帰化 須藤裕子
「ナガミヒナゲシ」
ヨーロッパ原産で、1961年に日本への帰化が確認されて以来、全国各地での繁殖が極めて高い。
地域によっては、一面花畑のようになっている所もある。
根と葉からは周辺の植物の生育を強く阻害する成分のアレロパシーを強く持つ。その一方、一つの実に1千~2千個もある芥子粒のような種をばらまく。これで増えない訳がない。
葛飾区では特別駆除を呼びかけはしていないが、飯能市では、ホームページで、見つけたら抜くように推奨している。
コンクリートによってアルカリ性になった道端の土壌を好む特性がある。
隙間さえあれば、道ばたはもちろん、垂直の切り立った壁面からでも生育する。
金網の仕切りが、増殖阻止に一役買っているように見える。いや、そこに金網があっただけにも見える。
かれらは特に、水場を好んで生育している訳ではない。
「ハナミズキ」と一緒の風景に違和感がない。
公園入り口の「ナガミヒナゲシ」は、もう、立派な看板娘になっている。
ところが、「ツツジ」の花壇がもはや「ナガミヒナゲシ」の花壇に代わりつつあるこの風景。旺盛な繁殖力を脅威と見るか、驚異と見るかは人のくらしとのバランス次第だ。
もしも「この種を煎じて飲んだら、健康にいい」という効用があったなら、たちまち栽培するのが人間なのかもしれない。
アヘンの原料となるケシと同じ仲間だが、「ポピー」や「ヒナゲシ」と同じようにアヘンの原料物質は含んでいない。
花弁が鮮明で、観賞価値があるため、あえて抜き取る人はいない。
もう、「我が意を得たり」という増殖ぶり。
街のいたるところで、こんな風景を見かける。種は白い未熟な状態でも発芽するため、繁殖力が凄い。
サメの歯を想起するような棘で武装した植物「オニノゲシ」。
かつて繁殖した「セイタカアワダチソウ」を、最近あまり見かけなくなったのは、自らのアレロパシーで、繁殖できなくなったのだという。「ナガミヒナゲシ」もいずれそうなっていくのだろうか。
そして、今度台頭してくるのが「アメリカオニアザミ」や「オニノゲシ」か。
植物も生育し安いところでは「楽」に増える反面、生きていくのに「楽」ではないことがあるのも確かだ。
脅威的な増殖をする帰化植物「ナガミヒナゲシ」の生育状況を観察しながら、花を育てたり、観る私たちの立ち位置も、行きつく咲きは America いや 「自分First!」?