A030-登山家

ことしの登山計画は?「とりあえず飲みながら決めよう」。

 毎年、IT会社インフォ・ラウンジの社員(平均年齢30代初め)と北アルプスに登っている。6-7人である。それに、「すにーかー倶楽部」が加わっている。約10人のパーティーである。
 
 2014年秋の紅葉シーズに、計画は剣岳(標高2,999m)だった。山荘の予約がとれず、すにーかー倶楽部は剣岳、ITグループは立山連峰の雄山(おやま、標高3003 m)、大汝山(おおなんじやま、3015 mの縦走だった。
 
 2015年秋は剣岳の再チャレンジ。昨年の段階では、誰もが信じて疑わなかった。

 4月29日に、「今年の登山はどこに決めるか」と、それを口実に、IT社員が横浜から、葛飾・立石にやってきた。

 立石仲見世の寿司屋「松ずし」で昼食をたべよう。長い列ができている。40分ほど並んで、店員が「もうネタがあまりないですよ」という前置きがあるも、せっかく並んだのだから、とカウンターで寿司を食べた。

 一級河川の中川の「中川七曲り」を散策した。
 最近、この七曲りに新たな河岸道路ができた。行政が洪水対策で、過去3度にわたり、土手をつくり、補強してきた。だから、川と並行して3列の道路が延々と続く。森永牛乳の近くでは、古い道路が残っているから、4列の道路がある。

 日本国内でも、きっとめずらしいと思う。それを売りだせば、と思う。「国家100年の計」からほど遠く、「場当たり的な治水対策だ」とばれてしまうからか、行政は音なしのかまえである。

 皆して、堤防をつぶさに観察すれば、盾のひび割れ(クラック)がいっぱい入っている。「近い将来、大津波が東京湾に来れば、堤防にこんなにもクラックが入っているから、2-3メートルの津波でも倒れるよな」
「岩手県・田老町の世界最強の防潮堤だって、津波は押し倒したのだから、もっと簡単だな」
 ここら海抜ゼロメートル地帯である。津波の恐怖を語りながら散策した。
 
(写真は逆光だから、フラッシュ・モードにセットして、シャッターを頼んだ年配者に手渡したのに、遠くで写すから、光りが人物に届かず、暗くなった。まあ、いいか、人物が入っているだけでも)

 
 中川の「中川七曲り」を散策してから、立石の街なかの酒場に向かった。29日は祝日で、モツ煮の人気店「内ちだ」が休業だった。だから、二番手、三番手の店以外でも、若者たちが長い列をつくっている。
 とりあえず、開店したばかりの粗末な大衆酒場に入った。そして、それぞれが地図を広げた。

「剣岳の再チャレンジでいこう」
「来年以降でも、チャレンジできるよ」
「上高地の日本山岳会の山荘をベースにして、放射登山をやろう」
「南アルプスにはいちども登っていないな」
「仙丈岳(標高3,033 m)が良いんじゃないかな」
 有力候補になった。

 近々、日本ペンクラブ・電子文藝館で、文学賞・受賞作品「炎」が掲載される。仙丈岳の山岳救助隊員が主人公である。
「私の作品のなかで、自分では最も名作だと思っている」
 こんな話題を加えたことから、仙丈岳に決まった。

 次なるは酒場のハシゴだ。「江戸っ子」などはウンザリするほど長い列だ。大衆酒場「伊勢屋」は安さが人気で混む店だが、運よく、6人組が退店してくれた。安価な料理と酒を頼んでから、登山計画の続きに入った。

「足慣らし登山で、6月7日に、乾徳山(けんとくさん・標高2,031m)に登ろう」
「山頂付近は座禅石や髪剃岩、天狗岩などの奇石と、岩場だ」
 ITメンバーは地図とガイドブックを照らし合わせる。
「首都圏から日帰りでは、もっともきついコースだ。前泊の場所がない」
 そんな話題が進むなかで、私は最近、運動不足だし、脚がついていくかな、という不安があった。
「無理せず、体力が追い付かないときは、途中で待っているから。登山中にパーティーを割るのは本意ではないけど、想定内としよう。待つ私は地図・磁石が使える。心置きなく山頂にアタックしてほしい」
 そんな話合いの後、予備日6月8日も決定した。

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