A010-ジャーナリスト

日大医学部爆破事件の容疑者・医大生のミス

 東京板橋区・日大医学部で、地下一階の学生ロッカーが手製爆発物で爆発された事件が2月14日に発生した。犯行後には同大学に脅迫状が届いていた。


 警視庁捜査一課と板橋警察署の捜査本部は21日、日大医学部5回生の学生(24)を逮捕したと発表した。捜査関係者によると、豊島区内のA店で、犯行に使われたタイマーと電気コンロを同時に買う者がいた。そこから容疑者にたどり着けたという。


 事件の2日前の夕刻に、犯人は別の大手量販店のB店で、家庭用ガスボンベイ(イワタニ製品3本入り)を購入していた。容疑者は逮捕前、犯行を否定していた。だが、B店レシートが容疑者を特定する決め手のひとつにもなったのだ。


 このB店レシートについて、捜査関係者は、「容疑者の周りを徹底して捜査したら、出てきた」と話す。家宅捜索で発見したのか、まだ内偵の段階で、屋外の生ゴミ袋を漁って発見したのか、それは確認できなかった。


 刑事犯の多くは【自分は天才だ、絶対に発覚しない】と信じ込むらしい。用意周到で、ミスはないと思い込み、犯行に及ぶ。同事件の容疑者もその類だろう。


 14日の爆発後、犯人は大学関係者に脅迫状を送っていた。二度目の犯行に及んでも、自分はバレない、という自信があったからだと思われる。


 しかし、容疑者の住まい(板橋区内)から、B店レシートが発見されてしまったのだ。B店でガスボンベイを買ったとき、「レシートはいらない」と一言いえば、展開が違っていたはずだ。


 レシートは情報の宝庫だ。レジ通過の月日と時分がわかる。何をいくつ買ったのか。出したお金と受け取ったつり銭がわかる。とくに時間はアリバイを崩せる。他方で、防犯ビデオの録画時間と照合すれば、人物が浮かび上がるし、特定できるのだ。


 レシートには連番がある。前の買い物客、後ろの買い物客とすべて防犯カメラで確認できる。同事件では、各所の防犯カメラが、レジを離れてから玄関を出るまで、容疑者の姿を捉えていた。メガネをかけた華奢な体形で、紙の手提げ袋を持つ。紙袋は明らかにB店のものと違う。


 容疑者はガスボンベイの代金を払うと同時に、持参してきた紙袋に商品とレシートを入れたのだろう。結果としてB店レシートを持ち帰ることになってしまったのだ。


 犯人は「(爆破・14日)はデモンストレーションだ。今度はすごいことになる」と書いた脅迫状を同大学に送りつけていた。「この手の犯行は連続する。容疑者を逮捕できてよかった」と捜査関係者は話す。

 同大学の関係者は、「まさか、容疑者がうちの医大生だったとは」と絶句したという。

 容疑者には裁判で、懲役七年くらいが科せられるだろう。一枚のレシートが証拠品のひとつとなり、奈落の底に突き落とされてしまったのだ。

 親にすれば、生み育てて医大に入れるまでの教育投資の回収はできず、そのうえ心の傷として、長く暗い影を引きずることになる。
 

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