A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船101号 詩】 秋のくれかた 船越 素子

空だけではない 
そのなつかしさも 空気までも
熟し始めた果物の匂いがしていた
時空が捻れていたことを
痛みが美しすぎて気づけなかった

御機嫌よう 鳩尾の痛み
果樹園.jpg果樹園のなかを 風が透過し
世界がバラ色にそまっていく
ほんの数分間の黙示
裸足で駆けだせばよかった  
気をとりなおし
影踏みをする
ずっと逢えなかった
あなたの影も
からだをよせてたたむ

(避難所のまえには
ちょっとした空き地があって
気高い振る舞いをする野良猫たちが
ゆるやかなコミューンをつなぐ
戸口の正面で
かれらが扉を開くまえに
叩き潰すのが
翼をもつものたちの恩寵)

いまはただじっと
息をひそめて待つ
秋がすとーんと
漆黒の闇をつれてくるから

秋の 船越 素子.PDF 縦書き 

【関連情報】

 孔雀船は101号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳
 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738

イラスト:Googleイラスト・フリーより

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