A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船101号 詩】 タローはびよびよと 福間明子

秋田犬のタローは
朝四時には吠える
雨の日もタローはびよびよと
風の日もタローはびよびよと
吠えては父を呼ぶのであった
散歩に出かけるのは父の日課だった
この日課は十一年間続いたことになる
物語の犬はいろいろ聞いたことがあるけれど
犬との関係も盟友といえるのだろうか
「ただいまや 過去聖霊は蓮台の上にて
dog_akitainu (2).png ひよと吠え給ふらん」
平安時代の『大鏡』に播磨の国の僧侶が
愛犬家の犬の法事にての説法の話
千二百年前にも畜生の法事をしていたとは
仏教の教えであろうか
タローは盂蘭盆の十五日に
帰省していた家族全員に看取られて身罷った
「散歩しましょうと言いながら あの世で
姿を現すことを信じている」と 父は言った
その父も亡くなった
あの世でタローはびよびよと
吠えては父を呼んでいることだろうか

*平安時代の書物には犬の鳴き声は
「ひよ」または「びよ」と記されている


タロウはびよびよと福間明子 .PDF 縦書き


【関連情報】

 孔雀船は101号の記念号となりました。1971年創刊です。

「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738

イラスト:Googleイラスト・フリーより

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