A020-小説家

第66回・元気100エッセイ教室=描写力について

 エッセイにおいて、描写文は必要で不可欠な技法です。描写文を上手に書くコツはなんでしょうか。それは対象をよく観察し、作者のことば(文字)で写生することです。
 文章から、読者の想像力を刺激し、イメージを作らせることです。

 描写文と、説明文とは対極にあります。ビジネス文などは殆どが説明文です。叙述文学(エッセイ、小説)では描写文で書き進んでいきましょう。

 作者はよく知っている人、物、事象ほど、説明文で簡単に書いてしまう傾向があります。悪い例として、
『妻は犬の散歩から帰ってきた。そして、買物に行ってくるわ、とスーパーに出かけた』
 と書いてしまうと、読者はどんな妻を連想をするでしょうか。

 作者自身はわが妻ですから、よく知っているでしょう。だが、読者には妻の年齢、顔の特徴、容姿、着るものの趣味などまったくわかりません。となると、読者は概念で考え、月並みな妻のイメージをもってしまいます。これでは人物描写にはなりません。

人物描写のテクニックを身につけましょう

  登場する人物の外観と、性格と、癖とを3つを組み合わせるのがコツです。そうすれば、登場人物が立ち上ってきます。

 ・外観……似顔絵を画くのように、特徴を見出して書いていく

      眉には斜めの傷跡がある 縞柄の派手な服をきた三十代の女性 

 ・性格……長所・短所、際立った精神的な特徴などを書く
 
     図太い性格だ はにかむ態度 見下した口の利き方をする 

 ・癖……言動、四肢の動きなど、瞬時の同じくり返しを取り上げる
 
    緊張すると指をかむ癖がある 話しながらメガネを拭く
  

心理描写が深まるテクニックを会得しましょう

 出来事(事象)ごとに、主人公「私」の心の動きや、気持ちの移り変わりを丹念に追うことです。そうすれば、読者が感情移入してきます。

    ・どう感じたのか   (寸前)
    ・どう思慮しているのか(いま)
    ・どう行動したいのか (これから)

 これら三大要素を常に念頭に置いたうえで、「私」の心のなかを覗いて書いて行けば、心理描写が深まってきます。

読者が映画を観ているような、情景描写のテクニックを学びましょう

 一つの風景を書く場合、そのなかに多めの名詞を入れる。その名詞を修飾させることで、風景に奥行きと立体感が出てきます。

   ・遠景、中景、近景と遠近法を使う。
   ・正面に見えるもの、左と右にあるものも加えると、描写が深まります


 描写文で最も大切なことは、手垢の付いた文章、使い古された比喩を使わないことです。作者の観察した目で、作者独自の言葉で書くことです。

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