新型コロナ時代に「忘れられた花壇」。そこで見た現実の姿 (上) = 須藤裕子
ふだん花壇の手入れをして、花を愛でている人々が大勢いる。
新型コロナ時代に、私たちの生命をどう守るのか。『三密』が当座の自己防衛になっている。それには外出しない、一か所に固まらないが最善の選択だろう。
それによって、地域の花壇の手入れが無くなってしまう。
その結果はどうなったか。
そこに見え隠れするのは、人間のご都合主義かもしれない。
青戸団地(東京都葛飾区)一帯では、年/3回、業者がやってきて来て、一気に緑地帯の草刈り作業を行う。
草刈りの後は、散髪したようにすっきりとする。今年も春に、同じ作業が行われた。
ところが、青戸第3団地の端にある小さな公園は、忘れ去られたのか、作業がないまま、梅雨が明けた。
「サツキ」が植えられている花壇はどうなったのか。サツキの花の姿は見えず、とうとう雑草然となってきた。
それもずいぶん進んできた。
「セイタカアワダチソウ」の森林化だ。
こんなに旺盛な元気を持ち、空に向かってまっすぐ上に伸び、側には、次々に若い苗が育つ。そのパワーに感心してしまう。
たかが、雑草、されど雑草。テレビ通販で売る若さより、このパワーを感じることで、手前勝手な若さとしたい。
「ヘクソカズラ」は一度聞いたら忘れない。
万葉集では「糞かずら」と呼ばれたり、屁糞ではなく屁臭が転訛したとも言われ、その臭いは「メルカプタン」のせいだ。
これを体に溜め込だ「ヘクソカズラヒゲナガアブラムシ」を、外敵のテントウムシがかじったら、即座にアブラムシを口から離し、唾を吐き出して逃げる、というほど強烈だ。
だが、この臭いが好きだと言う人もいた。
初夏から秋に咲く「ヒメジョオン(姫女苑)」。別名:アメリカ草。北米原産の帰化雑草で、他にも貧乏草、戦争草、西郷草……などともいわれる一年草である。
種子の数が多く、日本全土に分布する。
似た花「ハルジオン(春紫苑)」は多年生で、花はピンクが多く、蕾が下を向き、葉が茎を抱く。茎を折ると、中が空洞である。
大正時代に帰化したので、江戸時代以前の日本にはなく、時代考証としておかしいと指摘される草だとされている。
よく見かけるこの白い花に、妙な親近感と知識を吹き込まれた。
花は鬼が笑っている顔に見える。
「雑草手帳」によると『別名「早乙女花」。 「ヘクソカズラも花盛り」という諺があり、どんな女性も年頃になれば美しくなることを指して、「鬼も18、番茶も出花」』と、隠れた魅力を教えてもらった。
甘い花の蜜を吸いに、虫も多くやって来る。
雑草然とした風景になってから、空き缶のポイ捨てが目立つようになった。
乱雑な風景にゴミは捨てやすいという悪循環をみた。
気軽に捨てる人の心には、それを誘う環境がある。