A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船101号 詩】  窓に咲く 高島清子

                   
あの窓のカーテンが少し開いて
その顔が今日も外を見ているから
大きく手を振って応えるのが私のやり方だった
するとカーテンは閉まり顔は消える

わたしは遠くから近づきながらもあの窓を見る
今日も顔が咲いているかと
もてあます時間を外を見て暮らす人の明日からを思えば
私はその孤独を少しは思うこともある
カーテンの後ろに隠れる稚拙な含羞も悲しいものだ
あの窓のカーテンとレースの間に咲くのは顔
私はあの顔に向かって大きく手を振る無意味さに気づく

そのように咲けば良い黒い影よ
その人は一歩も歩けないのかも知れず
部屋に籠って安らかに暮らす人か

今日もバスを待つ間あの窓を見た
ここは恥ずかしがり屋の町だから
ここは北関東の純情県民の町だから

平野に立つマンションの窓々のカーテンの隙間に
顔が咲く顔が咲いた咲いている
手を振れば顔は慌てふためいて隠れてしまう
私にも不思議な意地が芽生えて
無意味な癖が楽しみへと変わり始める


「孔雀船」101号「窓に咲く」(高島清子.PDF、縦書き


【関連情報】

 孔雀船は101号の記念号となりました。1971年創刊です。

「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738

イラスト:Googleイラスト・フリーより

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