A020-小説家

35回「元気エッセイ教室」

 エッセイは誰のために書くのか。極端かもしれないが、『エッセイは読者のために書くものだ。自分のためならば、日記だけに留めるべきだ』と私は言いきっている。
 独りよがりの下手な叙情文(エッセイ、小説)は、義理で一度読んだにしろ、「もう結構、二度と読みたくない」と思う。そんな本心は作者に言えたものではない。


どんな作家でも、最初から名文・名作など書けたわけではない。いま流に言えば、超下手だった習作時期があるはずだ。それを越えていく過程で、ときには巧いな、名作だと思える作品が生まれる。ところは次は駄作だったりする。
 創作活動とは、そのくり返しで上達していくものだ。
 やがて、上手な作品が安定して連続的に書けるようになるものだ。

 同教室は約4年間続いてきた。受講生の文章力が磨かれてきた。そのうえ、豊富な人生経験に裏づけされた、良質の作品が次々に生まれている。

 他方で、新しく入られた受講生もいる。「着想から作品化までのポイント」の再確認をおこなった。

作品作りの手順

① 着想
 「なにを書くかな? あの出来事を書いてみよう」
 「あのことは面白そうだから、取上げてみようかな」
 「読者はきっと興味を持つだろうな」
  この段階が着想です。

② 構成
 主人公(私)を中心に据え、頭の中で、構成(ストーリー)を組み立ててみる。(すぐ書くと、失敗しやすい)

③ テーマ
 「読者に対して、なにを言いたいのか」
  それを掘り下げていく。
  一言で言い表せるまで、絞り込んで行く。それがテーマの絞込みです。

 例「子どもは親に恩を感じない」
  「妻の栄養剤は愚痴だ」
  「食べ物の好き嫌いは人間の好き嫌いと同じ」
  「葬儀の涙は、自己陶酔だ」

④ 結末
 テーマがラストの2、3行にくるようにする。

⑤ 題名
 すべて書いたうえで、結末近い言葉から探すと、よいタイトルが生まれやすい


推敲の方法

 一通り、荒削りで書いてみる。そのうえで、全体を精査する。

① 書き出しの見直し
 
 大半が初稿の100字~200字をカットしたほうが、良い書き出しになる。

② 読後の余韻の作り方
  結末も初稿のラストを思い切ってカットする。
  読者がまだ読みたいところで、断ち切り、余韻をつくる。


 主人公「私」の立ち上がらせ方

 まわりの人物は面白く、よく書けている。だが、肝心な「私」が書かれていないものだ。

① 主人公(私)を全体比で7割~8割まで比重を上げる。まわりの目立ちすぎる人物を押えていく。登場人数が多いとカットしていく。

② 一つひとつの事象に対して、心理描写(私の想い、私の心、私の考え)を丁寧にねばっこく書く。

③ 「私」のきわだった特徴を一つふたつ挙げる。癖とか、弱点とか。

 「あなたって、ふだんから短気で、虚栄心が強い人ね」
 「出かけるのに、無精ひげ。恥を知らない人ね」
  相手に性格や容姿をいわせてみる。

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