を学びましょう」と前置きし、競技方法と採点について説明を行った。
 9時10分から学科テストが行われた。そして、「自転車競技」が開始された。参加者は約30人である。

 種目はS字、スクローム、30センチ幅の平均台、一度停止の確認、駐車する車両の側面の通過である。

 学科テストと競技大会の総合点から、「高学年の部」の優勝は宮内陽菜(はるな)さん、準優勝は渡辺優奈さん、ともに女子だった。

 競技大会が終了した後、「かつしかPPクラブ」は阪下課長代理と佐藤所長にインタビューを行った。

「自転車の危険な乗り方が目立ちます。法令改正で、本年6月1日より、自転車でも信号無視などの危険行為をして、3年以内に2回以上摘発されれば、講習会が義務付けられました。(5700円)。飲酒運転も禁止です」と阪下課長代理から14類型の危険行為について説明があった。

「赤信号で子どもが止まっているのに、親が渡ってしまう。安全教育は親の意識改革も必要です」と佐藤所長は強調された。

 同日11時からは「一日開放」が開催された。パトカー、白バイの展示および撮影会などが行われた。

 子どもたちはバスの運転手になったり、パトカーに乗せてもらったり、白バイにまたがったり、同署員の指導の下で、楽しい時間を過ごしながら、安全教育を学んでいた。

 同会場では、東京消防庁・本田消防署による、はしご車の体験も同時に行われた。

【心シリーズ】エコな・こころ『電気自動車の現状と課題=隅田 昭

 葛飾区は話題のエコシステムにおいて、全国の数ある自治体と比較しても、随一と言えるほど、手厚い助成制度を設定している。

  利用が多いのは太陽電池やエネファームである。最近は記者も区内で自転車に乗った時や、レンタカーを走らせる途中で、日産リーフなどの電気自動車を見かける機会が多くなったと実感している。

 
 エコに対する市民の意識が高まっている証しで、特に葛飾区民は「エコな・こころ」を持つことができる、恵まれた環境にあると言えよう。

 ハイブリッド車が認知され、トヨタ自動車は水素燃料電池車『MIRAI(ミライ)』を発売するなど、ここ数年で大きな進化をしている。

 急速充電設備などのインフラが充実すれば、電気自動車はハイブリッド車と肩を並べる存在となり、私たちの暮らしをより豊かにするだろう。ただ、今はまだ近くて遠い存在である。

 その電気自動車を取材して、現状と課題を考えつつ、私たち葛飾区民の日常が今後どのように変わっていくのか、その青写真を頭に想像しながら、レポートを進めていきたい。

  ガソリン自動車の大先輩

 電気自動車は走行中に排気ガスを出さず、静かで経済性に優れ、乗り心地も柔らかいなど、良いことずくめである。
 その電気自動車は資料などを調べるうち、意外にも私たちが普段生活する上で欠かせない、ガソリン自動車より長い歴史を持つ、モータリゼーションの大先輩だった事実が判明した。
 ちなみに、現在のガソリン自動車を歴史的に確立させた人物は、1886年に原型を開発した、ダイムラーやベンツだと言われている。


      (世界最古と思われる電気自動車の貴重な写真)

 電気自動車はそれより50年近くも前に、スコットランドのアンダーソンが電池とモーターを駆動した簡易型を製作している。その後、ガソリン車との開発競争が激化、1940年以降はオランダやアメリカで進化する。
 不運にも二度の世界大戦が始まり、電気自動車は脆弱で壊れやすく、部品も未熟だった為、軍用として丈夫なガソリン自動車が普及したと考えられる。

 ちなみに日本でも大正天皇のご成婚を祝って、アメリカの在留邦人が電気自動車を献上するも、上陸した直後の試運転で道路を外れて大破してしまい、長いあいだ東宮御所に放置されていたそうだ。

  日産でリーフざんまい

 電気自動車はテスラ・モーターズを始め、欧米の開発が盛んで、日本では日産がリーフ、三菱がi-MiEV(アイ・ミーブ)を市販している。  
 記者は『日産プリンス東京葛飾店』に、取材を申し込んだ。

 井口信之店長(写真左)と、営業推進部EV推進室の工藤正孝EVアドバイザー(写真右)から話を伺うことができた。

「リーフは、燃料代がガソリン車の4分の1から5分の1程度です。購入時には国から27万円、葛飾区は25%の補助金があります。自動車税は5年間無料で、経済性に優れています」と井口店長は胸を張る。

 車庫に充電プラグを設置する場合は、日産東京地区3販社で無料キャンペーンを実施している。月額3000円(税別)を払えば、通常500円から1500円程度かかる急速充電、地図更新やメンテナンンスも無料となる。


 家庭用の場合は、200Vの深夜時間帯がお奨めだと話す。8時間かけ100%充電し、約160km走行できる。

(エアコンやオーディオを使うので、距離は実質的には80%程度)
 急速充電は約30分で、80%から85%の充電が可能です、と工藤さんは語る。

 安全運転に心がけ、充電中は読書でもして、穏やかに過ごそう。


   未来のドライブを体感

 日産プリンスではスカイラインなど、数種類のハイブリッド車をラインナップするも、本命の電気自動車で推していく予定だ。
 工藤EVアドバイザーからひと通りの操作説明をしていただいた。その上で、少々早い五月晴れの水戸街道で、10分間ほど試乗体験をさせてもらった。

 まず驚いたのは、運転席に着座したときのコックピット回りである。従来のガソリン車にあるアナログ針やスイッチ類などは、ほとんど見当たらない。
 主電源をスタートさせても、動作音はまったく耳に届かず、周囲を走る自転車や道行く人の声が、かえって大きく聞こえたのは驚いた。

「走行音があまりに静かなので、歩行者や自転車が気付かない恐れがあります。その対策のために、時速30kmまではエンジンの擬音を外側に流す、そうした仕掛けになっています」と工藤さんは話された。

 公道に出てハンドルを切ると、軽くスムーズで力を持て余すほどだ。非力な女性や高齢者でも、安心してドライブが楽しめそうだ。
 指一本でエコモードを外せば加速も鋭く、乗り心地は大型リムジンより上質である。魔法のじゅうたんに乗るような、爽快な気分が味わえた。


   区役所もエコ・ハートに協力

 葛飾区内では、日産自動車系列店で5ヶ所、三菱自動車で1ヶ所、急速充電設備を設置している。
 公共施設では、かつしかテクノプラザと区役所本庁、新小岩東北広場の3ヶ所で、一部のファミリーマートでも設置している。

 同区役所環境課の神 千尋(じん ちひろ)さんから助成金の内容を聞いた。
 同区役所環境課の神 千尋(じん ちひろ)さんから助成金の内容を聞いた。「経済産業省から補助金が支給され、急速充電設備を3年前から導入しています。設備は24時間フル稼働していますから、皆さんには活用してほしい です。

 上記の他、区内ではライフの2店舗などにも設置しています。随時、増えていく予定です。今後、少なくとも5年間は、無料充電の体制を維持いたし ます。

 広報誌やホームページでも、助成金の話題を展開していますし、新車購入の際は電気自動車も検討していただき、ぜひとも導入してもらいたいです ね」
 と語っていた。

・ すぐやる課の犬塚洋幸係長には、職場で活用しているi-MiEV(アイ・ミーブ)の現状を語ってもらった。
 「区民の皆さんが困った事に対し、迅速に対応する必要があります。電気自動車はパワーがあり、乗り心地も抜群で、重宝しています。ただ、20分間の充電で、2時間しか乗れないのが、唯一の不満です」


あとがき

 今回の取材にあたり、電気自動車は記者の予想より優れた乗り物だと実感した。購入すれば、毎日充実したカーライフが過ごせるだろう。

 取材を進めているうちに、気になる課題もいくつか見つかった。
 まず、ガソリン車と比較して、導入時のコストが高いことだ。国の補助金と併用して、葛飾区が相当額の助成をしているが、本体価格が266~350万円になる。国産の高級サルーンを購入する場合と、同等の手持ち資金が必要となる。

 航続距離が130km程度で、エコな運転を心がけても、葛飾区内から、東は茨城県日立市、西は静岡県三島市ほどの片道しか行けない。
 そして最大の難点はやはり、充電スタンドが少ないことに尽きる。

 現状ではディーラーや事業者、葛飾区役所などの行政と積極的な連携ができていないと思われる。
 それぞれのイベントで車両をアピールして試乗させ、利用のアイデアをコンテストで表彰したり、ブログやSNSで公開したりすることを条件に、格安で短時間レンタルするなどの工夫をしてはどうだろうか。

 ハード面はとても素晴らしい。ソフト面を充実させて利用者側のハートをつかめば、エコな日常生活が近い将来きっと実現するだろう。

  未来がいま、ここにある 

   究極のエコ・ハートにYES!

(かつしかエコノプラザで、充電中の一般車両に許可を取って撮影)

 参考サイト:スマートジャーナル・AUTOCAR・日産自動車ほか

                 (取材日:2015年4月24日)