A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船106号 詩】 女王雌日芝(メヒシバ) 新倉 葉音

春の陽を浴びている一叢のメヒシバ
新緑を風にさらして揺れる
笹のようなしなやかな葉
その優しさを楽しんでいる間に
足下では茎が縦横に這い出し
勢威を振るっているはずだ
その音が聞こえているのは空耳なのか

茎は分岐しながら細い根を出し
踏まれても引き抜かれても
そこから再生し
生き残っていく
夏 戦いの始まりだ
日焼け止めクリームを厚塗りし
垂れつき帽を目深に被り
鎌を片手にメヒシバに向かう
負けるのはわかっている
しかし放っておくわけにはいかない
やがて花芯が立ち上がり放射状の穂から
何万個もの種子がばら蒔かれる
災害に備えて
一斉には発芽しないという種
雑草の女王と言われるメヒシバは
したたかな知恵ものだ

節をひとつひとつ
ほじくり出すと背丈ほどの株になった
匍匐前進 陣地拡大
補給は節々が担いどこまでも広がってゆく
砂利の駐車スペースに草の山ができた
草はすぐに萎れいずれ消えてゆくが
人の戦いが積み上がる瓦礫の山はどうだろう
無意味そのものだ
消せない想いが過る

有史以前から生き続けているメヒシバは
土と陽の光さえあればどこへでも
今や世界を制覇しつつあるらしい
除草剤などどこ吹く風だ

女王雌日芝  PDF.pdf


【関連情報】
 孔雀船は105号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738
  メール teikakyou@jcom.home.ne.jp

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