A025-カメラマン

晩秋の成田は、紅葉の今年の最後の見どころ=写真で散策

 
 晩秋の秋の趣をカメラで拾う。手近なところで、カメラをもって紅葉の成田に出向いてみた。

 住まいのある葛飾立石から京成電車に乗れば、ジャスト1時間で京成成田駅につく。

 新勝寺の本堂前に飾られた菊には、色違いで『成田山』と文字が描かれていた。

 それを正面から撮るのも、詰まらないし、文面ですませた。


 新勝寺の裏手にある、「成田山公園」はいまが紅葉の盛りで、来園者(無料)のだれもが晩秋の静かな情景を楽しんでいた。
 

 紅葉は青空にも映えるし、池面にも華麗な美を映す。

 木漏れ日が、それらを浮かび上がらせる。

 カメラだけでなく、心の中にもしっかり刻み込んでおきたい。


 駅からつづく参道の商店街も、ここは負けじと造花で秋を彩る。

 商魂だよね。

 この商店街にはシャッター店舗などない。

 成田と言えば、江戸時代からの古街道で有名だ。沿道には川魚料理の老舗が多い。

 ウナギは高価になったが、店員が鮮度をアピールしながら、その身を捌(さば)いてみせる。

 ウナギの皮はヌルヌルし、見た目ほど簡単ではない。だから、店員は真剣なまなざしだ。
 



 2013年は外国人観光客が1000万人を超える。

 成田は、外国人にとっても、外せない魅力ある町だ。

 成田国際空港が近いだけに、なおさらだろう。 

 老舗の土産は食材を売っている。

 成田詣での年配者には人気だ。


 路傍で、ふいに道祖神を見つけた。

 近代化した成田だが、路傍には古き信仰の石像が残っている。

 古来は成田街道を行き交う、すべての旅人が手を合わせたはずだ。

 いまでは、ちらっと横目で見て通り過ぎる。

 若い女性に人気は甘処の店だ。

 どこの店に入ろうかしら。

 そんな店選びも、彼女たちの楽しみの一つだろう。


 山門から境内は、急こう配の石段がつづく。

 噴水などわき見をしていると危険。年配者は用心深く、若いカップルは腕を組み上っていく。


 境内に入ると三重塔があり、平日は広々とした開放感に満ちている。

 正月や節分はここが群れあう参拝者で埋まってしまう。

 あと一カ月余りで、その光景に入れ替わるのだ。

 黄葉のイチョウは地上で鮮やかさを発揮している。

 散った後も見ごたえがあるのは、イチョウが最右翼だ。

 ベンチに腰かけて、黄一色の地表を見つめるのも、晩秋の趣の一つだろう。

 だから、時間も心も、余裕が必要だ。

 幼子の思い出として撮る。紅葉は素敵な背景だ。

 

 成田山公園の見どころの一つは、浮御堂だ。

 眼下の池には錦鯉が泳ぐ。みな巨体で、悠然と泳ぐ。

 誰が餌を投げると、鯉は尾びれを展開し、すさまじい競争となる。

 真剣に生きているんだな、と思わされた。


 成田山新勝寺は金持ち? 豪華な本殿とか、関連施設なども華やかだ。新築殿が多い。

 古寺らしい年季の入ったお堂を見ると、「お前のほうが味があるよ」と声をかけたくなる。

 後光が射しているよ、ともつけ加えたくなった。


 三脚を建てて、紅葉の葉っぱを真剣に撮影しているおじさんを随所で見かける。

 そのうちの1人に、カメラを向けると、

「人間など入れてどうするのだ?」という表情をされた。

「赤い葉っぱだけ撮って、どんな使い勝手があるの?」
 そう言いたかったけど、余計なことだろう、と黙っておいた。


 やっぱり、1人でも人物は入れたいよね。

 季節が通り過ぎていくように、目の前を通り過ぎていく人でも、良いじゃないの。

 


 日本式旅館はどこか寂れていた。

 かつては泊りがけで神社に詣でたものだ。今となれば、はるか昔のことになった。

 ただ、日本旅館はしだいに外国人に人気らしいから、もう数年頑張れば、千客万来になるかもしれない。



 成田は羊羹(ようかん)とか、日本酒が産地だ。

 甘いものが好きか、酒が良いか。

 自分へのお土産としては、どっちがよいか、ちょっと立ち止まって考えてみよう。

 成田と隣接する、八街は落花生の産地だ。「千葉産・落花生」として全国的な地位を得ている。

 落花生は実に不思議な植物だ。地上で花を咲かせてから、その花が地表へと垂れて潜っていく。そして地中で実をつける。

 かつては南京豆と言われていた。ここらの由来からすれば、中国から渡ってきたものだと思われる。しかし、中国産よりも、千葉産のほうが高い。

 落花生はいまや成田のお土産として、一番人気だ。


 紅葉が燃えて散り、晩秋はわずかにして過ぎ去っていく。

 名残惜しいが、冬がそばに来て入れ替わる順番待ちをしている。

 この参拝道の紅葉が散りゆけば、正月のしめ飾りの準備に入るのだろう。 
 
 関東までやってきた紅葉は、野山の広葉樹や街路樹を染めていたが、冷たい秋風で青空に舞い上がっていた。

 紅葉は急がなくてもいいのに、ひたすら駆け足で、あすにも通り過ぎていくのだろう。

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