登山家

国民の祝日「山の日」が、えっ、こんなにも早く成立=平和を願う議員

 全国「山の日」制定議会(谷垣禎一会長)の通常総会が、2014年5月28日(火)に、衆議院憲政記念館で行われた。法人、個人も合わせた148人の会員(穂高も一員)の過半数以上(委任状も含めて)をもって開催された。

 同総会の冒頭において、「こんげつ23日に、「山の日を制定する」法案が参議院を通過し、可決成立しました。こんなにも早くに制定されるとは思わなかった」と、谷垣同会長はニコニコ顔だった。
 多くの法案は数多くの根回しを要し、「長年の念願だった」と涙と笑顔で語るのが常だ。
 祝日「山の日」は、148人の推進者たち全員があ然としたり、驚きの声を上げたりしているのだ。これまでは、推進の輪が一部報道で紹介されるくらいだった。
 2年後の2016年8月11日から施行される。これも単純な理由で、来年だと、カレンダー屋さんの印刷が間に合わないからだ。
 
 かえりみると、作曲家の船村徹さん(栃木県出身)が、2008年に新聞紙上で「山の日」を国民の祝日にしょうと提唱したことからはじまる。
 2010年、山岳5団体が活動をはじめた。2013年11月11日に、「山の日」制定議会が発足した。並行して、超党派「山の日」制定議員連盟(衛藤征士郎会長・衆議院副議長)ができた。

 祝日は6月がよいか、8月がよいか。山の日が成立するならば、どちらでもいいが、「海の日」のように流動的な日でなく、固定しよう。
 そんな意見や趣旨が固まりつつあった。まずは全国に広く賛同を呼び掛ける。県や市町村など地域ごとに山の日を作ってもらう。こうした地味な努力がはじまったばかりだった。

「市町村から、国の法律を作る手順だと、時間がかかりすぎる。国の法律を作るのは政治家だ」
 超党派で法案を提出しようと、衛藤征士郎会長が最短距離を推し進めた。

 それから約半年後に、あっという間に、衆議院、参議院を通過し、祝日「山の日」が制定されたのだ。この間には、小渕優子議員が8月12日は日航巣鷹山の大惨事と重なり合うから違和感がある、と懸念を示したので、同月11日に修正されたくらいである。

「こんなにも早くと制定されるとは、だれも思っていなかった」
 それが関係者の偽らざる喜びで、口々にそう語った。

 そのひとつの例として、今年(2014)5日27日、栃木県総合文化センター(宇都宮市)に1600人を集めた、『山の日を作ろう! シンポジュウム』が予定された。開催日には同法案がすでに成立していたのだ。関係者には予想外で、会場のパネル、配布資料、背景のスクリーンは「つくろう」のままだった。(別途に紹介)



『山の日』制定議員連盟の衛藤征士郎会長(写真・手前)と日本山岳会の森 武昭会長(写真・奥、24代会長)らが打ち合わせる(2014年5月28日、衆議院憲政会館)


同法案の成立は、国会議員の努力に負うところが大である。同議員連盟の事務局長である、務台(むたい)俊介衆議院議員が、
「山の日は、国民がこぞって、山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日です。日本人は心優しい民族である、とウォール・ストリート・ジャーナルにも紹介されました。日本人は、海の日、緑の日、さらに山の日、と自然を大切にする祝日をもちました。日本人は素晴らしいと、海外メディアが評価してくれています」
 と挨拶された。
 近隣諸国の中においては、反日の日、南京虐殺の日などと、政治色や軍事色が強い提案が出されている。方向性がまるで違う。

 単に祝日が一つ増えるだけではない。日本を代表する衆参議員の大多数が賛成し、スピード採決で、法案を成立させた。この意義は大きい。そこに政治家たちの良心をみることができる。
「祝日法」の第一条を紹介したい。
『自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、または記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける』

 自由と平和と、美しい風習、より豊かな生活。日本人はみんな戦争のない国を願っているのに、政治家たちはときに危なかし方向に進んでいる、とみられがちだ。

 政治家は党派・党略にも影響される。個々には独自の信条と理念を持っているが、思う存分に表現できない現実もある。
 政治家一人ひとりが「みんな戦争のない平和を願っているんだ」と同法案を通して、国民にアピールしたかったのだろう。議員の約9割が賛成した。

 国連加盟国(195か国)のなかで、「山の日」を祝日にもったのは日本だけである。誇れるものだ。世界の数多くメディアがおどろき、日本のわずか一つの法律を報じたのだ。

 反対票を投じた人も、祝日が多く休みが増えると、労働力低下を起こし、国際競争力が下がる、という懸念からである。「山の日」の趣旨や祝日法の否定ではなかった。

「日本の労働者は、有給休暇の収得率が欧米に比べて少ない。8月のお盆の連続休暇を増やす。海や山に家族で出かける。親しむ。その機会をより多く作る。事実上の有給休暇の振り替えである」
 政治家、労働団体、中小企業なども、そう認識した結果の法案成立である。

 山の恩恵に感謝する、それをどう具現化していくか。これからの課題である。

 法律の制定により、全国「山の日」制定協議会の呼称は、『全国山の日協議会』に変更された。

「世界中には山好きの国会議員はとても多い。世界山岳サミットを開催したいものです」
 谷垣会長はそう語った。

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