ジャーナリスト

巨大な台風19号が首都圏を直撃。東京はなぜ安全だったのか

 日本は災害列島だ。台風、大地震、大津波、落雷、洪水、豪雨。私たちはあらゆる自然災害に対応しなければならない。

 首都の東京は、国内外の頭脳が集中している。災害でおおきな打撃を被れば、日本が半身髄になってしまう。一千万人が住む都市を守ることは、並大抵ではない。行政だけでなく、都民も一帯になる必要がある。
 台風19号は超大型だった。多摩川の一部決壊があったにしても、よくぞ、東京を守り抜いた。これは成功だったとおもう。

 こんかいの台風19号の進路は北上しながらも、東京を直撃する予報だった。衛星の画像では、台風の目がくっきりしている。巨大な台風の直撃で、東京の被害はいかほどになるのか。だれもが危機感をもっていた。
 これに対処して航空機、鉄道、地下鉄、バスなどすべての交通機関が止まった。都民には外出をやめさせる呼びかけがくり返された。これはオフィスも、商店も、すべて企業活動の停止を意味した。戦時統制下でもなく、これが徹底されたのだ。
 この成功事例から学ぶ必要がある。

 1986年11月、東京都の伊豆大島にそびえる三原山が大爆発し、約一万人の島民および観光客が一日で、全員が海上脱出した。「お上の指示に従う」。日本人の統率は世界中を驚かせたものだ。その驚愕は、火山の爆発の規模でなく、全員が個を捨てて、行政の指示に従う。それが信じがたかったのだ。

 こんかいは一千万人の都民が安全優先で、交通・生活面の全面停止にたいして素直にしたがった。大規模なものだった。
 これは民間人だけの判断とは思えない。行政が危機管理から、どのように関わったのか。その仕組みはいかなるものか、私たちは知りたいものだ。

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 体験的に検証すれば、テレビ・ニュースにおいて河川の危険情報を流す一方で、
「少しでも命が助かる可能性の行動をしてください」と切迫感を与えつづけた。
 この文言はだれが考えたのか、実に巧いな、と感心させられた。

「非常に危険です。命を守る行動をしてください」
 サスペンス小説で、危機感をあおる手法とおなじだ。まさに危機一髪の状況下で、命をいかに守り抜くか、という表現にちかい。人間はわが身の可愛さから行動に移す。

 避難所では、小学生や赤子を連れた若い夫婦が実に多かった。それはわが子を守る親の行動だった。
「非常に危険です。命が助かる行動をしてください」
 荒川、中川、江戸川がもし決壊すれば、大惨事になるだろう。ハザードマップが意識のなかにあった。都民の一人ひとり、一千万人が外出をひかえた。路上を走る乗用車も皆無に近かった。この事実は大きい。
 古来から「お上に従う」は日本人の特徴だが、こんかいはメディアの警告に従っていた。
 避難所にいった都民の数は多い。登山リュックを背負った青年たちの姿があった。素直だな、とおもった。自宅にいた人は、知るかぎりでは戸建てのひとは二階以上、マンションでは上層階に避難していた。

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 ここ2日間の災害報道は、被災地が中心である。レポーターが現地に入り、報じることも大切だが、東京の成功事例の検証も重要だ。
 東京都知事、各区長、企業のトップ判断など、どのような流れと合議で指示が展開されたのか。かたや、大勢の外国人は、どのように情報を得て、どのように行動したのか。
 これらを伝えることは、将来の首都防災から、有益な情報提供になる。
  
 悲惨だった安政大地震、大正関東大地震の流れからしても、東京は決して安心できる強固な地盤ではない。むしろ、大地震がいつ来てもおかしくない。
 大地震の場合は、建物の倒壊、大火災、大津波という三重の災害が同時に多発する。東京都民は、どのように首都を守るか。「備えあれば、憂いなし」という。

 こんかいの台風からシミュレーションをしてみると、正確な情報が一人ひとりにとどいていたことで、落ち着いた行動につながった。避難所では、それぞれ家族単位で『NHKニュース防災』アプリを静かにみている。
 19号が超大型のまま東京都の真上までやってきた。江戸川・都心部が瞬間風速が47メートルだった。暴風雨がおそろしく窓ガラスをたたきつける。その時だった。突如として、地震が発生した。巨大な建物がおおきく揺れた。一瞬、べつの恐怖が加わり、大勢の顔色が変わった。

 数分後、震源地は千葉で、東京は震度3だとわかった。途端に、みなが暴風雨だけの関心にもどり、冷静な表情になった。信じられる情報があれば、大勢の人間が沈着冷静になれる証しだった。この教訓は大きい。
 
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 関東北部の山間に河川では、上流のダムからの放水情報が流されつづけた。メディアは河川の水量を、毛細血管のようにマップで色塗りして、氾濫の危険性を報じていた。それは過去にない情報提供だった。
 この視覚で伝える技術がさらに進めば、関東大地震級の災害には有益だろう。

 こんかいの巨大な台風において、首都・東京の防災面の進化がいかにあるべきか、という方向性がみえてきた。予測可能な正確な情報提供が、一千万都民をパニックにさせず、大勢の人命をより安全に守る結果につながる、と。
 
 IT時代である。ノーベル化学賞の受賞者は、スマホの普及に寄与した。私たちは道案内にもGPSに使いなれてきた。このスマホが防災面で必要不可欠な存在になった。
 

 大地震が発生したときに、すぐさま退路をふさぐ火災、橋の崩落、道路の地割れなどが、上空からの衛星、ドローン、ヘリなどによる、危険な個所がマップで見られたならば、人々は避難していく安全な方向が判るだろう。夜間でも、それが示される技術があれば、より安全な落ち着いた避難行動につながっていく。

 
 情報提供の精度という技術向上では、IT関係者の開発力にゆだねる面が強い。それには行政の研究資金の支援も欠かせない。
 情報をうけとる側の私たちは、老若男女を問わず、開発された「災害アプリ」をかんたんに使いこなせる努力が必要である。高齢者には、災害ボランティアの一貫という位置づけで根気よく教える。
 三位一体で情報精度の向上をはかる。東京のみならず、一億人の災害列島にすむ日本人・外国人、すべてにおいて有意義なものになる。
 
 
 

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