A025-カメラマン

朝日カルチャー『写真エッセイ教室』、新宿を止め、なぜ千葉なの?

 朝日カルチャーセンター千葉で、私が受け持つ『写真エッセイ教室』が4月20日からスタートした。講座は朝日カルチャー新宿を今年3月にクローズし、千葉で開設したものだ。

『写真の上手な撮り方、エッセイの上手な書き方、そして冊子の作り方が学べます。ビジュアル化時代で、この3本柱が同一の講師で学べます』
 これがパンフに乗ったキャッチフレーズである。
 11人が参加してくれた。第1回目は体験講座だったので、パワーポイントを使って「上手な文章の書き方」「上手な写真の撮り方」これら今後の指導ポイントの概略を説明した。


「なぜ新宿を止めて、千葉にしたのですか」
「朝日カルチャー新宿のほうが、抜群の知名度があるのに……?」
 数人の知人から、奇異な目で、そんな風に質問された。

 2つの理由があった。
 一つは「海は憎まず」の第2弾として、「フクシマ望郷」(仮題)で、福島県の浜通りに取材に入る。それには時間がほしかった。昨年末には、講座の縮小を考えたのだ。

「どんな事柄にも手抜きはしない。常に全力投球をする」
 この格言はいつどこで学んだのか、それは記憶に定かではないが、私の信条としている。

 提出作品の添削は一字一句を手に入れたり、総評を書いたり、アドバイスを与えたりする。小説講座、エッセイ講座、フォトエッセイ講座、区民記者養成講座、どれにおいても、一つ作品には最低でも3回は精読する。そして、手を入れる。受講生の提出作品数だけ、手間がかかる。

 福島への取材時間を作る。それは講座の数を減らすことだ。添削の負担を軽減できるだけではない。どの講座も半年間にわたり曜日が固定されてしまう。一つ講座を削れば、その日程が毎月空けられるし、取材日へとまわせる。

 朝日カルチャー新宿は止めようと考えた。

 

 第2番目の理由になるが、新宿の受講生の人数が安定しない。一昨年のスタート時に声をかけた、義理で参加した受講生(東大卒・理系)が毎回、教室で堂々と寝ている。教室の雰囲気が悪くなった。そのうえ、作品の提出率が極度に悪くなった。
 一度崩れると、何ごとも復元は難しいか、やたら時間がかかる。


 受講生が頑張れば、こちらも睡眠時間を削っても、添削にがんばれる。気持ちが乗らない受講生が多くなると、私自身を鼓舞するにも限界があった。
「新宿は1年間続いたし、止めるか」
 そう決意したところで、事務局ともクローズの話しがまとまった。

 まったく同時期だった。朝日カルチャー本社・石井勉社長から、「千葉で、フォトエッセイをやってくれませんか」と話をもらった。独立採算制なんだろうな、と勝手に解釈した。

 石井さんとは下町・立石でも飲む仲だし、断れないな……。どうするかな? と一瞬考えた。

 フォトエッセイの講師は、文章に精通し、写真を撮るカメラワークにも長(た)けている。さらにはワードに写真を張り付けるテクニックを必要とするので、パソコンも指導できる。この3拍子がそろわないと務まらない。そのうえ、「ひとに教える」教育技術がないとできない。
 4つの面から、指導できる講師は少ない。

 石井さんもそこらを評価してくれているんだな。
「求められたら、断らない」
 これも執筆業の生きかたの一つ。私は受諾した。他方で、ある安堵があった。新宿でまじめだった受講生の切り捨てにならず、4人ばかりが千葉に移れたことだ。

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