A035-歴史の旅・真実とロマンをもとめて

クリミヤ戦争 = 黒船来航 =  北方四島 =  ウクライナ侵攻 ②

 日本人の特徴は、「過ぎたことは水にながす」である。これは木の文化(燃れば、きれいさっぱりなくなる)だからであろう。
 かたや、西洋の特徴は長い歴史の上に現在がある、という考え方である。これは風化しない石の文化である。もめ事も風化しない、恨みもいつまでも忘れない。だから、同質の戦争がくり返しがおこなわれる。
 
 欧州と日本の違い。それは木の文化と意志の文化の違いである。

 西洋の戦争でいえば、「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれるバルカン半島、紀元前からの中近東の不安定な対立がつづく宗教戦争であったり、国境・領有権の争いであったり、十字軍からの未解決問題が、いまだに歴史的に解決できない争いとなり、なにかの拍子に火を噴く、これが周辺国も巻き込み、連鎖して拡大して大戦争にまでおよぶ。

  日本人的に一口いえば、いつまでも西洋の戦争は執念深いのである。

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 執念深い西洋は、日本と戦争をどう見ているのだろうか。
『ヨーロッパが戦争のさなかに、アジアから目を離せば、日本は抜け駆けで領土を奪う国家である。油断もスキもない」
 これがほぼ共通認識だろう。

 第一次世界大戦のさなか、日英同盟を口実にして、日本軍はドイツ領・青島に奇襲攻撃をかけた。そして山東半島のドイツの利権と南太平洋の島々を奪い取った。目が離せない。青島攻撃.jpg
青島の攻撃 大正3(1914)年10月31日 ~ 11月7日

 イギリスは欧米諸国から反発されて、ワシントン条約で「日英同盟」の破棄になった。裏を返せば、欧米諸国からイギリスは圧力をかけられ、明治時代に結んだ条約を破棄させられたのだ。

 第二次大戦でも、
 ナチスドイツがポーランドに侵攻した、すると、日独伊軍事同盟にもとづいて、日本は突如として仏領のインドネシアに侵攻し、石油資源などを奪い取った。さらに捕虜の英仏兵を虐待した。

 これが戦争犯罪だとみなされた日本軍将校は、太平洋戦争の終戦のあと、B級C級犯罪者として裁かれたのである。

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 木の文化の日本は、太平洋戦争から77年も経っている。日本人のほとんどは過去の出来事だと思っている。
 西洋は石の文化である。17世紀以降の歴史は近現在なのだ。だから100年、200年はまだ自分たちの歴史のなかにあるのだ。

  このたび(2022年2月)のロシアがウクライナにに軍事侵攻をおこなった。ロシアの動きをみていると、『ヨーロッパが戦争に突入すると、アジアから目が離れる。日本は抜け駆けの戦争を仕掛けてくる』という固定観念が色濃く出ている。
 ウクライナ侵攻の直後から、極東ロシアによく現れている。ロシア海軍が北方四島、日本海での軍事演習を行っている。軍事演習とは軍事的に日本を威嚇しているのだ。

 かれらはきっと日本の自衛隊が北方四島に上陸・侵攻し、日米安保条約の下に米軍の支援をもとめて居座り続けるだろう、とロシアは本気で真剣に考えているのだろう。
 歴史をみれば、日本のシベリア出兵もある。
シベリア出兵.jpg
 大正7(1918)年には、ロシア革命に干渉するため、日本はシベリアに軍隊を送った。米・英・仏が撤兵したのちも、日本は駐留をつづけた。国内外の非難により1922年に撤兵している。
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 ロシアがウクライナに簡単に勝利できず、苦戦しているならば、極東の陸海軍をウクライナに回せば、それなりに有利な展開はできるだろうに。
 日本人の大半は戦争解決など望んでいないし、この機会に北方領土を攻めよ、という国論などない。ところが、
「日本はシベリア、千島列島が手薄になれば、何をしでかすかわからない」
 ロシアの警戒心がゆるまないのだ。
 
 日本政府は「北方四島はわが国の固有領土だ」と主張する。固有領土。このことばは実に危険な用語だ。長い歴史のなかで、いつから固有領土なのか。それに応えられる日本人は少ない。政府の受け売りだ。
 領土問題は微妙なだけに、客観的に公平に吟味しておかないと、双方の交渉のテーブルは常にかみ合わず、挙句の果てには「武力で盗られた領土は武力で解決する」という、剛腕なナショナリストの為政者が出かねない。
 ウクライナ侵攻のあと、ロシアが平和条約交渉の破棄を伝えてきた。これを契機に、日本側はしっかりした歴史認識をもつ必要がある。
 次回はそれについて深堀をしてみたいい。
                      『つづく』
 

                  『つづく』   

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