A010-ジャーナリスト

手作りのギター演奏会は格別の魅力=東京

 喧騒とした都会生活から、ひと時、解放された。ギター歴2、3年の生徒が奏でる、静かなメロディーをじっと聞く。「禁じられた遊び」「グリーンスリーブ」「イエスタデイ」「ムーンリバー」などは、思わず口ずさみたくなる。心休まる時を過ごす。


2012年4月22日、自由が丘のチェスナットホールで、第9回「ギターサロンコンサート」が開催された。主催は川瀬のり子ギター教室。自由が丘教室と松原教室の2カ所の生徒たち21人が、クラシック、フォーク、ポピュラー、演歌など2時間余りにわたり、演奏した。他にもゲスト演奏者が2名参加していた。

 川瀬さんが司会進行役で、出演者が入れ替わる都度、ギター歴とか、仕事とか、趣味とか素顔の一面を紹介する。
 ギターの他にも大正琴、ゴルフ、バイク・ツーリングなどに取り組んでいる人が多い。生活のすぐそばにギター教室があり、習い事、学びごととして人生を豊かに過ごす人たちだ。 

 招待をしてくれたのが、関根稔さんだった。「プレリュード第1番」を演奏した。かれは暗譜で演奏していたので、曲に心する情が顔の表情に浮かんでいた。

 なぜ生演奏が魅力なのだろうか。会場にきた聴衆は、単に曲を聞くのでなく、演奏者がどのように曲に心を乗せているか、それを推し量ることができるからだ。だから、演奏者の顔をじっと見つめている。

 演奏者は、間違いたくないと、譜面ばかりに釘付けになっていると、聴衆側にとって、演奏者の心が読み取りにくい。365日練習しても、緊張すれば、弦が狂ってしまう。旋律の多少の間違いなどは、決して恥ずかしいことではない。人間として、当然なんだから。
 来年からはできるかぎり暗譜で臨んでもらいたいものだ。

 ゲスト出演のプロギターリストたちも、同様に譜面を見る顔ばかり。写真の被写体としても、下向き顔では魅力がない。それが残念だった。
 盲目のピアニスト辻井伸行の魅力はなにか。かれが奏でる演奏曲など、多くのひとが知りえない。音の評価はわからずとも、熱意にみちた顔に魅力がある。プロギターリストにも、それを望みたい。

川瀬さんが紹介する出演者たちは公務員、会計士、スーパーなど多種、多業界にわたる。それら勤務先を聞き、選んだギター曲目、他の趣味などと重ね合わせると、なにかしら人生観すらも想像できてくる。
 世のなかには会社人間、仕事人生で、他に見向きもしない人が多い。それらとつい比較してしまう。

 都心部の大ホールの気取った演奏会は、聴衆が曲を訳知り顔で聞いている。あの気取りはまったく面白くない。

 街のギター教室の、年齢を問わない生徒たちが「鉄道員のテーマ」「雪が降る」「ベサメムーチョ」「グリーンスリーブ」が聞かせてくれる。過去に愛した曲となると、存分に心が溶け込める。
 継続は力で、来年は一段と力量が増していることだろう。声援したい。

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