A045-かつしかPPクラブ

地球環境保全と言うは易く、行うは難し《雨水タンク》=須藤裕子

   《ま え が き》 

 雨。
 多すぎれば洪水に、少なすぎれば干ばつになる。

「雨も溜めれば資源!」として作られたのが「雨水タンク」だ。そもそも雨が降った時、どのくらい溜まるものだろうか。
 福岡県庁のHPによると、貯水量は、屋根などの雨を集める集水面と降水量によって決まり、

   貯水量(L)=集水面積(m2) × 降雨量(mm) × 0.9(集水可能な割合)

 ちょっとした雨が1~2時間降れば、家庭用の200L程度の雨水タンクなら満水で、これには驚く。水循環から「雨水タンク」に関心が湧いた。
 見えたもの、見てこなかったものに気づく。


 葛飾区役所の正面玄関を飾る「パンジー」。奥の黒い箪笥用の物体は、200ℓの雨水を溜め、自動潅水装置として利用する「雨水タンク:雨びつ」だ。

 サンエービルドシステム(株)の商品で、飯を入れるおひつを模して、米も水も大切にする気持ちを込めている。

「葛飾区シニア支援センター」にも設置されている。蓋はさび付いているが、蛇口はピカピカだ。ここでは「掃除」や「洗車」、「植物への水やり」など日常業務の中で使っている。近所の人も利用している。

「ミニダム」を推進利用するために、施設内で引き継ぎを徹底し、申し送りされてきている。



 立石6丁目にある株式会社「後関(ごせき)製作所」の敷地内には、災害時に活用するための井戸を掘ってある。そのうえ、同敷地内に建設したマンションには、自販機を設置し、電気止まった時は、自動的に風力発電からの電気に切り替え、災害時に、提供できるようにしてある。

 同じ立石6丁目に、長屋風の木造住宅が並んだ、昭和にタイムスリップしたような一区画がある。

 通路には、古くなって劣化しかけたポリバケツが置かれている。ここは、マッチ1本で火が燃え広がりそうなところだ。それを自覚したかのような「防火用水」がある。

「雨水タンク:ミニダム」が持つ頑丈さ、大きさ、便利さ、美的なセンスはないが、住民の精一杯の防災意識を見た。



 住宅地の一角に、飛び出したような、元気な魚の彫刻がある。よく見ると、口元などはあまり緻密ではない。

 いったい何だろう。

 これは、「青戸地区センター」の入口に置かれている彫刻だ。2階の図書館で、若い職員に尋ねてみると「知らない」と言う。

 しかし、年配の女性職員が「雨水」を溜めているのだと教えてくれた。



 尻尾の蛇口をひねると、水が勢い(・・)よく出てきた。


 平成27年4月から新校舎になった葛飾区立中青戸小学校。219㎥もの貯留雨水を、トイレの水洗や散水に使う。
 その他、屋上の植物に自動潅水システムで散水している。


 青戸第2団地の中庭にも、雨水を貯留して使う設備がある。しかしながら、ハンドルを回しても水は出ない。
「数年前までは、水が出て子どもたちがよく遊んでいた。飲み水ではないため、飲めないよう石を高くして工夫もしてあるが、壊れてここ何年も出ていないし、修理もしていない」
 と、自治会長をしている福田雅さんが話されていた。





 木製で体裁のいい「雨びつ」2台の奥には、もう一つ、200ℓの「雨水タンク:ミニダム(商品名)」もセットされていた。

 雨水資源を有効利用する製品が、区役所のプランタや花壇を潤している。


 青戸中学校では「雨水タンク:ミニダム」が、体育館の裏側の目立たない場所に設置してあり、普段、まったく使っていない。
 区内全小中学校に設置された「ミニダム」だが、利用状況は様々かもしれない。

 設置場所が登下校時の生徒や職員の目にたえず触れることで、「雨水タンク」の存在、機能を知り、活用し、まさかの災害時には、生かされると思うのだが……。



「甦れ雨水!」と、彫刻の上に掲示があった。

 屋上に降った雨を蓄え、トイレの洗浄水として使い、水道水を節約している。魚から出る水は雨水をろ過したもので、飲めないが、植木への水やりなどに使ってほしいとある。(要約)。

 施設の雨水貯水量は70㎥。トイレの洗浄水の他、掃除や水まきにも利用している。



「テクノプラザかつしか」では、総貯水量48㎥中、16㎥が「雨水タンク」として、トイレの洗浄水などに活用されている。さらに、入り口には「雨水タンク:ミニダム」が置かれ、植物の水やりに使っている。
が、1月は雨が少なく、溜まっていない。

 このような施設では職員の交代が多かったり、担当部署が異なると「雨水タンク」への関心が薄くなることもあるだろう。

 しかし、こうして入り口で多くの人の目に留まり、花とともに存在感と役割を十分アピールしている。
水道水のように、出なくなれば直ちに生活に支障がきたすという重要性はないが、入り口にでんと据えられた「雨水タンク:ミニダム」が青色で、水循環の大切さを訴えている。

 《 あ と が き 》

 雨水を「水の再循環」で有効利用するという、行政が率先、推進した事業を見た。

 これも住民や施設職員との意識交換で、功を奏す。CO2削減、省エネ、地球環境保全と、言うは易く行うは難しで、毎日の生活にこそ功を奏す。


 未来で、すべての家庭に「雨水タンク」が備えられ、特殊ろ過して水を使い、屋根も「ソーラーパネル」に変わるかもしれない。そんな勢いにさせる「雨水タンク」であれ・・・、と願う。
 

                              平成28年1・2月撮影 : 須藤裕子 

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