A045-かつしかPPクラブ

「かつしかPPクラブ」結成2年目の活動報告

 かつしか区民大学(主催:葛飾教育委員会)では毎年、「区民記者養成講座」を実施している。初年度卒業生たちが起ち上げた「かつしかPPクラブ(会長・浦沢誠)」は、2年目の卒業生をも受け入れて、16人で活動している。

 毎月の例会で、メンバーの活動報告、あるいはパソコン指導、記事の相互交流などを図っている。私は指導講師として、年に4回は課題を出した、作品の講評を行っている。

 5月には荒川放水路で、鷹の研究者・中里貴久さん(44)を招き、鷹を手にとまらせたうえで、飼育や生態について語ってもらった。それらが冊子にまとめられた。
 当日、参加できなかったメンバーは、独自に、区内の取材記事をまとめている。

 8月10日(金)午後6時30分から、同区東立石地区センターで、メンバーが一人ひとりの作品をパワーポイントで投影した画像をみながら、作品の講評に臨んだ。


秋山与吏子『誉たかき鷹』

 パソコンを使った初めての作品としては、楕円、吹き出しなど、PCの機能をうまく利用しています。記事の導入文において、鷹匠が天皇、将軍に仕えた高貴な職業と、定義づけた説明を行った、上手い入り方です。鷹と人物の写真は配置がよい構図です。
「アドバイス」
 記事のトップ写真は、花よりも人物のほうがよいでしょう。


岩瀬貞代『鷹は人間のパートナー』

 インタビュア・子ども、鷹研究者・中里さんの一問一答が、鷹の特性と特徴を巧みに引き出す、上手な組立です。写真の撮り方はローアングルが冴え、被写体の目線の捉え方が優れています。写真に吹き出しを入れ、鷹の生態をビジュアルに説明する、技量の高さがあります。
「アドバイス」
 レベルが高い作品ですが、テーマ外も入ると、盛り込みすぎになります。

宇佐美幸彦『皐月の寸景』

 地域行事を追う、記者の取材は精力的な、強い意欲が読み手に伝わってきます。わんぱく相撲大会。参加者の多さ、特に女子などは、記事から驚きが伝わってきます。水防訓練、避難者救助のレスキュー隊は、3.11で活躍した東京消防庁だけに、身近に感じさせる記事です。
「アドバイス」
 レスキューの消防士の顔を大きく、表情を取り込むと迫力と臨場感が出ます。


宇佐美幸彦『水無月の催事参加』

 12年5月の利根川水系で、発がん物質が発見された。そこで金町浄水場に取材し、「問題点・危機」を探る、着眼点の良い記事です。「おぞん発生機」の幾何学的な配置のノズルは、芸術的な輝きがある写真です。市販「東京水」との違いを伝え、がっかりさせられた、と記すなど、切り口がよい記事です。
「アドバイス」
 後ろ向きの人物は写真の中央からはずしてください。


浦沢誠『五月の風』
 「鷹の研究家」「金環日食」「東京スカイツリーオープン」と3つのメインテーマを据えた、12年は記念すべき年だと打ち出す記事です。
 「鷹の研究家」は鷹の飼育と特性が簡略に紹介されています。
  「金環日食」は堀切2丁目の住人の、観察模様を取り上げ、写真でビジュアルに伝えています。
 「東京スカイツリー」は技術的な、耐震構造に絞り込んだ読ませる記事です。
「アドバイス」
 記事トップの写真は、時系列にこだわらず、最も良いものを使ってください。


小池和栄『葛飾の学校』

 ~初等教育の夜明け~、と葛飾区内の小学校や教育資料館に取材した、内容の濃い、史実の掘り起こしの記事です。学術的な硬い内容が随所で展開されながらも、記者の補足コメントが入るので、全体に読みやすく流れに乗れます。現職の金町小学校の校長に取材しているので、記事全体に信ぴょう性が高まり、現場からの情報提供となっています。
「アドバイス」
 歴史的な流れは客観視されていますが、後半の教育論は主観が入りすぎています。


郡山利行『水元公園 菖蒲まつり』

 葛飾区長が「ショウブ、花ショウブ、アヤメ、カキツバタ」と即座に見分けられる、と冒頭で紹介する。意外性で、記事の導入を図っています。写真は技巧・テクニックに優れています。「女性カメラマン」は真剣さと身体の線が見事で、「一人ほくそ笑む女性」「男性のポーズ」など解析度が高く、美的な良さが醸し出されています。
「アドバイス」
 冊子の表紙はアオサギの生態よりも、花ショウブと人物のほうが良いでしょう。


郡山利行『水元地区 初夏の風景』

 表紙の茅の輪の神事は、完成度の高い写真です。
 あしなが蜂の生態を狙った接写は、観る側に迫力を与えています。トカゲ。準絶滅危惧種だけに、接写には学術的な紹介要素があります。アオサギのザニガニ漁。根気よく、狙いを定めた写真で、弱肉強食の世界を感じさせます。
「あどばいす」
 茅の輪くぐり方は写真でなく、各地の神社で展開していますから、さらっと本文ですませましょう。


腰原良吉『かつしかの鷹狩り』

 冊子の表紙に、「鷹狩のブロンズ像」を置いて、葛飾と鷹狩の結びつきの深さが呼び込んでいます。徳川家は鷹狩の関心度が高かった。記者が資料と史料を読み込み、葛飾の地域ごとに紹介しているので、全体を通して厚みがあります。徳川将軍の御膳所の5カ所の寺院にも取材し、大絵馬では住職からの取材で、真贋に攻め込んでいる。
「アドバイス」
 曳舟川の由来は文字が小さくて判読できないので、点描写真とし、まわりの風景を取り込んだが良いでしょう。

杉浦健二・小説『みと道 新宿5』

 元遊女がいまや角野屋の女将。背中の火傷の後に、不動明王の入れ墨を彫る。彫り師と、柔肌のお滝の呼吸がとてもよく、艶っぽく作品を一気に読ませる。と同時に、イラストがリアルな雰囲気を醸し出す小説です。お滝、経済的な支援をする市兵衛、彫り師の作之助ら、登場人物がしっかり立ち上っています。それぞれの性格が作品を推し進める、よき展開です。
「アドバイス」
 クライマックスがやや書き急ぎです。人物が立ち上がっていますから、もっと書き込んでください。


斉藤永江『鷹に魅せられて』

 鷹の研究者に対する、記事冒頭のリード文から、会話文の展開で、良い記事の運びです。「~愛情を持って買い続けてほしい」と日輪を優しいまなざしで見つめた、と記者として強調したい点が明瞭です。サッカー少年が鷹をめずらしがり、即席の少年記者となり、それら子供たちの質問と写真とが上手く絡まった、流れの良い展開です。
「アドバイス」
 鷹の顔が向いた方角は、もう少し空間を取ってください。


鈴木會子『立石の鷹匠』

 鷹の写真が姿態とか、表情とか、細かく捉えて紹介されています。記事に歴史が挿入され、「江戸歳時記」の絵図がそれを裏付けています。記事から歴史観が伝わってきます。文章に、詩的な表現描写があるので、一味違った切り口を感じさせます。
「アドバイス」
 編集後記を入れると、記者の想いが深まります。


宮田栄子『ノスリの日輪』

 鷹の目線で、自己紹介し、さらには鷹研究者の中里さんからインタビューし、一人称で仕上げている点から引き込まれる記事です。写真とキャプションが合致しており、内容に説得力があります。中里さんの写真はすべてカメラ目線を避け、鷹と語り合う姿だけに、氏の鷹への愛情の深さが伝わります。
「アドバイス」
 鷹を主人公・一人称とした本文はとても良いので、見開きとも、統一した方がよいでしょう。

 東立石地区センターで、講座が終わると、立石の定食屋に流れて、空腹を満たし、咽喉をうるおし、各自の取材記事、作品について語り合いがなされます。

                         写真提供:浦沢誠さん

「かつしかPPクラブ」トップへ戻る