ランナー

「走るぞ」。気合を入れたら、強い雨風だった。

 東京マラソンまで、残すところ2ヶ月を切っている。大会を視野に入れると、ロング走やスピードなどに練習不足がある。そこに焦りを覚えてしまう。

 急激な練習量アップは、からだに大きな負担を与える。故障の原因になりやすい。それが怖い。両膝と、左右の踵(かかと)が鬼門だ。過去には足を痛めて、階段の上り下りなど、一歩ずつ顔をしかめるほど激痛に襲われたことがある。そうなると、短期間には回復せず、東京マラソンの出場すら危ぶまれる。

 練習不足のまま大会当日を迎えたら、これも悲しい結果になる。
 1月30日と31日は、『走るぞ』と気合を入れた。取材など予定はいっさい入れなかった。ところが皮肉なもので、30日朝から、低気圧の通過で、東京は強い雨風となった。「何で、こんな日に雨なんだよ」と天を恨む。1日のなかで雲の切れ間がないか、と期待してみたが、虚しかった。

 他方で、これだけ強い風雨ならば、天気予報以上に低気圧の通り抜けは早そうだ、と想定した。
 31日の午前中も雨脚が強かったが、午後になると、想定通り、小雨になってきた。「走りはじめて身体が温まれば、多少の雨は問題ない」と、ジョギングの身支度をはじめた。膝の安全を保つために、シューズは底の厚いものを選ぶ。

 中川は葛飾を流れる一級河川だ。架かる奥戸橋と平和橋との両岸を走る。いつもの練習場で、信号機は1ヶ所もない。七曲といわれるところで、ほど良い蛇行がある。そのうえ、冬場には富士山が見える、ちょっとぜいたくなコースだ。
 
 1周すれば3.5キロ。6周すれば、21キロ(ハーフマラソン)の距離となる。

 舗装された路面には200メートルごとの距離盤が埋め込まれている。腕時計をすれば、1キロごとのタイムが気になるので、外してきた。ゆっくりしたスピードが維持できれば、距離は延ばせられる。小雨の中を走りはじめた。

 10キロで霧雨になってきた。夕暮れ後に21キロに達した。と同時に、雨があがった。「大会前に距離の不安をなくす」。その課題から、街路灯の光芒の下、さらに距離を延ばして、30キロまで走ってみた。

 スピード感は皆無だが、東京マラソンの42キロは走れる、完走できる、という手ごたえをつかんだ。気持ちの上の充実感が生まれた。

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