A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船106号 詩】  承久三年のブロッコリー  望月 苑巳

大皿の上にブロッコリーが
ストーンサークルのように配置されている
母が円形に怒鳴る
「残さないで野菜も食べるのよ」
そそくさとクラウチングスタイルのネズミ一匹
我ながら情けないと思う

藤原定家卿が扇を口に含み笑い シンプルな.pngふむ、枕草子には
野菜はブロッコリーにかぎると、あったな
清少納言の仕草を真似て
定家卿は扇を口に含み笑い
きのう化野念仏寺で密会した女子は
顔色が暗く折りたたまれていたが
後白河院の言葉をなぞれば
すべてはうつつよ、たわむれよ、となるか
十三歳年上の才女に手向けた一首を
思い出して年甲斐もなく心ときめかせる

床の霜枕の氷消えわびぬ結びもおかぬ人の契りに *

ぼくは枕草子を閉じると
ブロッコリーにたっぷりマヨネーズをからませて
ガブリと食らいつく
苦くて柔らかい愛情が口の中にだらしなく広がる
十七歳で深海魚になった弟が
欄間でアッカンペーをしている
もう喧嘩もできない淋しさが
茹でたてのお鍋から立ちのぼる
承久三年のブロッコリーが
本の中で弟の分まで茹であがった

                   *藤原定家


承久三年のブロッコリー.pdf

 【関連情報】
 孔雀船は105号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738
  メール teikakyou@jcom.home.ne.jp

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