A020-小説家

美人ストリッパー(作家)と文学談義で盛り上がる=スカイツリーで裸身を

 日本ペンクラブ主催「ペンの日」のパーティー会場で、作家・高橋克典さん(日本作家クラブ専任理事)から、ふたりの女性を紹介された。高橋さんが主幹する同人誌『ZOWV・ゾワヴ』のメンバーである。私は前々から、「同人の在日の金子京花さん、もう一人は牧瀬茜さん。2人の作品の講評をしてあげてほしい、将来性がある人だから」と高橋さんから言われていた。
 同パーティー会場で、初顔合わせだった。

 牧瀬茜さんの名刺には、『表現者・ストリッパー・作家』と表記されていた。ペンネームは「時羽七知」である。元ストリッパーなのかな、と思った。現役で、とても売れっ子で、追っかけがいる。この道ではとても有名だと、金子さんが教えてくれた。

 私の受講生だった純文学作家を目指す女性が、ストリッパーを取材し、それを作品化していた。それを思い出し、話題にしてみた。
『売れない二〇代の女性ストリッパーが、ヒモの男性と暮らす。舞台でぺちゃな乳房を侮られても、生きていくためには、劇場の便所掃除婦へと落ちていく。座長の人間性もよく書けていた』と私は説明した。

 その作品を読んだときには、すごい取材をするものだな、と感心させられた。ある文学賞の選考の上位まで行っている。
「狭い世界ですから、誰に取材したか、それがわかれば、顔はわかります」と牧瀬さんが話していた。

 PENのパーティーが終われば、決まって二次会だ。高橋さんとは出版の用件があるので、小中さんグルーブのメンバーとともに、東京會舘に近い居酒屋に行った。
 牧瀬さんを中心に盛り上がった。彼女は「ストリッパーに誇りを持っています」と堂々と話す。父親がTVの放送作家だった。元NHK・小中さんは番組名から、わかったようだ。

 彼女がこの道に入った動機を話す。路上でアクセサリーを売っていたある日、ストリッパーの人が買ってくれた。劇場に観に行くと、気持ちよく、美しく脱いでいた。これは私に似合った職業だと一瞬にしてひらめいたという。

 日本中の劇場で、ストリップで表現する、職業の魅力を語る。彼女には自信と誇りが満ち溢れている。私がイメージしていた暗さ、引け目など、みじんもない。からだで芸術を語る。すごい価値観だと感慨を覚えた。
 

 同席する作家たちや、フランス在住の映画評論家(女性)、PEN理事の大原さんなどが、彼女の生き方と語りに感動し、芸術・ストリップを見たいと言う。
「いいわよ、いつでも」とすんなり応じる。
 彼女の積極さから、さらに盛り上がり、浅草の屋形船がいいとか、東京スカイツリーの方が話題性がある、と本気か冗談か、あれこれ好き勝手に知恵をだす。
「警察に捕まっても、スカイツリーの方が話題は取れるね」と彼女も乗っている。

 この話題から、最近は警察の取り締まりが厳しくて、ストリップ劇場が経営的に成立せず、彼女が立てる舞台が次つぎに消えていく。それらの劇場名を出しながら、社会的な流れを嘆いていた。最高年齢のストリッパーは70歳だという。

 牧瀬さん(写真・左)の連載コラムとか、小説活動とか、文筆へと話題が移っていく。金子さん(写真・右)の方は、日本で生まれながら朝鮮学校で学ぶ。半々の意識の揺れを語る。在日の生き方が作品化されている、と話す。話題の主力はごく自然にそちらに向かう。やがて、彼女たちを交えた、文学談義に終始した。

 三次会は高橋さんの知っているスナックだといい、イルミネーションが光る有楽町界隈に向かった。方向が間違って、いつしか東京駅に向かっていた。時間も遅いし、改装された東京駅を観てから帰ろう、と誰彼なしに話がまとまった。
 
 
 

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