A010-ジャーナリスト

三宅島沖地震、東京直撃の大津波はないのか=明日はわが身

 このところ淡路島の地震、そして 4月17日には宮城地震が発生している。同日の午後5時57分ごろに、三宅島の近海を震源とする地震があった。東京でも、震度4近くの揺れを感じた。
「不気味だな」
 そう感じた人は多いだろう。
 気象庁の発表によると、三宅島の近海地震はこの1回だけでなく、朝から夕方まで震度1以上が21回もあったという。そのうち、震度3以上は7回に及ぶ。今後の警戒が必要だという。
 他方で、震源地が島から離れているので、「三宅島の噴火とは関連がない」と発表された。となると、断層のズレによる地震なのか。


三宅島


 三宅島は相模トラフや南海トラフに近い場所にある。気象庁は巨大地震との関連について、「現状では見守っていきたい」という見解を示す。「見守る」とは実に都合の良い逃げ言葉で、聴き手には危機寸前で教えてくれると錯覚させる、危険な響きがある。わからない、と言ってくれたほうがより親切なのに……。

 3・11の宮城沖の大地震では、三陸のリアス式海岸以外でも、10m前後の大津波の被害に遭った。それが3・11の最大の教訓だった。
 もし、三宅島沖でマグニチュード8クラスの大地震が発生すれば、大津波がストレートに北上し、東京湾に入り込む。社会科の地図からしても、一目瞭然だ。
 類推だが、東京湾に10m前後の大津波襲来もあり得るかもしれない。となると、東京、横浜、千葉の住民はどうなるのか。それが単なる杞憂で終われば、幸いだけれども。

 4月2日から発売された、小説3・11『海が憎まず』が、発行部数が少なかったこともあるが、書店やネット・アマゾンでも売り切ればかりだ。知人から、本がネットで買えない、書店に申し込むと2週間だといわれた、読みたくてもすぐに読めない、と苦言がくる。
 出版社の日新報道に対して、「営業努力せず、売り切れ状態で放置しているんでしょう」と私は何度か抗議した。
「実際に、売れているんですよ」とおうむ返しの回答ばかりだった。


 『海は憎まず』のテーマは「文学は災害に対して、何ができるのか」と問いながら、被災地を回り、3・11の大災害から何を学び、なにを後世に伝えるべきか、と導いていくものだ。

 早くに読んだ、ある読者から、「大津波の恐怖は、明日はわが身ですよ。大正・関東大地震の大火災から、ずっと防火ばかり強調されてきたけど、『海は憎まず』を読むと、東京湾の大津波が怖い。巨大な地震・停電が来たら、まず地下から逃げろ、ビルの上にあがれ、という教訓が学び取れた。東京で大震災が起きたら教本になるから、ぜひ読んだほうがよい、と知り合いに勧めているんです」と話してくれた。

 本の口コミはこんな風に拡がるのか、と思った。 

 同書の12章『女性ジャーナリスト』のワン・シーンを紹介しておこう。


 主人公・作家が、大船渡新聞社の女性ジャーナリスト(30代)に質問する場面である。
「三陸の被災地から見た、ジャーナリストとして、関東大震災、南海トラフに対して、なにかメッセージはありますか」
「三陸の津波は40、50年に一度きています。私は大船渡で育ちながら、自分が遭遇するなんて、まったく考えてもみませんでした。でも、3・11で電気もない、食べ物もない、そうした恐怖を体験しました。『私だけは大丈夫』は絶対に当てはまらない、と強く感じました。とくに関東、東海のひとには明日大津波が来ると思っていてほしい。明日くると思えば、今日はなにかしら備えをしておかなければならない。前例が役立たないのが、自然災害の特徴です」
 彼女はそう語り、さらにこう付け加えた。
「過去最高のチリ地震津波でも、陸前高田は4メートルでした。しかし、20メートルの津波がきました。東京23区でも予測より大きい津波が来る可能性があります。最悪の高さを想像してほしい。東京は関東ローム層だから、20メートルの津波が来たらどうなるか。それをつねに考えてほしい」
 体験した女性ジャーナリストだけに、それらには強い響きがあった。

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