A038-元気100教室 エッセイ・オピニオン

ダイエット 石川通敬

 二か月ほど前のことである。長年にわたり健康診断をお願いしているY医師から突然、「脂肪肝の疑いがある。精密に検査し、一ヶ月様子を見て判断しましょう」と言われ驚いた。

その上いつも温厚な先生が、いつになく厳しく、
「肝脂肪は、油断してはいけない。いつ肝硬変に移行するかわからない。多くの人が、これで命を落としています。あなたも酒を飲むなら、覚悟を決めて飲んだ方がよい」
  と付け加えられたのだ。


 この警告に慌てた私は、その晩岡山の友人に早速電話した。
 彼は高校時代のクラスメートで、中学時代から親しくしている。岡山大学の医学部で肝臓を専攻し、最後は岡山済生会総合病院の院長も務めたプロだ。
 私の話を聞くと、彼は即座に、
「それは軽度の脂肪肝だね。体重を減らし、運動をすれば大丈夫」
 という。

 ホッとしたが、折角の機会だから、とにかくダイエットをしようと、決めた。
 ダイエットは、私の長年の課題で、記憶しているだけで四十年近い歴史がある。色々試みたが、こうすれば確実に計画通り痩せられるという方法は、見つからないままだ。

 こんな体験もあり、今回もどうしたものかと考えていた矢先、近くの本屋で、「内臓脂肪がストン!と落ちる食事術」江部康二著(ダイヤモンド社)という本が目に入り直ぐ入手した。

 数か月前のテレビ放映がきっかけとなり、内臓脂肪・炭水化物をテーマにした本がブームで、ベストセラー本が続出中らしい。
 私が買った本もつい最近ある放送局が取り上げ、著者江部先生が出演され話題になった、と本屋の棚に張り紙が出ていた。


 過去の失敗の歴史もあり、半信半疑だったが、同書が書いている通りの食事をしたところ、驚いたことに一週間ちょっとで3㌔体重が減り、一月で体重の⒑%減量に成功したのだ。
 方法はごくシンプル。要は「炭水化物に代表される糖質のものを食べない」ということだ。

 私の場合は、米の飯、麺類、パンを食事メニューから除外すればよく、一方肉、魚、野菜、乳製品はたらふく食べてよいといううれしい術だ。実行すると内臓脂肪が劇的に落ちるという、アメリカで認知されつつある新セオリーだそうだ。

 著書のタイトル通り「内臓脂肪の数字はストン」と言うほどには落ちなかったが、タニタの体重計で表示される関連数値は、全て順調に減っていった。

 これに並行して、毎日飲んでいた大好きな酒を、週一日程度つき合いで飲むだけにして、自宅での晩酌は一切やめた。その結果一月後の血液検査では、努力の甲斐があり、全数値が正常値に戻った。エコー診断も問題にされずに済んだ。


 今回の出来事は、いろいろなことを気付かせてくれた。特に食事がいかに人間の命に大きな影響を与えているかを再認識させられたのは重要だ。
 書店には山ほど食事による病の克服本が並んでいる。しかしこれまで一つとして試してみようという気になったものはなかった。それはあまりにも、様々な説が述べられ、しかも短時間に結果が出ると主張するものがなかったからかもしれない。

 多くの本の中には、真に役立つ情報があるはずで、残念だが、多くの人はその恩恵浴せていないハズ。何か良い工夫がないかと思った次第。


 もう一つ、再認識したのが、よい医者とのめぐり逢いの大切さだ。人の命も医者次第とよく言われるが、今回もY先生との長年のご縁のありがたさは言うまでもない。
 一方、年に一度年賀状を交わす程度でも、中学、高校以来の友人のようなケースも大切だ。持つべきものは良き友人だと痛感。


 そして、何よりも、大いに感謝しているのが、前出の書のカバー裏に掲載されている「食品糖質量」表と妻の協力だ。
 その表には500以上の食材につき虫眼鏡で見ないと読めない程小さい字で糖質とタンパク質量がびっしり印刷されている。
 食事の都度私は、その表を見て食材を一つ、一つチェックし、糖質ゼロを目指した。これに対し妻が、毎食全面的に協力してくれたのだ。


「私がどんなに苦労しているかわかっているの」
 とぶつぶつ言うが、糖質量を最小にしながらたんぱく質と野菜が豊富な、おいしくて、ボリュームがある献立を考えてくれているのがうれしい。

 今、妻に話しているのは、目標値に到達したら
 「ソバ屋に二人で行こう」である。


イラスト:Googleイラスト・フリーより

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