ジャーナリスト

永生元伸の魅力、日本を代表する「うたうバンジョー弾き」=(上)

 日本一のうたうバンジョー弾きの永生元伸(ながおもとのぶ)さんを取材してみませんか。そう声をかけられると、物書きの特性で、どんな人物か、と真っ先に人間に興味を持ってしまう。

 バンジョーの永生元伸がジャズバンド・リーダーだという。バンジョーというと、アメリカのスティーブン・フォスターの曲を思い浮かべるていどである。他の奏者と聴き比べをしたわけではないし、技量の優劣はわからない。となると、インタビューだけでは記事にできない。ライブに足を運ぶ必要がある。

 バンジョーとはどんな楽器なのか。17世紀に、アフリカから強制的にアメリカに連れてこられた奴隷たちが、故郷の楽器を思い出して作ったという。バンジョーは不思議な楽器で、多種多様な音を持っている。熱く燃える情熱的な音、悲しげ、かつ悩ましげな音も出す。かれらはバンジョーを奏でながら、音楽で過酷な辛い生活や郷愁を表現してきた。
 
 現代のバンジョーは、ディキシーランド・ジャズによく使われている。わたし自身は、生のジャズにふれると、聴いていて心地良く、好きな音楽だ。

 この認識のもとに、2017年12月1日、東京・大塚駅前に近いライブハウス「大塚ウェルカムバック」に出かけた。師走の先陣を切って「永生元伸スピリッツオブデキシー」が19時から開演された。
   

 演目として永生元伸 「Just One Night」と名づけられていた。日本語訳だと、『今夜かぎり』だろう。
 10数年に渡り、年に4回は大塚で固定メンバーで演奏してきた。しかし、今年からは毎回メンバーを少しずつ入れ替えている。だから、この日しか聴けない。「Just One Night」と名づけられていた。

 師走入りした今宵は、永生元伸(バンジョー・ボーカル)、楠堂浩己(ドラム)、小林真人(ベース)、小森信明(トランぺット)、益田英生(クラリネット)である。
 ジャズメンバーはそれぞれ日本の一流奏者で、贅沢な組み合わせである。

 ジャズはコード進行を大まかに決めているだけで、あとはアドリブである。曲目はおなじでも、10人弾けば、10人がちがう。二度とおなじ演奏はない。演奏者が入れ替われば、まさに「Just One Night」で、それ自体が面白い。ジャズは奥が深い音楽である。

 第一部

    By The Beautiful Sea
    St.Louis Blues
    Oh Lady Be Good
    小さい花
    That's a Plenty
    White Christmas
    自動車ショー歌
    黒い瞳

 ラテン、カントリー、ロックと多彩である。おなじみのポピュラーな曲なども軽快なリズムに乗せて演奏する。ジャズの特性で、聴き手に心地良く酔わせるために、テンポより遅めに吹いたり、わざと音を歪ませたりする。それをもって観客が心を震わせる。

 トランぺッターの小森信明は全身で音をだす。音量が大きく迫力が楽しめる。感動しない者はいない。観客からお金が取れるジャズマンは即興が命である。小森がふいにトランペットでなく、口笛でリズミカルに曲を披露する。両唇と歯がまさに楽器そのものに早変わりする。実にみごとだ。
 観客から、おどろきと賞賛の声がもれる。

 バンジョーは音楽を軽妙に味付けする。ドラム、トランペットのなかで、10分の1しか音量がない。(永生の談)。それでいて、リーダーの存在感をしめす。不思議だ。じっくり観察していると、まわりの演者は、かならず横目で、それぞれと目配せしている。

 リハーサルは一回だけで、『これで良いね』という音合わせだけだという。いずれの奏者にしても超プロで、あっちこっちで、おなじ曲を演奏してきている。みんなが曲自体の真髄を理解しているから、デキシーにしろ、モダンにしろ、本番でごく自然に流れに乗れるのだ。
 

 ドラマーの楠堂浩己(なんどう・こうき)はつねに横目で見ている。それぞれの音の特性の引きだしに努めている。バンジョーの永生が歌を入れると、静かにスティック(棒)を振っている。大小のドラムやシンバルなど打楽器が聞こえるか、聞こえないか、その程度になっている。

                        【つづく】


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永生元伸の「うたうバンジョー弾き」がこちらで聴けます。

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