A065-東京下町の情緒100景

東京下町の情緒100景(043 踏切)

 ママの生まれた家と、パパの生まれた家は遠いんだよね。踏切を越えなければ、行けないんだよね。小学校も中学校も、別々で、踏切の反対側だよね。
 でも、学校の屋上に上がれば、両方がいっぺんに見えるんだって。ママに聞いたよ。


 踏切があるから、1人で、おじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行っちゃあ駄目なんだよね。絶対1人でいかないからね。ぼく、お利口だから、約束守るよ。

 ママとパパは、高校になって初めて知り合ったんだよね。おんなじ駅から赤い電車に乗って、遠い、遠い学校に通ったんだよね。


 この踏み切りはいつかなくなるんだよね。そしたら、赤い電車は高いところを走るんだ。運転手さんに手を振ってあげられなくなるから、さみしいな。


 踏切がチンチン鳴り出したよ。パパ急いで。

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