A030-登山家

いつもと違う夏・コロナ禍の陣馬山=市田淳子

 新型コロナ感染の収束が見えず、夏になってもいつもと違う生活を強いられている。withコロナの山行はどうあるべきなのか、自分自身に問いながら、8月22日、陣馬山から高尾山までを歩いた。

 山に行くことを考えるなら、まず、体力を維持しなければならない。今までなら夏山のためトレーニングをして山に臨んでいたが、春から自粛生活をしているのだから、トレーニングは他の形でできる限りしておかなければならない。
 そして、山では人との距離を持つ工夫が必要で、出会ったならマスクを着用して、自分も他人も守らなければならないと思ってきた。

 そんなことを念頭に8月22日、陣馬山から高尾山という縦走を実施した。最寄り駅から始発で高尾駅へ。高尾駅を降りると、さほど暑くはなく爽やかだとさえ思えた。

 しかし、高原下でバスを降りて登っていくにつれ、風はなく足どりが重くなった。足は鍛えていたが心肺機能は衰えたのだろう。

 ちょうど近くに1人で歩く女性がいて、「暑いですね。風がないですね。きついですね。」と話しながら、苦しいのは自分だけじゃないと言い聞かせて歩いた。いつもより単独行が多いような気がする。


 山頂近くになると、様々な秋の花が頑張れと言わんばかりに次から次へと現れた。キバナアキギリ、オミナエシ、オトコエシ、シラヤマギク、ススキ、キンミズヒキ・・・そんな花を見るだけでも吹いてもいない秋の風を感じられたような気がする。

 春から秋にかけて陣馬山頂付近には草原の花が多く見られ、私にとってはこれから始まる縦走の充電をする場所だ。


 しかし、先が長いからゆっくり楽しんでいるわけにはいかない。景信山までが飽きるほど長い。この日は高温で風がないため、特に長く感じた。小仏城山手前の階段まで行くと、もう少しだという気分になる。

 時計を見てもまだまだ余裕があり、最後まで行けそうだ。それにしても、すれ違う登山客やトレランを楽しむ人たちがほとんどマスクをしていないのには驚きだ。

 夏の奥高尾は高温でマスクは厳しいのはわかるが、私はマスクなしでは歩く気になれず、すれ違うたびにフェイスカバーを付けた。高尾山まで来ると、もう先が見えたようなもので、どのルートで降りようかと余裕も出てきた。

 そして、ついに高尾山口駅まで到着することができ、この日の目標を達成した。こんな山行がいつまで続くのか、これからはこうなるのか、先が見えない不安はあるが、自分なりに確立していく必要があると感じた。


  ハイキングサークル「すにいかあ倶楽部」会報№253から転載

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