A020-小説家

お勧めNHKの「歴史秘話ヒストリア」(2019年5月22日放映)

 読者の声が、「安政維新 阿部正弘の生涯」が著者のもとに届いています。読者の感想から、そうか、NHKの「歴史秘話ヒストリア~日本人 ペリーと闘う 165年前の日米初交渉~」を観てから、この本を読まれると良い。ペリー来航の真実がわかったうえで、一気に読めますから、それを紹介します。


  写真:歴史秘話ヒストリア@NHKオンデマンド より

【読者感想】

(A)

「安政維新 阿部正弘の生涯」、読み始めると面白く、1日で読み切りました。読書スピードの遅い私としては、近頃珍しい早さでした。30年前でしょうか、山岡荘八の大作「徳川家康」を次々読んだ時代を思い出しました。

 勝者薩摩と長州が色濃く反映された日本の歴史教育を学校で学んだものとしては、今でも薩摩長州の人々への畏敬の念が、体にしみこんでいます。

 それに対し徳川幕府の優秀な人材が、幕末に活躍したことは知らないままでおりました。その意味でNHKの「歴史秘話ヒストリア」(2019年5月22日放映)は新鮮な驚きでした

 久しぶりの感動を知ってもらいたいと考え、生野町(兵庫県)を中心とする地域連携プロジェトを推進していただいている神戸大学院の先生とわが家古文書を整理研究しておられる茨城大学教授、アメリカに駐在する長男にご著書を贈呈することにしました。

【作者の補足・意見】
 ※ 読者は、NHKの「~日本人 ペリーと闘う 165年前の日米初交渉~」を観てから、興味ぶかく読まれたのでしょう。「安政維新 阿部正弘の生涯」は、通説を次つぎに資料からくつがえしていますから。

(B)

 全体的に面白い内容ではあったが、資料から得た史実と作者の推測が入り混じることはやむを得ないが、主観的に流れている感がある。これだったら、「小説」として断定的に描いたほうが、読者の納得を得られるのではないか。 
 もっと文章が洗練されていれば、それなりに説得力もでるかもしれない。田舎くさい文章だ。


【作者の補足・意見】

 ※ 私の歴史小説は史料・資料により近いところで書いています。

 ペリー提督と林大学頭の緊迫した場面などは、江戸時代であり、漢文調ですから、読者の指定するとおり、ずいぶん田舎くさい文に感じたことでしょう。と同時に、これまでの薩長史観とは違うし、作者の主観に感じたのでしょう。

 阿部正弘が、ペー提督に蹂躙されて、おろおろと日米和親条約を結ばされた。これが定説です。
 NHKの「歴史秘話ヒストリア~日本人 ペリーと闘う 165年前の日米初交渉~」、1時間番組は、160余年ぶりに、世に出回った林大学頭『墨夷応接禄』(ぼくい おうせつろく)を中心として制作されたヒストリアです。日本の応接掛が対等以上に外交交渉したと、ここらがよくわかります。

 これまで、「ペリー提督日本遠征記」の自慢話、あるいはペリーの負け惜しみを歴史的真実として教えてきた日本の歴史学者は、きっと林大学頭の克明な記録の『墨夷応接禄』を世に出したくなかったでしょうね。教科書の幕末史が根底から崩れますから。

 実際に、わたしたちの目に触れるのはわずか数年前です。
 
             *

 徳川政権が260年間も継続できたのは、「德川隠密組織と御庭番」が有機的に働いたからです。
 アメリカ艦隊が来て、地方の奉行所の与力・同心だけに任せ切るはずがない。現代でいえば、テロ事件が起きると、どんな地方でも、東京・警視庁の公安警察がすぐさま出動するのと同じです。

 老中首座・阿部正弘は備後福山藩の最大のブレーン関藤藤䕃(せきとう とういん)と、老中次席の牧野忠雅はこれも長岡藩の最も有能な川島鋭次郎(河井継之介の先輩)と、ふたりを老中密使として浦賀に送り込んでいます。これは事実です。

 どんなやり取りだったか。ここらは超極秘で資料は残らず。資料がないと歴史学者は書けない。しかし、浦賀の与力だけでペリー提督と初期対応など、常識で考えても、あり得ない。そこは小説家の想像力で埋める。
 それが作家の役目だと考えています。

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