歴史の旅・真実とロマンをもとめて

明治政府は軍事クーデターによる軍事政権である:正しい歴史認識

 各地で戊辰戦争の取材をしながら、おなじ疑問に突きあたる。なぜ大政奉還の後に、戊申戦争が行われたのか、と問うても、多くが満足に答えられない。それは学生時代に教科書で教わっていないからだ。

 いまや政治家の大半が戦後生まれになった。その政治家すらも、明治政府が軍事クーデターで生れた政権だという、正しい認識を持ちえていない。だから、政治的な弊害がすこしずつ出はじめてきた。

 幕末の徳川政権は統治能力が低下し、政治的継続が不可能と判断し、みずから政権を皇室に返した。それが1867年の大政奉還である。世界史でもまれにみる、平和的な政権移譲だった。ほんらいは日本の誇らしい偉業だった。

 大政奉還から、わずか2か月後には、西洋式軍事訓練を受けた、下級武士階級層が軍事クーデターを起こしたのだ。それが鳥羽伏見の戦いと戊辰戦争だった。成功裏に進み、明治軍事政権ができたのだ。
 

 近年、アジア・中近東で軍事政権が数多く生まれたが、決まって民主的な国家だとカムフラージュする。
 明治政府もたぶんに漏れずだった。薩長土肥の官僚(クーデターの兵士)らによる、初期の教科書作りで、軍事政権だと明記しなかったのだ。
 明治政府は文明開化、富国強兵を推し進める近代国家と称した。それがいまなお引き継がれているのだ。

 新政権を作った志士たちの主義・主張は、「尊王攘夷」だった。攘夷とは外国と通商をしないで鎖国状態を続けることだ。
 江戸幕府のほうは逆に鎖国をやめて開国し、人材を海外に派遣し、すでに外国文化を取り入れていた。
 クーデター政権は、その政策を真似ただけなのだ、

 江戸幕府は260年間にわたり、世界一治安がよく、識字率も高く、海外とは一度も戦争をしなかった。素晴らしいことだった。

 明治政府=軍事政権は、大正時代、昭和20年まで、政権を維持してきた。この間には、軍事力の拡大政策を背景にした日清戦争、日露戦争、日中戦争、第一次世界大戦、シベリア出兵、満州事変、第二次世界大戦など、10~20年ごとに侵略戦争を行ってきた。
 これは歴史的な事実である。

 軍事政権だから、陸軍大臣、海軍大臣がおもに首相になってきた。選挙権はある程度の金持ちしか与えられない。女性の参政権も満足なものではなかった。他方では、軍事政権特有の思想弾圧と思想統制をおこなった。

 現代の教科書はここらを曖昧にする。だから、日本史を教わる生徒らは、「大政奉還」と「戊辰戦争」の境目がわからないのだ。
 教師すら、尊王攘夷がなぜ文明開化なのか、と訳が分からず教えている。一般的に、日本史は縄文・弥生はやたら詳しく、明治時代などはあいまいに人名と年号の記憶などで終えてしまう。

 近代史ほど、現代に直結し重要なのに、それらが実にないがしろにされているのだ。


 日本人はわりに歴史小説、歴史ドラマが好きだ。
 司馬遼太郎の歴史小説を例にとれば、鳥羽・伏見で軍事クーデターを起こした西郷隆盛は英雄である。日清戦争、日露戦争で戦った軍人も英雄視して描いている。司馬は軍人を描きながらも、明治は軍事政権だと表記しない。幕末以降は、司馬史観が教科書よりも勝り、独り歩きしている面がある。


 教育は100年の計だ。いまからでも歴史の事実を学校で教えよう。戊辰戦争は軍事クーデターであり、その政権は昭和20年まで続いた軍事国家であり、民主国家ではなかった、と。そうすれば、教師もわかりやすく、教えやすいだろう。

 事実に基づいた歴史教科書で育った生徒らが、やがて成長し、政治家になっていく。そして、国内外の政策を推し進める。明治時代のような軍事力の政治体制、軍事憲法など作ってはダメだ、と理解したうえで政治を行うだろう。

 国が栄えるか、衰えるか。正しい歴史観を持った、能力の優れた人材をいかにつくれるかにある。その視点から、学校の歴史教育の重要性を考えよう。

 

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