かつしかPPクラブ

わが国首相の平和思想はどこへ= 郡山利行

 平和主義の憲法9条を持つ、わが国の安倍晋三内閣は、昨年4月、『 核兵器でも、必要最小限度にとどまるものであれば、保有することは必ずしも憲法の禁止するところではない 』 との政府答弁書を、閣議決定した。 


 この表現は、1957(昭和32)年に、安倍首相の祖父、岸信介首相が『自衛権の範囲を越えない限り、核兵器保有は憲法に違反しない』と国会答弁したことが、原点になっている。

 1964(昭和39)年12月7日、日本国政府は、航空自衛隊の育成に『功労』があったという理由で、カーチス・ルメイ(1906-1990)というアメリカ合衆国軍人に、勲一等旭日大綬章を与えた。
 
 この叙勲を許可したのは、現政権(2017年)の安倍首相の大叔父、佐藤栄作首相である。
 叙勲を強く推薦したのは、小泉純一郎元首相の父親、当時防衛庁長官の小泉純也と、当時の参議院議員の源田実だった。

 太平洋戦争の終盤(昭和19年頃から)では、アメリカ本国政府から、前線の基地に、『戦争を早く終わらせるため』 として、日本の大都市への、焼夷弾(現在ではナパーム弾という)攻撃指令が下された。 
 その当時の空軍アーノルド将軍は、適任者として、ルメイを抜擢した。


 ルメイは1945(昭和20)年1月から、サイパン島に隣接したテニアン島の、マリアナ空軍基地の司令官として赴任した。B-29爆撃機による、日本本土の大中都市への、無差別空爆作戦を立案した。そして、実行させた。
 

   
   ≪空襲により焦土化した東京≫ 右手前に両国国技館、右奥は墨田川。

 1945(昭和20)年3月10日、東京大空襲はひと晩の無差別焼夷弾爆撃で、広島または長崎の原子爆弾の当日よりも多い、10万人以上の人が死んだ。

 ルメイ司令官は、なおも日本の各都市への無差別焼夷弾の攻撃を実行させた。空爆を受けた都市は次つぎと焦土化し、数十万人の人々の命が奪われた。
 個人的には日本攻撃を快感のなかで、かれは実行したといわれている。
 

   
 カーチス・ルメイは、終戦直前の8月には広島と長崎への、原爆投下作戦も指揮したのである。

                         *

 1964(昭和39)年12月7日、ルメイ大将が、航空自衛隊の発足10周年記念で来日した。一部報道は、朝刊・第2面の10段目に、小さな記事で伝えている。

 同紙の夕刊では、埼玉県の航空自衛隊入間基地で、ルメイ大将が浦幕僚長から『勲一等旭日大綬章』の勲章を受け取ったと、これも第8面の8段目で小さく伝えている。


 昭和天皇は、この勲章を直接本人に授与することを拒否したので、宮中での式典は行われなかった。

 世界じゅうの文明が高度化した経済大国のなかで、「無差別空爆のみならず、広島・長崎の原爆投下を直接命令した司令官に、勲一等旭日大綬章を与えて褒めたたえる」という恥ずべき叙勲をおこなったのは、日本の他には存在しない。


 今年(2017年)5月29日、現政権の安倍首相が、地中海マルタ島の英国海軍墓地内にある、旧日本海軍の戦没者の墓を訪れた。

 旧日本海軍戦没者墓地を訪れた安倍首相と昭恵夫人=「外務省」より

 安倍首相の狙いはなにか。なぜ、いまマルタ島なのか。明治時代から薩長閥を中心とした軍国主義のなかで、同盟に基づいた出兵をした事実がある。

 それは第1次世界大戦で、当時の海軍が日英同盟に基づいて、遠くヨーロッパまで軍隊を送った。そして、ドイツと戦った。
 とくに、地中海のマルタ島を拠点に、連合軍輸送船団の護衛の任務では、めざましい業績を挙げた。
 当時、連合軍の艦船は、ドイツ潜水艦のUボートから魚雷攻撃を受けて、次つぎに大きな被害を出していた。沈没した艦船から投げだされた海兵の救助とか、ドイツ潜水艦を逆に攻撃するとかで、日本からきた駆逐艦の戦いぶりは、ヨーロッパの人々をおどろかせたのだ。
 この日本海軍の活躍が、結果として、連合国側において西部戦線の劣勢をくつがえし、勝利につながった。日本に対する感謝の念はとてつもなく強いものがあった。

 旧日本海軍が第一次世界大戦でヨーロッパ戦線に参戦した。その事実は、ほとんどの日本人が認識していない。

 いま、安倍首相はなぜ地中海のマルタ島の戦没者墓地を訪れたのか。

 北朝鮮問題、南シナ海の中国侵出問題が身近にある。このさきの国際情勢、とりわけ米国大統領・米軍の動きによっては戦火にもなりえる。
 その場合、安倍首相は声高に、
「日本はアメリカの同盟国として、派兵するべきだ。かつて日英同盟にもとづいて、ヨーロッパ戦線に参戦した事実がある。同盟国として、これは義務だし、信義だ」
 と国会で語るだろう。

 まずはマルタに旧日本海軍戦没者の墓を訪れ、日本人の霊に花束を捧げておかねば、信ぴょう性が希薄になる。

 過去のマルタの栄光が、安倍首相によって、今後の軍備増強へ利用されていくだろう。既成づくりを得意とする首相は、軍事法案、軍事国家への構築へとすすむ。マルタ訪問もこの軍事力強化への一貫だろう。
 はたして言い過ぎだろうか。

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