A025-カメラマン

途中下車の旅、真夏の京都で散策=観光外国人が多し

 

 中学の修学旅行は、奈良・京都だった。

「また、寺か」

 バスのなかで、私はウンザリしていた。そのつぶやきが、側にいた教師に、聞こえたらしい。

「おまえは、車内に残っておれ」

 夕方、旅館につくまで、ずっと車外には出られなかった。

 京都に来るたびに、それを思い出す。



  京都は、ことし(2016年)2月にきた。真冬だから、人出は少なかった。

  広島に行く途中で、真夏の京都に立ち寄ってみた。


  西洋人でも、女性はきものを着ると、3歩下がって歩くのかな。
 

  声をかけると、気安く、笑みを浮かべて撮影に応じてくれた。

  あまりにも、かしこまってしまい、写真としては歩く姿の方が良かった。


  中学の修学旅行で行けなかった寺のひとつが、銀閣寺だった。

  京都はよく立ち寄るが、これまで銀閣寺は意地でもこなかった。

  約半世紀たった今、やっと心の解禁だった。



 そうそう、龍安寺も、修学旅行で来なかったな。


 祇園から八坂神社あたりは、このところ着物、和服姿の女性が多い

 ことばを聞けば、7-8割が東洋人だ。

 きものは人気なのか。


 日傘にきもの姿は情感がある。

 きっと日本人だろうな。

 ふたりの雰囲気からして。

 

 私は旅先の買い物(みやげ物)はまったくしない。

 ちらっと横目でみるだけだ。


 店の外で、戯れているのは、アジア系のひとたちだ。

 存分に、楽しんでもらえばいい。

 「旅は恥のかき捨てだ」

 死語になったのかな、最近はきかない。

 絵馬はさすがに日本語だ。

 むかしホテルの聖書が一番盗まれなかったらしい。絵馬も盗まれないだろうな。
 
 無人の絵馬売り場は、見向きもされていないようだ。



  人気スポットは、坂の登りも、下りも、観光外国人だ。



 騒々しさから逃げ出したくて、法然院にいってみた。

 夏の花がしずかに咲いていた。


 夏休みに入ったので、大学生たちの姿が散見できる。

 青春って、いいな。

  このところの歴史小説は「二十歳の炎」、「燃える山脈」と、10代の男女を書いてきた。

 小説は主人公になりきって書く。だから、私の意識も、視線も、つねに同年代の若者に流れていく。

 いまは江戸時代、27歳で老中首座(現・内閣総理大臣)になった阿部正弘の、小説を手がけている。


「正弘の正室・謹子(きんこ)は、どのように描くかな」

 京の都を散策しながら、頭は江戸城下の武家屋敷にある。
 
 
 

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 最近はやたら多いのが、多国語の案内版だ。

 京都の神社仏閣には、それが少ないのに気付いた。古風な伝統を守っているのかな。

 入場券すら御札だ。


 車屋さんは日本人だ。明治時代初期は、爆発的な人気だった。

 祇園の伝統的な料亭で飲み食いした武士たちが、版籍奉還で失業し、車屋になった者が多かった。

 金閣寺は久しぶりだった。

 写真スポットで、大人気のようだ。

 清水寺は真夏の昼間でも観光客が多かった。

 夕方になれば、人がすくけれど……。

 もういいや、切り上げるか。

 「広島にいこう」

 紅葉の秋は混むから、きっと来ないだろうな。

 人物のいない写真でも、撮影しておくか。

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