A025-カメラマン

永く遺したい、日本美の建築・内装の魅力はここに=写真で観る

 東京の台東区と文京区にまたがる、谷中・根津・千駄木(通称・谷根千)は、戦前、戦後の風情を残す。とはいっても、町並みは新しく変化し、変貌してきている。『東京の下町の歴史と情緒にふれる』という名のもとに、観光化されているのが実態だ。

 あえて探さなければ、本ものの日本文化の風情や趣きは得ることはできにくい。外観からは古風な造りだなと探し当てても、建物に入って、内装までみることはできないのが常だろう。

 文豪たちが住んでいたころの建物の、内装を撮影できる機会が得られた。

 日本の建築美の最も輝く場所は、床の間である。

 畳の間を飾る、「座敷飾り」だが、掛け軸や活けた花などを飾る。

 客人が来れば、床の間を背にして座ってもらう。

 こうした礼儀作法が、幼い頃から躾けられていた時代があったのだ。

 座敷と座敷との間を通り抜けるには、家人ばかりでない。

 表から裏へと風が通り抜ける。その先には、手入れの良い内庭の景色も見通せる。

 茶室の小さな庭には、石灯籠と手水鉢がある。

 茶事の前に、客人が手を水で洗い、心身を清めるところ。

 和の趣きがたっぷり伝わる。

 茶室から見る、庭には奥深い風情がある。

 茶庭は左右と前後の配置にも、無駄がなく、眺めるほどに心静かな心になれた。

 「奥座敷へどうぞ」
 この廊下の空間が、日本人の心に適している。
 洋間だとドアで仕切られた、隣りあわせ。

 和室には部屋から部屋へと静かに歩みながら、精神の心構えと空間のゆとりが生まれる。

 

 欄間と天井が竹細工である。渋い。しかし、妙に新しさもある。

 竹は歳月がたつほど艶やかになる。

 こうした竹のしなやかな味わいを取り入れた、日本の古来の伝統美が生かされている

 和の庭園は四季の趣が濃縮されている。

 何時みても、心が和むはず。

 秋の紅葉がきれいでしょうね。

「雪景色もきれいですよ。東京に雪が降るときは、いらしてみてください」
 そう教えてくれた。

 お茶の道具が並ぶ。これら道具が語りかけてくる。

 茶の心得がなくても、妙に心が落ち着く。

 


 京風の趣が生かされた玄関の内である。

 客人を迎える。家人を迎える。

 生け花は目立たず、出しゃばらず、なにかしら静かに語りかけてくる。

 欄間の彫刻は、透かし彫りである。

 どちらの部屋からでも、心ゆくまで眺められる。

 「隣の声が聞こえる」
 こんな個人主義など無縁だった。

 隣り部屋と欄間を通した、心のつながりがあった。それが日本文化である。


 障子をあける。畳の上の歩き方すらも、礼儀正しくなる。

 と同時に、言葉づかいもていねいになる。それが和室の魅力だろう。

 二階の窓から、庇を見る。
 
 ここにも大工の棟梁が腕を振るった、見事な造りがある。

 大工にしても、庭師にしても、きっと無名の人だろう。

 名は残さずしても、腕の良い仕事を遺してくれている。

 「ちょっと、肩が凝ったかな」

 さあ、近くの和風の店(根津)に行って、会席膳でも食べよう。

 この店は、プラス飲み放題で、5000円だった。

 ちょっと割高かな。観光化した谷根千だから、仕方ないか。

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