ジャーナリスト

【歴史から学べ】  広島の県議、市議、市長が毒されたのはなぜなのか。(上)

 私が幕末歴史小説『二十歳の炎』(改題・広島藩の志士)を発刊した当初、同書の紹介で広島の、あるメディアの方を訪ねた。

「県会議員の半分は、江戸時代の広島藩主は毛利家だと思っているのですよ」
「えっ、ばかな。嘘でしょう。江戸時代の毛利家は長州(山口県)の藩主でしょう」
「冗談じゃなくて、本当です。広島のものは、毛利元就から原爆まで歴史の真空地帯です。ですから、県会議員すら、この歴史小説の江戸時代の背景はわからず、理解するのは難儀だと思いますよ。広島のだれもが、歴史に目が向いていないし、勉強していないからです」
「歴史音痴(おんち)のひとが、広島の議員をやっているのですか」
「そんなところです」
 ここ7、8年さかのぼった最大級のおどろきの一つだった。

 政治家の役目は、将来を見通し、方針・方策をつくりだすものである。
『人間は同じことをするもの』
 政治家は現在ある課題を、歴史上から類似的なものを探しだし、その歴史を訪ねて、叡智(えいち)をもらう。そして、政治の方策をねるものである。それでなければ、「ヤマ勘」や自身の経験優先、他の力で動いてしまう。あるいは無策に等しい。

 広島の議員は、歴史学なくして、政治の役目が果たせるのかな、と不可思議だった。

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 新型コロナ騒ぎ、梅雨空に咲くアジサイを見てうっとうしさを取り除いて、執筆している。時折り、広島県出身の私は、知人から電話をもらう。
 厄介な事件を起こしてくれたものだ。
 講師でカルチャーセンターに出むいても、河井克行代議士の現金配布の事件をどう思いますか、と質問される。

「お金をもらった地元政治家が8割、9割悪いと考えます。かれら広島の議員、あるいは市長は、『為政者になれば、身きれいにする』という自覚が欠如しているからです。悪いのは受け取った側です。
 
『私利私欲で、個人の利益を追える』と不純な動機が育つ土壌が広島にあるからです。
 なぜならば、国政とはなにか。県代表ではない。民政を国家レベルで、決めていく決議機関である。

 かれら広島議員は国会開設の歴史すら、学ぼうとしていない。 なぜ、明治23年に『国会』が開設されたのか。
 日本人の庶民が、薩長閥の政治に反旗をくつがえし、民権運動として20余年間の血と汗で開かれた。この歴史を知らないし、学ぼうとしていない。だから、こんな無様(ぶざま)なことをしでかすのです、とはっきり言いきってしまう。

 市議、県議に立候補する段階から、明治時代の『自由民権運動』くらいは勉強しておくべきです。学校で教わらず、教員がさらっと流したにしろ、とつけ加えている。

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 原爆の被ばく=平和と声高に叫んでいれば、広島県の県政・市政に金が入る体質がある。

 将来の広島はどうあるべきか、とどこまでも考えるならば、江戸・明治・大正という大変な革期から、英知を学びとろうとするはず。その体質が殆どない。
 それが今回の事件の本質的な発端でしょう。自民党の本部に、広島の体質が見透かされたのです。

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 自由民主党がなぜ1億5000万円を広島の立候補者につぎ込んだのか。自民党の党戦略家は、戦術的に、全国を見渡しして、もう1議席増やせて、2議席を取れる選挙区はどこか、と戦略を練る。
「金で最もうごく県は、広島だ」
 広島県の県議、市議、市長たちはお金で動く、と自民党の党本部から狙われたからですよ。

 少なくとも、河井代議士自身から「1億5000万円を支援してください」と党本部に申し出た金額とは思えません。押しつけられたのです。

 小説的にいえば、「人間は唐突に、おもわぬ大金が入れば、迷います。まさか1億5000万円を選挙資金に使わず、自分の懐に入れて邸宅をつくれば、とんでもない結果を招く」と考えるはずです。
 法務大臣ならば、検察庁が指揮下にある。悩まなければ、ウソになる。

 県会議員だった美顔の妻が立候補する。
 その人脈をたどり、この際はみずから『あなたと私の秘密です』と口止めを計りながら、広島県内でばら撒くしか道はないと、河井代議士は考えたのでしょう。
 
 悪事の怖さはマンネリで、倫理観を失わせていくことです。

 河井代議士の立場で、広島の県議、市議、市長に手渡しする。お金の入った封筒をポケットに押し込む。「そんなことしないでください」、「預かっておきますよ」と言いながらも、それを受け取ってくれる。

 双方が不法と知りながらも、一人、またひとりと金銭の受け渡しが行われると、悪の道には歯止めがかからず、巨きく積み重なっていく。
 ほとんどの犯罪の事例である。

 悪のるつぼに巻き込まれてしまう。
 
                 【続く】

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