A020-小説家

第52回・元気100エッセイ教室=語尾には敏感になろう

 エッセイ作品は小説と違って、限られた文字数のなかで、人生を上手に描き出す必要があります。その枠組みのなかでも、書き手によって短い作品、長い作品、と得意分野が違ってきます。短距離ランナーと長距離ランナーと似た体質の違いです。


 読み手も同様です。短くてシャープな作品が好きとか、多少長くても、じっくり味わえるほうが良いとか、それぞれです。
 いずれにしても、エッセイはストーリーよりも、文章の深みと味わいがより重要になります。

 人間の行動や心の動きは、ほとんどが動詞で表現されます。日本語の場合は、動詞が語尾にきます。
 作者はすぐれた作品を書くためにも、ワンセンテンスごとに、語尾に敏感になる必要があります。ふだんの何気ない言動や感情でも、語尾の動詞を上手に変化させていけば、魅力的な文章になります。


【今講座のレクチャーは、語尾の工夫と留意点です】


 ①体言止めは味付けの無い文章になり、素材・情報だけの提供です。

    ・危険だ、と彼は背を丸めた姿勢。
      ⇒ 危険だ、と彼は背を丸めて身構えた。

   ・私は姉と妹の三人兄弟。
      ⇒ 私は姉と妹の三人兄弟で仲がよかった。

   ・話の途中で、彼は相づちばかり。
      ⇒ 話の途中で、彼はうなづきばかりで、心の中がわからない。

 ②感嘆符は語尾が書き切れない、中途半端で未熟な表現です。

    ・船を発見!
      ⇒ 船を発見したぞ。

    ・オゾン層を破壊!
      ⇒ オゾン層を破壊させてしまった。

 ③推理、推測、予測、疑問は積極的に取り入れる。

 ④時間の経過に幅が出る、語尾の技法を身につけましょう。

     ・この家は代々続いた。
       ⇒ この家は代々続いてきた。

     ・彼は遅れた。
      ⇒ 彼は遅れてきた。

     ・私は自分の言葉に酔った。
      ⇒ 私は自分の言葉に酔ってしまった。

 ⑤紋切り型の語尾から脱却して、センテンスごとに語尾に変化をつける。
 
  「だっ」「い」「組」「し」「行こ」……、ラストの一文字に凝ると、深みが出ます。

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