A038-元気100教室 エッセイ・オピニオン

薬膳 =  筒井 隆一

 現役の企業人として業務に追われていた時期に、
「このまま仕事人間で人生を終わるのは、もったいない。卒業した後は何をし
たらよいか」
 を常に考えていた。

 その時思い立って始めたものの一つに、料理がある。料理教室に通いはじめ、それが何と20年間続いている。

 今までに、家庭料理、洋風、和風、中華、野菜、肉、魚、おもてなし、などのコ ースを、年に一つずつこなし、一通りの料理は体験した。月に一度の教室通いは、食文化を見直し、年間の生活リズム作りには、最適だった。

 20年はひとつの節目と考え、通い続けた料理教室のけじめに、あまり縁のなかった薬膳料理に挑戦してみよう、と思いついた。

 今までは、親しい友人たちが我が家に集まった時、復習を兼ねて、習った料理を披露していた。「美味しい、美味しい」とモリモリ食べてくれた仲間も、歳と共に、食が細くなってきた。ふるまう料理も、身体によいものがよかろう、との思いから『からだを整えるバランスごはん』というコースを選んでみた。健康、長寿のためには、味覚や食感より、何をどう食べるかが大切だ、と考えたからだ。

 このコースでは、薬膳の知恵を取り入れて、身体によい料理が習える、とうたっている。 月ごとに、「ストレスを和らげる」「質のよい眠り」「夏バテ防止」「血行改善」などのテーマが挙っている。このようなテーマに沿って、毎日の食事を少しでも工夫して体調を整え、元気に若々しく過ごせれば、言うことはない。

 転勤族の長男が、2年半ほど前から沖縄に勤務している。今回4度目の沖縄行きを、家内と二人で計画した。
 長男夫婦は、私たちの訪問にそなえ、毎回現地の観光コース、飲み会の場所などを調べ上げ、計画的、効率的に案内してくれる。

 今回は、素材から調理に至るまでこだわりがあり、身体が喜ぶというヘルシーバイキングに、案内してくれた。私が料理教室で選んだ、薬膳のコースにも共通点がありそうなので、興味を持って店に向かった。

 ハーブカフェ「ウコンサロン」は、空港から車で4~50分、那覇市の南東、南城市に位置し、沖縄最大の薬草農園に付属するレストランだ。4500坪の面積を有する農園で採れた、新鮮な無農薬野菜と、ハーブをたっぷり使用したランチバイキングが人気の店で、特に女性客が多い。

 メニューは、ハーブ野菜のしゃぶしゃぶ、ハーブ酒で豚足を煮込んだテビチ(代表的な沖縄料理)、ウコンスパイスを使ったカレーなど、野菜をふんだんに使った料理が、ところ狭ましと並んでいる。三十八種のブレンドティーを中心にしたハーブティー、デザートも、飲み放題、食べ放題だ。
 時間制限はなく、大人一人1100円とは、ずいぶん割安に感じる。

 一通り食べ終えて、隣接する庭園に出た。爽やかな香りの漂うハーブ植物園を、のんびり歩く。普段の食事に比べ、かなりの量を食べたのに、野菜主体のせいか満腹感はない。まだまだいけそうだ。散策後、再度バイキングに挑戦する客もいる、と聞いた。
「沖縄の食文化、香り、癒し空間」
 を目指し、長い準備期間を経てこの地にハーブカフェ「ウコンサロン」を20年ほど前に立ち上げた創業者に、感謝の気持ちが湧いてきた。

 幸い料理には、まだまだ興味がある。料理は、食材の組み合わせ、調理法、味付け、盛り付けなど、自分のセンスを活かせる幅が広い。老化防止にも最適だ。
 沖縄での体験と、料理教室で始まる薬膳コースを活かし、仲間に健康維持、体質改善を目的とした新しい料理を披露できる日も、間近いと思う。


イラスト:Googleイラスト・フリーより

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