A020-小説家

書店員が薦める、GWの文芸書=1位が村上春樹、2位が「海は憎まず」

「海が憎まず」が販売されてから、1か月が経ちました。

「電車のなかで、涙を流して読みました。恥ずかしいから、途中でやめました」
「メディアの報道では、3・11は表面的にしかわからなかった。実はすごい事態だった、それを世に知らしめてくれた、素晴らしい取材です」
 そんな評価が連日、著者の下に寄せられています。

「津波で流される屋根の上で、母親がおっぱいをあげている。泣きました」
「津波は人間を平等にし、全部をゼロにしてくれた。この晴男さんの言葉には感動しました」
「警察署長のところは涙で文字がかすんでしまいました」
 これら手紙とか、メールとかは大半が私の面識のある人です。

 面識のない人が書店で、「買って読んでみよう」という気になる本なのか。

 版元は中小出版ですから、営業力が乏しく、大手書店の平積みなどありません。店内の棚に差し込まれている本が目につくのだろうか。 口コミ(電話、てがみ、メール、フェイスブック)が購買動機に結びついているのだろうか。それはほとんど知ることができません。

「良い小説は腐らない」この格言があります。多くの本は目先の人気だけで消えていきます。良書はいつまでも読まれていきます。
 
 目の肥えた書店員が、「海が憎まず」を推薦できる良書として、災害文学として、評価してくれたサイトがありました。(丸善&ジュンク堂ネットストア )、第2位でした。

文芸書が読みたい!書店員が選ぶいま注目の新刊まとめ 2013年GW編
      (左クリックすれば、開けます)

【国内】
1位 村上春樹著『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

2位 穂高健一著『海は憎まず』 

3位 京極夏彦著『遠野物語』

4位 伊東潤著『巨鯨の海』

5位 木皿泉著「昨夜のカレー、明日のパン」

【海外】

1位 カリ-,ロン著『神は死んだ』

『作者コメント』

 この先も「海は憎まず」は多くの方々から評価を得ながら、漸次、読まれていくことでしょう。
 小説のなかで、読者は大災害を疑似(ぎじ)体験し、「わが身のこと」として処し方を学び、将来予想される関東大震災や南海トラフなどにも役立つはず。後世の人にも、3・11からの教訓を知る貴重な本になる、と確信しています。

 ある日、私たちの町にとてつもない大地震が発生した時、大火炎を念頭にして、行政が指定避難する低地の河川や公園やグランドに逃げるべきか。真っ先に、大地震=大津波を想定し、十数メートル以上の高いビルに駆け上がって様子をみるべきか。

 このとっさの判断が運命の差になるでしょう。後世の人たちも同様に。

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