A045-かつしかPPクラブ

願う下町の発展 第32回産業フェア(工業、商業、観光展)=隅田 昭


 表紙を飾るのは、地元の新宿中学校吹奏楽部の華やかな顔ぶれである。
 お馴染みフーテンの寅さんやジブリ映画のテーマソング、アイヌ民族のおごそかな調べに続き、軽快なマーチで締めくくり、会場は一体となった。


もくじ
  まえがき
1.父兄のまなざし/貴方色に染めて
2.日本のよろこび/お手軽な季節感
3.女心に応えます/童心にかえって
4.リユースは重要/親子の絆で経営
5.サルのあたしもひと仕事
  あとがき


まえがき

 ようやく猛暑が終わり、秋も深まった。心地よいシーズンの到来だ。そんな10月中旬に、第32回産業フェア(工業・商業・観光展)が、テクノプラザかつしかで開催された。
 このフェアは区内の産業と地域の発展、次世代を担う児童・生徒の育成という目標を、高らかに掲げている。



1.父兄のまなざし

 FMかつしかの司会から、演奏の感想を聞かれた新宿中学校吹奏楽部の顧問は、「今日は反省しないといけない。区民の皆様が喜んで聞いているのに、緊張で笑顔がない」と手厳しい。

 部員のひとりでユーフォニューム担当、佐保亜季さんの両親である、孝之さん、昌子さんご夫妻から話を伺った。
「部員はみな女生徒で、28名と聞いています。ウチの娘は受験生ですけど、家でも毎日、練習をしています。
 ずっとバイオリンを習わせていましたが、仲間と一緒が楽しいみたいです」


      貴方色に染めて

 ハロウィーンのカラフルな手ぬぐいが目立っていた。
 染付けの体験会を主催するのは東京和晒(わざらし)の社長、滝澤一郎さんだ。
 「最近は若いデザイナーに制作を任せています。100枚単位で制作し、約350種類あります。熱心なコレクターが多く、外国の方向けの


2.日本のよろこび

 香ばしい匂いに誘われ、福島県塙町の名産展で好物の焼き団子と干しぶどうをゲット。切り盛りするのは、ブラジルから帰化したサントス鈴木店長と店員の下重吉夫さんだ。

 店長は「日本で様々な方と話すのが大好き」と微笑んだ。
 鮎焼きを250本、団子は150本を用意したと語る。


       お手軽な季節感

 若きイケメンが、来場者に愛らしい鉢植えを薦めている。青戸サンロード商店会で老舗のハナヒデ花園だ。
 その加藤久弥さんから話を聞いた。
「祖父の話では、先祖は日本で初めてカーネーションを栽培した農家だったそうです。私もそれを誇りに、リッツカールトンで修行しました。
 新たな季節の訪れを手軽に味わえるのが、生花の大きな魅力だと思います。最近は保存技術の進歩で生まれた、プリザーブドフラワーが人気です。水分を除去しているので、3年ほどドライフラワーに近い感覚で楽しめます」


3.女心に応えます

 500円ハンドマッサージを声掛けするのは、青戸銀座商栄会ノエビア化粧品の社長、竹内恵子さん(写真右)だ。
 薬草を使用したオーガニックで、リンパ腺を刺激する。
 彼女は「女性はいくつになっても、若くて美しくなりたいという本能があります。  
ウチではご要望にお応えできます」と彼女は胸を張った。


     童心にかえって

 おもちゃの会で熱心に修理に励むのは、代表者の鈴木敏夫さんだ。75才の後期高齢者で子供向けの玩具ばかり触っている、と無邪気に笑う。

 国の研究機関で定年まで、長きに渡って専門技術職に携わっていたという。区民大学で講師の経験もあり、体力の続く限り奉仕したいと張り切る。

 「テレビゲームや時計じかけの玩具は、商売がたきになるから断っているよ。それにお宝鑑定団に出るような、高価な品も扱わない。純粋におもちゃを直して、喜んでもらいたいだけだからね」


4.リユースは重要

 プラスチック工業連合会では、実行委員のひとりである奥山孝一さん(写真)が、クリアファイルとカップを来場者に無料で配っていた。

 株式会社オリタニの若き経営者、折谷征晴さんが語る。 
「最近は回収されたペットボトルから、ハンガーや卓上カレンダーなど、様々な製品にリユースされています」


      親子の絆で経営

 ねじ連合会では古き良き昭和の工作機が、懐かしい音でネジを作っていた。 株式会社KYOEIの三代目、木村邦芳さん(33才)だ。

「ネジ制作の実演は13年前から始め、当時から人気だと聞いています。 弊社では携帯電話から自動車用まで、オーダーメイドで対応しています。
 中小企業は自分の考案した企画で、顧客から感謝されるのが励みです。

 子供の頃から家族の働く背中を見て育ったので、会社勤めをしたいと考えた経験は一度もありません」と語った。


サルのあたしもひと仕事

 静岡県出身のミルクちゃん(2才)人間に例えると、女子中学生かな?


あとがき

 産業フェアの今年のテーマは、「下町の宝/発見~葛飾の技術と味・匠の技」である。
「日進月歩」という熟語もあるが、デジタル技術の進展により、近年は「時分日歩」と言えるのかもしれない。今や死語かもしれないが、かつては、「ドッグイヤー」という言葉も存在した。

 IT業界では技術の進歩があまりに速いので、1年間が犬のように、7年分に相当するという意味だ。(もっとも最近はペット業界の医療技術も進歩しており、7年が5年分ほどに短縮しているそうだが・・・)
 恐らくその目まぐるしい変化が、様々な業界に浸透しているのだろう。
 ただ、いくら技術革新しようとも、最終的に使う人間の役に立たなければ、まったく価値を持たない。

 このフェアでは、取材に応じていただいた、いずれの組織も「お客様に喜んでもらえるが楽しい」と口を揃えていたので、記者は心から賛同ができた。
 1つだけ気になったのは、来場者には地域のお年寄りやお子さんが多く、休憩所やトイレの利便性が悪い点だ。次回からはぜひ改善してもらいたい。

 来場の皆さんがにこやかな表情だったので、来年以降も発展するだろう。


◆ 写真・文・編集 : 隅田 昭

◆ 撮影:平成28年10月15日

◆ 発行:平成28年11月18日


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